ZAITEN2025年05月号
月刊ゴルフ場批評91
「一の宮カントリー倶楽部」批評
カテゴリ:月刊ゴルフ場批評
千葉県で太平洋に面するエリアといえば外房。今回は九十九里浜の海岸にも近い「一の宮カントリー倶楽部」を取り上げよう。
一の宮といえば、2021年の東京オリンピックで競技会場となった釣ヶ崎海岸があるサーフィンのメッカ。確かにゴルフ場の従業員でも、茶髪で色黒ときたらほぼサーファーだと思っていい。
外海が近いだけあって夏は涼しく、冬は暖かいという気候がセールスポイント。ネックはアクセスの悪さだが、茂原長南インターから「長生グリーンライン」が一宮町まで延伸中で、開通(時期未発表)すれば一気に改善されるはずだ。アクセス難にもかかわらず、昨年の某予約サイトで全国人気ランキングベスト5に入ったというだけに、検証するしかない。
立地は海岸線からは直線距離で2㌔内陸に入った丘陵地帯。急坂を上っていくと、最初に見えるのはドライビングレンジだ。ちょっと狭いなと思ったらアイアン限定。厳密に言えばドライビングエリアではない。
さらに上ると、かなりくたびれたクラブハウス登場。ハウス内もだいぶ年季が入っている感じだ。うーん、パッと見は人気コースとは全く思えない。
この日は東のインコースからのスタート。ティまでバスで送迎と聞いていたが、乗用カートの搬送はどうするの? とマスター室前で待っていたら......。バスの後ろに乗用カートを載せるキャリーカートが連結されている。カートごと運ぶわけだが、キャディバッグの中のクラブがガチャガチャと音を立てていて気が気じゃない。運転は豪快で、後ろのカートが吹っ飛ばされないか心配だった。外房の荒海で育った人は、さては気性が荒いのか。
コースは全体的にフェアウエーが広めで圧迫感は少なく、アップダウンもそれほどキツくない。ブラインドやドッグレッグが多く、変化に富んでいて飽きさせない。
要注意はグリーン。コーライ、ベントとも傾斜がキツく、下りのパットは止まってくれない。
救いはカップの周り約80㌢の距離に円が引かれていることだ。タイのコースでおなじみの、ここに入ればホールアウトとなる「OKサークル」。これだけの難グリーンなら、こうしないと3パットどころでは済まないだろう。
グリーンといえば、この日は本コースと練習グリーンで芝が違っていた。まさに「練習にならない練習グリーン」だった。グリーン以外はプレーしやすいし、人気コースだけあってレストランは人で一杯。メニューの豊富さも味つけもなかなかだし、セルフサービスでコーヒーやアイスキャンディも用意されている。
また、比較的空いている日はスタート時間を10分間隔に設定し、ゆったり回れるようにしている。逆に、3組以上のコンペではスタート間隔を短めにするなど、独自のオペレーションを採用する。
価格設定も含め、カジュアルゴルファーにターゲットを絞った明確なコンセプトと言えるが、アスリートゴルファーには「?」がつくだろう。しかし、人気があるというのもなんとなく理解できた。
●所在地 千葉県長生郡一宮町東浪見3166 ●TEL. 0475-42-7200 ●開場 1972(昭和47)年11月23日 ●設計者 沢井徳三郎 ●ヤーデージ 36ホール、1万3465ヤード(バックティ、コーライグリーン使用時の合計)、パー144