テレビ朝日・報道ステーション"キスセクハラ"プロデューサーの素顔(2)

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「文春でも新潮でも何でも来い!」――。テレビ朝日の報道番組「報道ステーション」の桐永洋チーフプロデューサー(CP)は、かつて、そんな怪気炎を上げていたという。それから1年余り、報ステのフィールドリポーター、森葉子アナウンサーへの"キスセクハラ"を本日発売の週刊文春、週刊新潮に取り上げられ、まさに両誌の十字砲火の末、CP更迭、BS朝日への出向に追い込まれた桐永氏の末路は、皮肉を超えて、今となっては運命的にすら映る。

他方、報ステはじめ、テレ朝の番組が自局の幹部職員の醜聞について沈黙を決め込むのは置くとしても、ゴシップ物では文春・新潮記事の"切り張り"まがいの内容に終始する各局ワイドショー番組も、自らの脛の傷が疼くのか、日本を代表する報道番組における醜悪なセクハラ事件については一様に静観に徹しているようだ。

それはそれとして、桐永CPを戴き迷走する報ステの問題点を種々報じて来た小誌「ZAITEN」。2018年11月号(同10月1日発売)掲載の《テレビ朝日"二人の洋(ヒロシ)"で「報ステ」自壊》レポート(9月4日付ZAITENブログをお読みください)に引き続き、今回はその第二弾として、19年3月号(同2月1日発売)に掲載した《テレ朝「報ステ」破滅へのバンザイ三唱》(ジャーナリスト・濱田博和氏寄稿)を以下に無料公開したい。

【編集部注】
9月4日に第1弾の記事を以下のブログにアップしています。
http://www.zaiten.co.jp/blog/2019/09/post-5.html

9月7日に第3弾の記事を以下のブログにアップしました。
http://www.zaiten.co.jp/blog/2019/09/post-7.html

1903tvasahi_hayakawa_kirinaga_tokunaga.JPG(写真は19年1月号掲載記事より。左下が桐永氏)

 2018年の暮れも押し詰まった12月26日(水)深夜、東京・六本木のテレビ朝日本社8階の特別会議室に、時ならぬバンザイ三唱が響き渡った。

 この日は看板報道番組『報道ステーション』が年内の放送を終え、番組スタッフら関係者約100人が参加して恒例の打ち上げが開かれた。宴もたけなわの頃、挨拶に立ったプロデューサーの鈴木大介が一人の女性社員を呼び寄せる。スポーツ局所属の彼女は早稲田大学に在学中、老舗サークル「バンザイ同盟」のメンバーとして、合格発表や卒業式といった学内イベントや結婚式、テレビ番組などに登場し、バンザイを繰り返してきた〝猛者〟だった。

 その女性社員の指導の下、民放を代表する報道番組と自他ともに認める報ステのスタッフ約100人が、一斉に早大流バンザイを三唱したのである。

 かつて歴代の自民党政権からその影響力を恐れられた『ニュースステーション』。だが、後継の報ステの現状は、後述するように内容、視聴率とも、とても打ち上げをバンザイで締め括れるようなレベルにはない。それが余興とはいえ、劣勢を精神論だけで乗り切ろうとした旧日本軍さえ想起させるような熱狂は、薄気味悪ささえ感じさせた。打ち上げ終了後、ある男性スタッフが呟いた。

「上が上なんだから仕方ない」

「上」とは、昨年7月から報ステのチーフプロデューサー(CP)を務める桐永洋(48)のこと。バンザイ三唱を含め、打ち上げの式次第の最終決定権を持つ桐永自身が早大OBに他ならないのだ。

 小誌は18年11月号掲載のレポート「テレビ朝日〝二人の洋〟で『報ステ』自壊」の中で、テレ朝の〝ドン〟と呼ばれる会長兼CEO(最高経営責任者)の早河洋(75)に抜擢されたCPの桐永の下、報ステが変容する様を詳述した。今回は桐永の知られざる正体について深掘りしてみよう。

