【記事無料公開】百十四銀行「情報漏洩」元行員逮捕の衝撃

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記事掲載から4カ月――。ようやくの逮捕劇だった。本誌「ZAITEN」2020年12月号(19年11月1日発売)で報じた四国・香川県最大の地銀、百十四銀行の顧客情報漏洩"事件"のことである。

逮捕された"元"若手行員たちの所業もさることながら、さらに度し難いのが、百十四銀の対応だった。

本誌掲載号の発売直前の昨年10月末に、30代元行員(当時は現役)が9月中旬に警察の事情聴取を受けていたことを"不祥事"として発表。本誌取材後の10月下旬にその行員を懲戒解雇に......。しかし、本誌記事の掲載が確定的になった後の駆け込み的な処分だったばかりか、実際は「懲戒解雇」と言えども、情報漏洩した当該行員には退職金まで支払っていたといい、およそ石もて追い出したわけではなかったのだ。

そして、ここにきての逮捕だったわけだが、現時点(20年3月5日18時現在)で百十四銀は何らの発表を行っていない。そこで今回、事件の第一報となった20年12月号記事《"行内文書"が流出していた疑いが...... 百十四銀行「行員が任意同行」隠蔽疑惑》を特別に無料公開したい。

百十四銀について本誌はこれまでたびたび報じてきましたが、同行に関する情報提供を以下の公式サイトフォームおよびメールアドレスで募集しております。なお、情報源の秘匿については絶対ですので、その点についてはご信頼ください。

【情報提供フォーム】
http://www.zaiten.co.jp/formmail/indict.php

【情報提供アドレス】
indictment@zaiten.co.jp


小誌ブログでは百十四銀について、過去、以下のような記事もアップしています。

・19年11月10日公開
【記事無料公開】セクハラ百十四銀行「色情と暗黒の10年」(1)

・19年10月31日公開
百十四銀行「情報漏洩で行員が警察に事情聴取」会見の姑息

114_ayata.jpg"似非創業家"三代目の頭取、綾田裕次郎

 四国・香川県最大の地銀である百十四銀行。昨春、20代の女性行員に対するセクハラ事件が起き、当時の会長、渡辺智樹が関与していたことを小誌が報じたのは、ちょうど1年前だった。取引先の地元ゼネコン最大手、合田工務店との会食の席上、同社社長の森田紘一(現在も社長在任)によるセクハラ行為を「制止できなかった」として処理されたが、渡辺自身も破廉恥行為に手を染めていた疑いは晴れていない。

 創業140周年という記念すべき年に起きた代表権者のセクハラ不祥事。渡辺は、当該記事を掲載した小誌18年12月号発売前日の昨年10月末、会長を辞任。銀行トップのセクハラ辞任は、前代未聞のスキャンダルとなった。

 渡辺はそれでも相談役に居座ったものの、小誌(19年1月号)が百十四銀の病巣の内幕を続報しコンプライアンスの欠如やガバナンスの不全を徹底追及。すると、金融当局や世論の厳しい批判に耐えきれないと判断したのか、百十四銀は渡辺相談役を今年3月末で退任させるとともに、相談役制度の廃止を決めた。これにより、渡辺の前任の元頭取、竹崎克彦も相談役から去ることになった。

 その結果、会長・相談役不在のまま、「創業家」を僭称する綾田家出身の3代目(初代=整治、2代目=修作)の綾田裕次郎が頭取として名実ともにトップに君臨するワンマン体制が現出している。

任意同行された若手行員

 それから半年――。百十四銀関係者は行内の状況をこう明かす。

「慶大卒で1982年入行の裕次郎は、若くして頭取を約束されていたボンボンですが、修作から特に帝王学を受けたわけではない。17年4月の頭取就任時、慣例を破って〝使用人〟の渡辺会長に代表権を与えた時から、両者はズブズブの関係で、同じ穴の狢。今も上を忖度する行内風土は変わっていませんし、役員室との距離で決まる人事も相変わらずです」

 組織の腐敗は続き、人心の荒廃も進んでいるというわけだ。しかも、そんな行内風土を象徴するかのような〝事件〟が今秋になって起きていたというのである。

 舞台となったのは、大阪府東大阪市にある、県外中規模支店の東大阪支店。白昼堂々、警察の捜査員が支店を訪れ、勤務中の若手行員に任意同行を求めたのは、まだ暑さが残る9月のことだった。

