ZAITEN2026年2月号
【対談】佐高信の賛否両論
佐高 信 vs. 清武英利「記者にとって『とにかく書け』という意識は大事」
カテゴリ:インタビュー
きよたけ・ひでとし―1950年生まれ。1975年に読売新聞社へ入社し、青森支局を振り出しに、警視庁や国税庁担当など、社会部記者として活躍。のち中部本社社会部長、東京本社編集委員、同編集局運動部長を歴任。2011年に読売巨人軍専務取締役球団代表・編成本部長を解任される。その後はノンフィクション作家として活動。本文中の作品以外に『トッカイ 不良債権特別回収部』(講談社文庫)『サラリーマン球団社長』(文藝春秋)『どんがら トヨタエンジニアの反骨(トヨタ86 復活物語)』(講談社)『記者は天国に行けない 反骨のジャーナリズム戦記』(文藝春秋)などがある。
「記者にとって『とにかく書け』という意識は大事」
記者クラブ制度は逆手に取れる
佐高:清武さんとは以前、『メディアの破壊者 読売新聞』(七ツ森書館)という対談集を出したけれど、あれは球団代表だった清武さんが渡邉恒雄への告発をして、読売巨人軍を追われた「清武の乱」の翌年でしたっけ。
清武:ええ、2012年ですね。
佐高:もう13年前か。そこから『しんがり 山一證券 最後の12人』や『石つぶて 警視庁 二課刑事の残したもの』(ともに講談社文庫)とか、ハイペースで書いていらっしゃる。 清武:いえいえ。そのころ、先輩がアドバイスしてくださったでしょう。「仕事は何でも受けろ」って。
佐高:言ったね。「とにかく書け」って。
清武:それを受けてひたすらに書いてきたんですよ。ただ、ギャラが出ないことがあって、そのときは「ありゃあ!」と思ったなあ。
佐高:俺、タダで書けとは言ってないよ(笑)。
清武:ははは、私はその言葉をバカ正直に受け止めてしまって(笑)。
佐高:ともあれ、新刊の『記者は天国に行けない 反骨のジャーナリズム戦記』(文藝春秋)も重版出来だし、清武さんは読売を辞めても物書きとして再起して、立派な仕事をされていらっしゃるから、いいじゃないですか。
清武:いやいや、その「再起」について書いてくれというお話を、たびたびいただくんですが......。自分はそこまで「再起」したという意識ではないんです。それでいえば、佐高さんも山形で教師をしてから、東京に出てきて言論人になっているのも「再起」だと思うんですよ。佐高さんはそのあたりのお話、あまりされませんよね。
佐高:うーん、昔はそれなりにしていたけれど......。
清武:そこに興味があります。とくに私は、ひとりコツコツと原稿を書いている時期、人の貧乏話をよく読んでいた。お前の苦労なんか取るに足らないものだと思えてくる(笑)。
佐高:貧乏物語が物書きのペンを鍛えているというのはあるかなあ。ただ、新聞記者の苦労話とは違うと思います。貧乏物語って、あくまで個の体験じゃないですか。
清武:そのとおりですね。
佐高:物書きは個人だけど、新聞記者は組織の人間なんですよ。記者から物書きとして成功する人というのは、その意識を持つ人が成功している気がします。 そもそも、世界的に見て、日本の新聞っておかしいでしょう? まず、記者クラブで囲われている特権階級なんだから。フリーになったら記者会見に入るのも難しい。自分はそこで育ってしまった、という自覚をもって、その特権意識を振り捨てないと成功しない。
清武:私は記者クラブ制度を逆手に取るくらいの気持ちを新聞記者に持ってほしいと思います。国税庁なんてとくに、記者クラブにいないと情報がとれない。そのインサイダー情報から、個々の記者が動けば特ダネになることだってある。たとえば最近の国税庁がらみの特ダネは、大阪発のものが多いのも、そこだと思うんです。
......続きはZAITEN2月号で。







