ZAITEN2025年08月号
元社員がハラスメント被害を告白!
【特集】KADOKAWA「コンプラ崩壊」の現在地
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ハラスメントに耐えかねて退職
きっかけは、フジテレビが今年1月19日に放送した『Mr.サンデー』にコメンテーターとして出演した黒岩里奈氏の発言と、その直後の「X」への投稿だった。
中居正広とフジテレビ元アナウンサーの女性とのトラブルにフジテレビ社員が関与した問題が報じられて、当時社長の港浩一が初めて記者会見を開いたのが放送の2日前。急遽この問題を扱った番組で黒岩氏は、「クライアントとの関係を良好にするために、社員を犠牲にする風土は、フジテレビに限った問題なのか」といった趣旨のコメントをした。
黒岩氏はこのコメントについて誤解を与えない意図で、放送直後に「X」に自身のアカウントで投稿した。コメントは「フジテレビ擁護の意図ではなく、私の前職での経験を思い出しながらの発話」であると補足。そして、前職での経験とは、KADOKAWAに在籍していた5年前に作家からのセクハラを周囲に相談したところ、上司に守ってもらえなかったことと、社内のパワーハラスメントが一因で退職したことを明かした。
投稿の一部を引用する。 〈私はKADOKAWAという上場出版社で20代を過ごしましたが、少なくとも5年前の同社の文芸は、作家からのセクハラを周囲に相談すると、「気に入られたんだな、よくやったな!」が普通に起きる世界でした。「美人だから/イケメンだから」特定の作家の担当をすることを「合理的」とされる環境に、当時それなりに一生懸命馴染もうとしてしまっていました。結局、クライアントではなく社内の人間関係(ハラスメント)に耐えかねて転職を決めましたが、今でもあの時に何ができたのか、自分があの風土を醸成する一人だったのではと振り返ることがあります〉
テレビやインターネット番組にコメンテーターとして登場する黒岩氏は、大手出版社に勤務する文芸の編集者。24年の都知事選に出馬して5番目に多い15万4638票を集め、今夏に投開票が行われる参院選に向けて新党「チームみらい」を立ち上げた安野貴博氏の妻としても知られる。「X」に過去の話を投稿したのは、メディア業界にフジテレビと同様の体質があるのであれば変えていきたいとの趣旨だった。
ところが、この投稿にKADOKAWA側が異常な反応を見せた。 関係者の話によると、KADOKAWA文芸局で当時局長だった遠藤徹哉が「黒岩の件で話をする」と召集をかけて、投稿から3日後の1月22日午後から文芸局の局全体集会が開催された。その場で遠藤は「社内ヒアリングを行ったところ、黒岩からのハラスメントの訴えは確認されなかった」と作家からのセクハラを否定する趣旨の発言をした。さらに、投稿にあった「社内での人間関係(ハラスメント)に耐えかねて転職を決めました」という部分に対して、「黒岩は休日出勤手当の不正受給で懲戒を受けたことがあり、会社に居づらくなって自主退職を選んだ」と説明したのだ。
これに対して黒岩氏は、在籍時のハラスメントについての確認や聞き取りは行われていないこと、また休日出勤手当の超過支給の事実はあったものの、システム処理上のエラーであり、懲戒処分を受ける類の問題ではないと当時結論づけていたと主張し、この集会での発言内容などについて7項目の質問を、代理人弁護士を通じてKADOKAWA側に送った。
......続きはZAITEN8月号で。