 打ち上げのバンザイ三唱で母校・早大への執着を示した桐永だが、民放キー局のテレ朝にあって、その経歴は些か異色である。

「偏差値50」のCP

 広島県福山市出身の桐永は1986年4月、6年前に同市内に新設された県立高校普通科に入学した。ネット上で公開されている同校の偏差値や卒業生の進学先、さらには桐永の同級生の就職先を同窓会名簿で見る限り、同校の学力レベルはお世辞にも進学校と呼べるものではない。

 そんな地方の無名公立高を卒業した桐永は89年4月、夜間学部時代の早大社会科学部に入学するが、その際には同学部にこの年入学する学生から始まった自己推薦入試制度を利用し、学力試験を免除されている。当時の社学部は「政経など昼間学部は学力的に無理だが、早大ブランドが欲しい」という手合いが受験する穴場の学部として知られ、入試の難易度は昼間学部に比べてかなり低かったが、それさえ桐永は免れたのだ。

 事実、桐永自身も、当時の同学部のそうした評価を正しく認識していたと思われる。報ステのCP就任後もしばらく見られた自身のフェイスブックの自己紹介欄には、最終学歴を「早稲田大学卒」とするだけで、学部や学科名までは記載されていない。

 早大在学中、数多くの政治家を輩出していることで有名な雄弁会に所属した桐永が、93年4月にテレ朝に入社できたのは、180センチ前後の体格と、学生時代に鍛えた口八丁ぶりを評価されたからだという。ガタイの良さからか、当初は数少ない社員カメラマンとして取材部に配属。90年代後半は社会部で警視庁記者クラブや司法記者クラブに所属した。当時を知るテレ朝関係者が証言する。

「警視庁クラブでは殺人など強行事件を捜査する花形の捜査1課を担当したのですが、とにかくサボってばかり。夜回りのため会社からハイヤーを呼んでも、1課幹部の取材には行かずに遊び回っているだけでした。ネタも全く取れず、使い物にならないので、先任の1課担よりも前に、警視庁クラブから放擲されました」

 こうした背景もあってか、あるテレ朝関係者によると、同僚から出身高校を問われた桐永は、広島県内で最も偏差値の高い「広島大学附属福山高校」と答えていたという。少し調べれば簡単にバレてしまう嘘を臆面もなく口にできる、場当たり的な身のこなしはその後の累進にも役立ったようだ。しかし、学歴に対する感情は今もって強く桐永を捕えているらしい。

 報ステCP就任直後の所信表明演説で、桐永は「今の報ステのイメージは偏差値70くらい。東大入れるんじゃないかという感じ。偏差値50の普通の庶民が見た時に理解できないから、チャンネルを変えちゃおうとなっちゃってる」などと発言、内外から顰蹙を買ったことは11月号でも触れた。

 だが、見てきた通り、実はその桐永自身が「偏差値50の普通の庶民」で、所信表明では自らの偽らざる想いを率直に披歴したと考えれば、逆に話は分かりやすい。つまり彼自身、硬くて複雑なニュースを理解することが困難なのだ。そんな桐永を看板報道番組のCPに抜擢するのだから、報ステの視聴率アップに賭ける早河の覚悟には相当なものがあるのだろう。

報ステは「ワイドショー」か

 小誌は19年1月号掲載の「テレ朝『報ステ』徳永アナに視聴者の罵声」の中で、昨年10月以降の報ステの視聴率低迷について(1)不倫問題でテレ朝を退社した過去を持つ事実上のメインキャスター、徳永有美(43)が醸し出す軽薄さと無神経さ、(2)早朝のワイドショー『グッド!モーニング』の視聴率アップの功績を評価されて報ステCPに抜擢された桐永が推し進める、報ステのワイドショー化――の2点を原因に挙げたが、その状況は今も何一つ変わっていない。

 例えば、事実上の移民受け入れとされる出入国管理法(入管法)改正案が参議院で強行採決された12月8日の直前、7日の放送の前枠は「ISUグランプリファイナル カナダ・バンクーバー2018」の男女ショートプログラムの生中継で、報ステもこのニュースから始まった。

