2021年02月号

三井住友トラスト傘下の資産運用会社で……

日興アセットマネジメント「パワハラ専務」の内部告発

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 三井住友トラスト・ホールディングス(HD)の運用会社で、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)から1兆円を預かり、日銀が約10兆円をETF(上場投資信託)で投資している日興アセットマネジメント。そんな同社で幹部らによるハラスメント、果ては賭博行為などのモラルハザードが横行しているという。

専務主宰の「賭け麻雀」

 パワハラ行為が指摘されているのは、ファンドマネージャーやアナリストなど200人以上を擁する資産運用部門のトップで専務執行役員兼最高投資責任者(CIO)の辻村裕樹。慶応大商学部卒で日興証券に入社。2004年に日興アセットに移り、13年にCIOの地位に。日興アセット社長の安倍秀雄は慶応、日興証券時代の先輩にあたり、19年の社長就任と同時に辻村も専務に昇格した。

 日興アセットは先の公的資金を含む合計26兆円もの資金を運用しており、市場への影響力は計り知れない。機関投資家に高いモラルが求められるのは当然だが、同社の運用部門は時代に逆行しているようだ。関係者が憤る。

「辻村氏はCIOに就いてから、運用部門の幹部クラスを集め、3カ月に1度のペースで『幹部会』という飲み会を開くようになりました。赤阪の高級焼肉店『游玄亭』で一番高いシャトーブリアンを頬張りながら、いろいろと訓示を垂れるのですが、内容が酷い。『女は産休を取ってすぐ辞めるから困る』とか、『日本の女は産休が長すぎる』などと女性蔑視発言のオンパレード。子飼いの幹部たちはウンウンと頷いて酒を注ぐような、異様な雰囲気でした」

 これが個人的な飲み会ならばまだしも、「幹部会」は非公式とはいえ、幹部クラスが集う会議体。実際、運用部門の女性社員の割合は1割にも満たず、女性管理職はゼロ。辻村の女性蔑視の傾向が、人事政策に影響を与えていると言える。日興アセットは18年に「女性のエンパワーメント原則」に署名しているが、悪い冗談か。

 そして酒も入り興が乗ると、辻村が、特定の男性社員を愚弄し続けることが常態化していた。

「辻村氏はその男性幹部に対して『なぜ、お前の夫婦は結婚して長いのに、なぜ、子どもを作らないんだ。子どもがいない夫婦は欠陥がある。嫁を検査に連れていったらどうだ』とプライベートに踏み込み、『離婚は癖になる。一度失敗している奴は、どうせ浮気をして、また離婚をするに決まっている』と馬鹿にするのが、幹部会の定番でした。周囲も辻村氏を諫めるどころか、おっしゃる通り、と迎合する有り様」(前出関係者)

 今日では決して許されないハラスメント発言の数々。ところが、辻村の旧態依然ぶりはこれにとどまらない。日興アセット内部では公然と、辻村が主宰する〝賭け麻雀〟に社員が駆り出されているというのだ。
「月に1度のペースで、渋谷、新宿などの繁華街の雀荘に休日にもかかわらず部下を呼び寄せ、1日中、賭け麻雀を打っているのです。1回で相当額を負けてしまう社員もいて、勤務中にその負け金の取り立てもされている。幹部会でも麻雀に行かない幹部は煙たがられ、人事評価に響くのではないかと怯えています」

 巨額資金を預かる運用会社として目も当てられないモラルハザードぶりだが、さらなる問題は、日興アセットの首脳部が辻村の行為を容認していることだ。

 幹部会で槍玉に挙げられていた男性は20年9月頃、ついにメンタルを壊し心療内科を受診。同時に、辻村のパワハラや賭け麻雀を通報した。同社の人事・コンプライアンス部門が調査した結果、それらの事実を認定した。

 ところが―。11月のコンプライアンス部門などで構成される「内部通報審議会」での協議の結果、パワハラ発言は「個人を特定していない」、賭け麻雀は「違法とまでは言えない」として、不問に付す結論を出したのである。

 しかし、幹部会出席者で子どもがおらず離婚歴があるのは通報男性だけ。恣意的な曲解がなければ、「個人を特定していない」との裁定にはならない。

 また、賭け麻雀を「違法性がない」とするのは今日では通用しない。この頃は、黒川弘務前検事長の賭け麻雀報道もあり、違法性については十分に認識されていた時期。世間の常識からかけ離れた裁定がなされているのだ。この裁定により、「多少の違法行為なら許される」という意識が、日興アセット社内で広がっている。

通報者に"報復人事"か

 結局、辻村は1週間程度の謹慎というごく軽微な社内処分が出たものの、実質的に冬休みが伸びただけで、社内にも顧客にもアナウンスはされていないという。

 さらに驚くべきことに、同じ日の内部通報審議会で、通報した男性の降格が決議されていたのだ。

 なんと、男性がパワハラを通報した翌日、この男性から「パワハラを受けた」とする事案の調査が始まる。理由とされているのが9月の部下との軽い口論だが、周囲がハラスメントと思うような具体的な事実はなかったという。しかし、内部通報審議会が辻村を不問にした同じ日、こちらをパワハラと認定。降格処分として、部下のいない閑職に追いやられた。

 しかも処分前の10月末、男性の下で10年以上秘書を務めた社員に突如、異動の内示が出たという。異動の理由は不明というが、この動きは、降格処分ありきで調査が進んでいたことの証左ではないかとの疑念を呼んでいる。

 大甘な辻村への裁定と対照的に、通報男性に対するパワハラ認定に伴う不可解な人事は、内部通報への〝報復人事〟ではないか。

 そしてここにきて、当のコンプライアンス部門のトップにも「セクハラ疑惑」が噴出している。

「部下の女性社員が、最高法務責任者の森田收専務のハラスメントを告発しているようです。森田氏は辻村氏の親友で、同じ日興証券出身者。この告発も適切に処分されるか疑わしい」(関係者)

 コンプライアンス部門のトップさえ、告発を受ける有り様では、自浄能力は全く期待できない。

 本誌および筆者は、日興アセットに辻村の処分や森田への告発について質問書を送付したが、同社は一切の回答を拒否した。

 日興アセットの社内を浄化する残された道は、もはや〝外科手術〟しかないのだろう。本誌は告発者を必ず守る。関係者の情報提供をお待ちしている。(敬称略)

(アウトサイダーズレポート主宰 半田修平)

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