2022年3月号

東証2部・川上塗料「和製物言う株主」に牛歩戦術

カテゴリ:企業・経済

関西を地盤とし、住宅・機械向け塗料を製造する東証2部上場企業、川上塗料(村田泰通社長)を舞台に、委任状争奪戦が始まろうとしている。
 攻める株主は京都の投資会社、ホライズン。代表の野池徹氏は旧山一証券出身。社主の上中康司氏は邦銀・外資系金融を経て、ファンドを設立し、シライ電子や北日本紡績など、中小型株の社外取締役などを務める。自民党で京都2区から出馬したこともある。


 ホライズンは川上塗料の会長、社長など一部の役員を解任し、自身らを取締役として推す株主提案を来る2月の株主総会に諮る。会社の抵抗は必至と見られている。
 川上塗料は1953年の上場ながら、長きにわたり市場から見放された銘柄だった。現在こそクリアしているものの、一時は時価総額が10億円前後と、上場廃止基準スレスレの低位株に甘んじていた。株価収益率も、競合の塗料会社の半分以下で推移していた。


 ホライズンは株価低迷の原因を、川上塗料の経営陣による「株主軽視の経営」にあると主張している。そのひとつとして問題視するのが配当金の在り方だ。
「川上塗料は毎年2億円程度の営業利益を計上しており、2014年度から配当金を出してはいるものの、配当性向は10%程度と同業他社に比べて低い。私たち以外の株主からここ3年間、ずっと増配を求める株主提案が出されていましたが、会社は聞き入れませんでした。この少ない配当金も、私たちの分析では、持ち合い株を中心とした投資有価証券から得る配当金をそのまま充当しているだけでした。つまり実質的な配当性向はゼロ%なのです」(野池氏)


 確かに川上塗料の配当金総額は、過年度に営業外収益として計上されている受取配当金とほぼ同額に収まっている。
 しかも川上塗料には、実に約20年間にもわたって、同じ人物がトップに君臨し続けている。
 代表取締役で会長の野村茂光氏(76)は、1968年に三井物産に入社、子会社の三井物産ケミカル社長を務めた後、01年に副社長・営業本部長の待遇で川上塗料に入社。03年から現在まで一貫して代表の座にあるのだ。
 そもそも、川上塗料は三井物産色の強い会社で、仕入先も販売先も三井物産系との取引が多く、長年、川上塗料の株式を約6%保有する主要株主でもある。
 さらに、野村会長と年齢が近い社外取締役で、公認会計士の檀上秀逸氏(74)は、20年前から、当時会計監査人だった新日本監査法人で川上塗料を担当し、関与社員として監査報告書にサインをしていた人物。監査法人退社後、担当先に〝再就職〟したわけだ。
 そんな川上塗料だけに、新たに出現した株主、ましてや物言う株主からの攻勢には強い拒絶反応を示している。


 ホライズンは昨年12月に、株主提案権の行使と、株主名簿の閲覧謄写を請求する内容証明を川上塗料に送付していた。しかし、ホライズンの実印がないこと、実印の印鑑登録証明書が付されていないとして、株主提案を受理しなかったという。ホライズンと川上塗料は株主提案権行使を巡り仮処分を争っているが、川上塗料はこうした紛争も開示していない。
 さらに、株主名簿の開示方法も独特のものだったという。川上塗料は冊子により名簿を開示したそうだが、なんと1ページに1人ずつ、株主情報が載っているという代物だったという。ページの大半が空欄。川上塗料の株主は1000人弱おり、紙の量は膨大となる。資源の無駄使いではある。
 物言う株主に対する〝牛歩戦術〟の一種だろうが、そこまで株主を恐れるならなぜ、上場を維持しているのだろうか。

......続きはZAITEN2022年03月号で。

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