「突然の出来事で、現場に居合わせた行員は何が起きたのか分からず、呆気にとられていたそうです。無論、事情説明などはありませんが、あらぬ噂をSNSなどで拡散しないようにという趣旨の通達が唐突に出されました。その若手行員は現在、人事部付で本店ビルに出勤しているようで、そのうち何らかの懲戒処分が下される予定です」(別の百十四銀関係者)

 任意とはいえ、金融機関の現職行員が警察に連行されるのは、極めて異例。一体何があったのか。

「今夏に起きた、ある詐欺事件に絡んだ捜査の一環と見られています。その関連で、香川県警は高松市内に住む男ら3人を逮捕している。直接の容疑は、3容疑者のうちの1人が親類からカネを詐取した疑いですが、捜査段階で〝ある文書〟が出てきたため、若手行員が事情を聞かれたようです。もっとも、警察発表では3容疑者は否認しているようですが」

 事情通はこう解説する。

 この事件は香川県内の地元紙でさえベタ記事扱い。記事を素直に読む限り、単なる仲間内の揉め事という印象が強いのも確かだ。

元支店長「逮捕」の過去も...

 しかし、ある地元関係者は、事件の背景についてこう解説する。

「逮捕された3人のうち、主犯格の1人は、地元の一部では知られた元暴力団員。この男は10年ほど前にも、香川県内の民家に拳銃を持った男が押し入った事件に絡んで、殺人未遂や銃刀法違反などの疑いで逮捕されています」

 何やらキナ臭い話だが、さらに取材を進めると、任意同行された百十四銀の若手行員と元暴力団員とを結びつける新たな事実が浮かび上がってきた。

「実は、この事件に極めて近い関係者の息子が百十四銀の元行員だったのです。現在は辞めていますが、任意同行された若手行員とは同期入行組で、2人とも東大阪支店の勤務経験があり、仲が良かった。〝ある文書〟がその関係者周辺から出てきたとすれば、警察が詐欺事件の捜査に絡んで百十四銀の現職行員に事情を聞いたのは、その息子との接点を疑ったからではないか」(別の関係者)

 即ち、「ある文書」とは百十四銀の顧客・取引先名簿である疑いが濃厚だというのだ。

「仮に、百十四銀の顧客名簿を現職行員が外部に持ち出し、その個人情報が漏洩しただけでも一大不祥事ですが、それで終わる話ではない。元暴力団員の手に渡り、裏社会に流出して、振り込め詐欺などの特殊詐欺に使われた可能性を考えると、ゾッとします」(同)

 反社会的勢力と言えば、百十四銀は09年に大阪・九条支店で起きた元組員への不正融資事件で、元支店長ら2人が逮捕され、有罪判決を受けた過去がある。この事件で業務改善命令を受け、再発防止を誓ったはずだった。今回と性格は異なるものの、10年経って再び反社会的勢力との関係を疑われるようでは、事件の教訓は何も活かされていなかったと言わざるを得ない。

 では、百十四銀はどう答えるのか。これまで小誌取材を頑なに拒否し続けてきた百十四銀広報。当の東大阪支店長を直撃すると、当初は10月に赴任してきたばかりとして、行員の任意同行は「把握していない」と答えていたものの、追及に一転、「お答えしかねる」と事実関係を否定しなかった。

 疑似創業家の威光を背に、今や「現役幹部はもちろん、初代・2代目に恩顧のあるOBたちも、渡辺頭取時代とは違い、裕次郎頭取には全く物申せない状況」(有力OB)。実際、綾田との距離を頼みに、パワハラをしてもお咎めなしで主要店舗の支店長などに出世する輩が跋扈し、まるで「3代目が支配する北朝鮮さながら」(同)の有り様という。一方で若手・中堅の退職は相次ぎ、金融当局も綾田家支配に苦り切っている。  もはや自浄作用は望むべくもない百十四銀。正常化には〝外圧〟しかないようである。(敬称略、肩書等は掲載当時のまま

これまでも報じてきた通り、もはや"不祥事"発覚が年中行事となった感のある百十四銀。しかし、トップや行員の素行のみならず、不祥事案を隠蔽、さらには上層部との"距離"によって処分の軽重を差配する、そのガバナンス危機にこそ、問題の所在があると言える。

なぜ逮捕された元行員に退職金を支払ったのか――。本来であれば、本誌のような東京所在の媒体ではなく、地域に密着した地元メディアこそ、追及の狼煙を上げるべきだが、どうやら香川ではそのような自浄作用は望めないようだ。腐敗する傲慢地銀に、切り込めないメディア......香川県民に自らが"蚊帳の外"であるという自覚はあるのだろうか。