【記事無料公開】セクハラ百十四銀行「色情と暗黒の10年」(3)

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眼前でセクハラを受ける女性部下を守れなかったと主張した元会長、渡辺智樹
(左から2人目、2016年11月)


渡辺「相談役」残留の深層

 セクハラ事件で会長を辞任した一方、臆面もなく相談役に就任した渡辺。ただ、相談役の居座りを巡っては、関係者の間で諸説あるようだ。まずは財界活動説。しかし、渡辺は11月16日付で高松商工会議所の会頭を辞任、四国電力の社外取締役も辞任するなど、対外活動を事実上放棄。そもそも、セクハラ事件に塗れた人物に顕職が担えるはずもない。

 一方、頭取の裕次郎の経験不足という行内事情を説く関係者も少なくない。今回、裕次郎は渡辺から顔に泥を塗られた格好。にもかかわらず、その対応は渡辺に同情的ですらある。それ故、綾田家3代目の未熟ぶりに理由を求めるわけだが、これにも無理がある。当の渡辺の経営能力が高いかと言えば、決してそうではないからだ。

 なるほど、渡辺が頭取に就任した09年からの業績推移を見ると、売上高に当たる経常収益は800億円前後、純利益は100億円前後でほぼ安定。むしろ、頭取後期は前期に比べて数字も良い。

「それは、現場の営業店の実働部隊の頑張り以外の何物でもない。渡辺時代、役員室は何をするにしても他行の物真似ばかり。修作・竹崎時代に築かれた堅実経営の遺産で渡辺は食い繋いだだけ」(前出の百十四銀関係者)

 事実、11月9日の会見で発表された百十四の18年9月中間決算は、売上高が前年同期比3・2%減、中間純利益も19・5%減と4年ぶりの減収減益。一方、第二地銀の香川銀行は増収増益と、明暗がはっきり分かれている。

 それでは、渡辺が相談役に居座る真の理由は何か――。そこにも百十四の宿痾が浮かび上がる。

 まずは同行の引退した元最高幹部に対する特別な処遇慣例だ。百十四の現役幹部はこう明かす。

「100%出資の関連会社に名前だけの役員として入れて、その会社から4年程度は退職金とは別に給料を出してきた。当然、対外的にも公表されない。しかし銀行本体で無役だと、いくら関連会社でも処遇できない。だから、渡辺も相談役に残留させたのだろう」

 なお、百十四は渡辺に退職金が出たかどうかさえ、「個人情報」を理由に明らかにしていない。

 加えて、渡辺と綾田が特別な関係にあることも今回の処遇に繋がっている。というのも学生時代、渡辺は裕次郎の家庭教師を務めていたといい、頭取職の禅譲の際も渡辺に退任を促す修作が、その譲歩条件として「代表権を会長の渡辺にくれてやった」(別の百十四関係者)との指摘もある。

 さらに奇怪なのが、セクハラ事件の一方の当事者である合田工務店社長の森田との関係だ。慶応で同窓の森田と裕次郎は"昵懇の間柄"。「取引先が不適切行為に及んだ」との筋書きを呑んでくれるよう森田に懇請したというが、百十四はこの件も否定していない。

 渡辺、裕次郎ともに同じ穴の狢というわけだが、渡辺が蔓延させた行内風土も同時に禅譲されたようだ。渡辺時代の恐怖政治で、行員の間には上を忖度する気風が広がり、人事も役員室との距離で決まることが常態化したという。

 百十四では最近、次のような不祥事案もあったという。行内で複数の支店長による経費の私的流用行為が発覚したというのだが、さらに驚くのが経営陣の対応だ。

 ある支店長は役員の覚えが目出度かったことから、「未遂」として処理された上、さらに現在は昇進ともとれる人事で処遇されているという。他方、役員の人脈に乏しかった別の支店長にはいまだ処分が出ず、雪隠詰めの状況。それどころか、横領事件に発展しかねないこれらの問題を内部通報した行員はその後、左遷人事の憂き目に遭ったという。これは裕次郎の頭取就任以降の出来事である。

 その結果、毎月、相当数の若手行員が百十四を去っているのだ。しかも、彼ら元行員たちは転職面接の席上、「加重なノルマを負わされ、止まれず高齢者に騙すような形で投資信託を購入させたが、良心に耐えきれずに辞めた」と異口同音に悔やんでいるという。

