ZAITEN2025年08月号
【対談】佐高信の賛否両論
佐高 信 vs. 関口 宏「テレビ屋が語るテレビ業界の本質と未来」
カテゴリ:インタビュー
せきぐち・ひろし―1943年東京都生まれ。立教大学法学部卒業。ドラマ『お嬢さんカンパイ!』で俳優デビューし、映画『社長シリーズ』などに出演。俳優業の傍ら『サンデーモーニング』など長寿番組で長年司会者を務め、幅広いジャンルの番組で司会者として活躍。半世紀以上テレビ業界に身を置き、自身の肩書を『テレビ屋』と称する。
佐高:関口さんには、日曜朝の報道番組『サンデーモーニング』(TBS系)の司会者と出演者という関係で長い間お世話になりました。出演者としてあの番組の何が一番印象深かったかというと、事前のリハーサルさえない、本当の意味での〝生〟放送だったことです。私はもともとリハーサルが嫌いなので抵抗ありませんでしたが、歴代のゲストの中には驚いた人もいたでしょう?
関口:いましたね。生放送で打ち合わせもなしですと言うと、「え?」と唖然とする人が。
佐高:あのスタイルは最初からですか?
関口:うん。1987年の番組開始以来ずっとあのスタイルでやってきました。私は生放送でのリハーサルは大っ嫌いなんですよ。というのも、同じことを2回も3回もやっていると、どうしても言葉が死んじゃうんだよね。
佐高:私が関口さん以外の番組、特にNHKの番組に呼ばれていくと、生放送でも何度もリハーサルさせられます。あるときは、あまりに何度も同じことを言わされるので頭に来て、「本番では全然違うことを喋るよ」と言ったら、ディレクターに「困ります。やめてください」と泣きつかれました。
関口:普通はアクシデントがあると担当者の責任問題になっちゃいますから、ゲストが何を話すのか、事前に把握しておきたいのはわかるけどね。
佐高:でもそうやって作られる番組なんて何にも面白くない。
関口:そう。「言霊」っていうくらいだから言葉は生きているんだよね。でも、その瞬間、瞬間に飛び出してくる言葉だから命があるのであって、事前に用意した言葉だと大体死んでしまう。それでは視聴者の心には響きません。
佐高:でもそう考えると、今のテレビの言葉はことごとく死んでいるんじゃないですか?
関口:バラエティ番組ですらリハーサルをやるようになっちゃったっていうんだよね。あるいはスタッフがカンペを出して、タレントに喋らせるみたいなこともあるみたい。私自身はそういう番組に呼ばれないから、実際のところは知らないけど。バラエティまでカンペを出しているんじゃあ、テレビの本当の面白さなんて出しようがないんじゃないかと思えて仕方ないですね。 私の大先輩にあたる俳優さんなどは、ビデオが出てきた時点ですでに「ああ、これでテレビもつまらなくなるな」と予言していました。
......続きはZAITEN8月号で。