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雪見傘

待ち遠しい春を想う気持ちをあざ笑うかのように
漆黒の闇の空から白い雪が舞い落ちた。

時は3月だというのに、
行き交う人の歩みと外套は重い。

降り積もる雪は、未明まで続くと
天気予報は淡々と語る夜10時過ぎ、

傘もささず若者がコンビニの前でうろうろ。
聞こえてくるのは男が噛んでいるガムの音だけ。
クチャクチャ……。

黒いブルゾンに落ちては消え、消えては落ちる白い結晶に気を止めることもなく
やおらコンビニに男は飛び込んだ。

だが、その男は何も買う気配を見せない。
寒さをしのぐことが男の目的か。
それとも…。

店内を一周廻ったその男は
何事もなかったように、店を出た。
目的のものが品切れだったのだろうか。

駅へ向かう男……。
だか、その男の手には傘……。
ついぞ店内に入る前には手にしていなかった傘。

店の入り口には当然、傘立てがある。
店内には遅い夕食を探す者、
雑誌を読みふける者。
10名前後がありふれた日常を演じている。

そしてその数の傘が
主人が店から出てくるのを待っている。
だが、1本だけは主人が入れ替わるはめに。

…そう、その男は傘欲しさのためだけに、
コンビニへ寄った。

正確には買うと装い、一旦店内に入り、
さも客だといわんばかりの堂々たる足取りで店を出る。
さも自分のものだといわんばかりに堂々と他人の傘を取る。

傘泥棒じゃないか。

電車の忘れ物の多さは郡を抜くのが傘で、
「天下の周りモノ」くらいにしか捉えられていないかもしれない。

でも、それ、窃盗ですよ。


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