 ところが次のニュースは入管法改正案ではなく、「寒暖差で疲労する」という天気絡みのヒマネタ。フリップを使って寒暖差疲労度をチェックしたあと、アナウンサーの小木逸平(44)が「首を温めると効果がある。呼吸法も大切」などとまたもフリップで解説し、呼吸の仕方を出演者全員が実演して見せるという、桐永お得意の朝のワイドショー張りのスタジオ演出が続いた。この能天気なネタに費やされた時間は、何と11分だった。

 3番目にようやく入管法改正案問題が取り上げられたが、前日の審議で「17年までの3年間で69人の外国人技能実習生が死亡していた」とする法務省の内部資料が明るみに出たにもかかわらず、VTRはわずか3分半。件の資料を取り上げることもせず、スタジオ展開も合わせて7分で終了した。

 この日の視聴率は12・5%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と同月最高を記録したが、前枠のグランプリファイナルが15・4%と高く、報ステの「発射台」もそれに助けられて高くなっただけ。番組開始後は一方的に下がり続け、ネット上には「報ステ終わった」との書き込みが相次いだ。

 同様の事態は、韓国の裁判所が元徴用工訴訟の原告側に対し、新日鉄住金が韓国内に所有する資産の一部差し押さえを認めた翌日の1月9日にも起きた。

 前枠の「サッカーAFCアジアカップUAE2019 日本×トルクメニスタン」の生中継を受けて、冒頭のニュースはお決まりのアジアカップ。次は元徴用工訴訟関連と思いきや、何とインフルエンザだった。ここで天気と合わせてVTRを6分半、さらにスタジオに呼んだクリニックの医師が、新たな抗インフルエンザ薬「ゾフルーザ」の仕組みや服用の注意点など、8分間も解説を続けた。

 元徴用工訴訟関連は結局、番組終盤に局アナの森川夕貴(25)が担当する「森川ニュース」のコーナーで、わずか1分間取り上げられたに過ぎなかった。

 果たしてこれが、日本を代表する報道番組と言われていた、あのNステの後継番組の姿なのだろうか。この日の視聴率は9・9%と1桁台に終わった。

年始も衝撃的な低視聴率

 こうした急激なワイドショー化を嫌気して、報ステから離れていく視聴者が後を絶たない。昨年12月(3~28日)の月間平均視聴率は10・0%と、前月比0・9ポイントもの大幅な下落。17回の放送のうち、目標の11・5%を達成できた日はわずか3回(前月は25回中9回)に過ぎず、2桁に乗せた日も8回(同15回)と半分以下にとどまる。週間平均視聴率も第1週から順に10・8%→10・3%→9・6%→8・6%と、文字通りのじり貧状態だ。

 また、徳永を事実上のメインキャスターに据えた新体制下では初めてとなるクール(昨年10~12月の3カ月)平均は10・5%と、前クール(同7~9月)から0・3ポイント下落した。これを見る限り、前述した指摘は的中したと言わざるを得ない。桐永の報ステCP起用に当たり、早河はクール平均視聴率11%台を厳命したという。だが徳永の起用は早河の強い意向によるもので、視聴率低迷の責任の半分は早河が担うべきものだ。

 19年の報ステは、新年の特番ウイーク終了後の1月第2週からスタートした。だが早くも2回目の同月8日の視聴率は7・6%と、衝撃的な低水準を記録。小誌1月号掲載の記事で、〝不倫アナ〟徳永の報道番組キャスターとしての適格性に不安を感じ、4月以降のスポンサー降板の可能性を仄めした企業も存在する。冒頭のバンザイ三唱は〝お手上げ〟の暗喩のようである。(敬称略。年齢等の表記は発売当時のまま

女性部下に対しても諸手を挙げて"進撃"していったのかどうかは知らないが、いずれにせよ、桐永氏の躓きの石は、すでに撒かれていた、否、自らが撒き散らかしていたことだけは確かだ。

なお、テレ朝側は上記レポート掲載の「ZAITEN」19年3月号発売後に、桐永の名誉を毀損している、またプライバシーを侵害しているなどといった内容の「抗議文」を小誌編集部に寄せている。ちなみに、小誌編集部は、出身校などの情報についてはプライバシーの侵害には該当しないとの弁護士の見解を得ている。

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