今月号のお題は、元側近の告発で話題になっている「小池百合子東京都知事」でという編集部の指示である。「学歴を平気で詐称するような人が都知事をやっているのも驚きですが、カイロ大卒に固執する人間性をどう見ますか？」とのこと。ふむふむ、それではいつものように得意の悪口を書くとしますか。

　昔から私は、あの「緑のたぬきおばさん」の目つきが嫌いである。（薄っぺらい英語風のスローガンをやたらと口にするところもだが）上目遣いの三白眼で、人の考えていることや腹の中を探りながら言葉を選んでるような表情。だいたい常に他人の腹の中を探ろうとする人間は、自分がいつも嘘を吐いているから。人間は、自分がすることを他人もするものだと考えるのである。詐欺師は自分以外の人間も、他人を騙そうと虎視眈々と狙ってると思うもの。

　まあ基本政治家は多かれ少なかれ嘘つきだが、それでも心から屈託なく笑う表情を見せる時もある。だが、読者の皆さんは小池知事が腹から笑っているところを見たことありますか？ 故安倍晋三総理は「小池さんはジョーカーだから」と評したが、ハリウッド映画「バットマン」に出てくるジョーカーの方が屈託なく笑っている。

　４月に『文藝春秋』で小池知事の右腕だったともいえる元側近が、彼女の学歴詐称を告発したわけだが、小池知事はかつても「カイロ大学」卒業（首席で卒業とまで吹聴していた）詐称疑念が話題になるも、まんまと逃げおおせている。しかし、今回は以前どころの騒ぎではない。Ｘは大荒れである。彼女が「提示」はしても決して他人に触れさせようとしない卒業証書を、偽造であると断ずる理由を述べる数々のポスト。なかには若かりし頃受けた取材記事に「カイロ・アメリカン大学卒業」とされている新聞スクラップを見つけてきてアップしているポストもある。「カイロ・アメリカン大学卒業」から「カイロ大学卒業」しまいには「カイロ大学首席卒業」ということになったらしい。 　なんだか出世魚みたいだな。

　そうそう、Ｘでは「知事の卒業当時、彼女が卒業したとする学科は無かった」という指摘まで上がってきて、もはやカオス状態である。 　

　学歴詐称とは関係ないが、彼女が政界の実力者にすり寄り、権力への階段を駆け登ってきたことも忘れてはなるまい。細川護熙、小沢一郎、小泉純一郎といった時の権力者たちに愛でられし女性議員である。 　私が個人的に小池知事が嫌いな理由がある。彼女が環境相時代に、例によってマスコミ受けと民度の低い選挙民受けを狙って提唱した「クールビズ」だ。後になって環境省の当時の担当者が「エアコン設定温度28度には根拠がない」と告白したが、小池の思いつきのデタラメのせいで、当時はまだＴシャツではなくスーツで仕事をしていた私は、どれだけ暑い思いをして汗をかいたことか！ 上着を脱いでワイシャツ姿であっても、真夏の東京駅ホームで新幹線のドアが開くのを５分も待つと、28度の車内温度設定だと名古屋まで汗がひかなかったんだよ！

  　個人的恨みつらみはここまでとして......。 　

　今回の元側近の暴露が小池知事にどの程度のダメージを与えるかと問われたら、私の答えは残念ながら「ノーダメージ」（小池知事風）である。これまでの小池知事の言動に鑑みると、何もなかったかのように何食わぬ顔でやり過ごすに違いない。公職選挙法違反や私文書偽造罪で刑事告訴されたところで、有罪にならない限り政治家を辞めたりするまい。 　

　政治家はみな面の皮が厚いものだが、彼女は常軌を逸して厚いのだから。化粧も厚いけど。

井川意高（いかわ・もとたか）――大王製紙元会長。1964年、京都府生まれ。東京大学法学部卒業後、87年に大王製紙に入社。2007年に大王製紙代表取締役社長に就任、11年６月～９月に同会長を務める。著書に『熔ける 大王製紙前会長 井川意高の懺悔録』（幻冬舎文庫）など。

......続きはZAITEN４月号で。