強行された「ゴルフコンペ」


 それでは、セクハラ事件の当事者たちはどうなったのか――。

 まずは合田工務店の森田。11月9日の百十四会見に先立つ小誌取材に対し、同社担当者は「当社とは関係がない」の一点張りだったが、同月15日に森田が副会頭を務める高松商工会議所に改めて事実確認を行った途端、翌16日に副会頭を辞任してしまった。

 一方、百十四の執行役員本店営業部長として会合に出席していた石川は6月の処分後、重要店舗の今治支店長に栄転。事件発覚後は解任されたものの、「綾田家と因縁が深く、特別な社員しか配置されない」(関係者)関連会社、四国興業に転籍した。「支店長時代には焦げ付き融資を実行したり、パワハラで何人もの部下を潰したりした問題人物」(別の関係者)ともっぱらだが、セクハラ事件後の厚遇にはやはり疑問が残る。

 他方、今回の自身への処分を減俸30%2カ月で済ませた頭取の裕次郎は11月3日、満濃ヒルズカントリークラブで創業140年記念のゴルフコンペを主宰。騒動の最中に自粛すべきとの進言もあったらしいが、強行した。また、本店行員たちも11月中下旬の段階で、高松の繁華街において堂々と「百十四飲み会」を催しているというから度し難い。ただ、渡辺の次のようなエピソードを知れば、そんな腐敗ぶりも頷ける。

「頭取時代、決算前の行員が連日深夜まで仕事を続けている最中、繁華街をホステス風の女性たちを引き連れて闊歩しているのが何度も見られている。取引先からは『あの頭取で大丈夫か』と心配されたほど」(別の関係者)――色情に狂ったエピソードには事欠かない渡辺だが、会長辞任後の今も百十四本店の周辺を徘徊する姿が、関係者らに目撃されている。

 一方、被害者の女子行員らは、事情を感じ取った周囲からの好奇の視線に晒されているともいう。

 そんな中にあって、小誌にはこんな悲痛な声が寄せられている。

「今回が百十四正常化の最後の機会です。御誌にもう一度、弊行の実態を追及していただきたい」

 百十四経営陣はこうした行員の声を「中傷」と捉えているようだが、行内からはもはや、一向に動こうとしない金融庁などの監督当局に寄せる期待も萎み果ててしまったとの嘆きが聞こえてくる。

 ところで地元関係者によると、19年に米寿を迎える修作は今も壮健で、毎日のように高松の街を散歩しているという。こうした行員の悲痛な声は綾田家2代目の耳に届いているのだろうか。(敬称略、肩書等は掲載当時のまま)

 本記事から1年――。今年3月、百十四銀は相談役制度を廃止した。セクハラの汚辱に塗れた渡辺氏はもちろん、10年に大阪・九条支店で発生した反社会的勢力への不正融資事件で頭取退任に追い込まれた竹崎克彦元会長も相談役を退任。渡辺氏は最後まで子会社などでの処遇を求める往生際の悪さを見せたというが、結局は"無役"で放逐される形となった。

 ただ、竹崎氏にせよ、渡辺氏にせよ、百十四銀においては「雇われマダム」に過ぎないのだ。というのも、前述の通り、現頭取出身の綾田家が"似非創業家"として君臨しているからに他ならない。裕次郎頭取、あるいは綾田家に近い者は出世が約束され、ハラスメントはじめ、問題行為に及んでも不問に付される "お友だち政権"の様相を呈しているという。しかも、有力OBたちのほとんどは綾田家恩顧で、今回は渡辺セクハラ事件の時以上に鳴りを潜めているといい、OBを含めた行内にはもはや自浄作用が求められない状況なのだとか......。

 監督当局をはじめとする"外圧"しか百十四銀を変える契機はないのかもしれない。いずれにせよ、明日11月11日月曜日、頭取会見が試金石となるはずだ。

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小誌ブログでは百十四銀について、過去、以下のような記事もアップしています。

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【ZAITEN12月号】百十四銀行・渡辺会長「セクハラ辞任」について
・18年11月16日公開
百十四銀行「セクハラ事件」の見解および続報について
・19年10月31日公開
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