ZAITEN2026年1月号

千葉大学名誉教授 保坂 亨

【著者インタビュー】健全な社会に不可欠な〝休む〟ための「処方箋」 千葉大学名誉教授 保坂 亨

カテゴリ:インタビュー

「休むと迷惑」という呪縛
学校は休み方を教えない
平凡社新書/¥1100+税

ほさか・とおる―千葉大学名誉教授。同大学教育学部グランドフェロー。1956年東京都出身。東京大学大学院教育学研究科博士課程単位取得中退。東京大学教育学部助手(学生相談所専任相談員)、千葉大学教授などを経て現職。おもな著書に『いま思春期を問い直す』、『学校と日本社会と「休むこと」』(いずれも東京大学出版会)など多数。

―仕事を「休むこと」と学校を「休むこと」が地続きになっている点に注目されています。

私は教育心理学者ですが、不登校の児童生徒、その保護者と接する機会が多く、かつては、狭い意味での専門領域として「教育相談」と答えていました。私自身、生来虚弱で小中学校時代はよく学校を休みました。高校生になると知恵も付けて〝合法的〟に授業を休んだ経験もありました。こうした自分の体験から「休むこと」にこだわり続けて、教育現場の「休み=欠席」を研究対象として捉えるようになりました。

 一方で、働き方改革やコロナ禍中での行動様式の変化が、休むことについてどう影響していくのか関心を寄せていました。

 ところが、実際には、ほとんど変わらなかった。リモートワークなど、一部ではフレキシブルな発想の転換がありましたが、「働き方改革」が叫ばれて10年、その途中で未知のウイルスが蔓延しても、社会全体が相変わらず「休むこと」に消極的であることに驚いています。

 こうした学校を含めた社会全体の「休むこと」に対する研究調査をまとめた『学校と日本社会と「休むこと」』(東京大学出版会)を2024年4月に上梓しました。「休まないこと」を美徳とする価値観だけが先行して、教育現場で児童生徒に対して「休み方」を教えていないことが、「仕事は休んではいけない」、「休むと迷惑」という価値観や考え方を労働現場に根付かせたのではないか、という仮説を提示しました。

......続きはZAITEN1月号で。

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