ZAITEN2025年12月号

文筆家 小林美香

【インタビュー】『その〈男らしさ〉はどこからきたの?』 文筆家 小林美香

カテゴリ:インタビュー

その〈男らしさ〉はどこからきたの?
朝日新書/¥900+税

こばやしみか―写真・ジェンダー関連の文筆・翻訳のほか、国内外の各種学校・機関でワークショップ、講座・研修、展覧会などを企画。2010年~19年、東京国立近代美術館客員研究員を務める。東京造形大学、九州大学非常勤講師。おもな著書に『ジェンダー目線の広告観察』(現代書館)など。

再生産した価値観の訴求を続ける 広告表現の歪な「男らしさ」

―広告表現としての「男らしさ」に注目したきっかけは何だったのでしょうか。

 1つは、コロナ禍の影響で生活様式が変化したことです。交通機関の利用や公共空間に出る機会が極端に減り、誰もがマスクを着用するようになったことで、コミュニケーションへの欲求として、広告の中の「人の顔」に注目するようになりました。そこで描かれている「働く男」という記号的な表現が、いわゆるコロナ禍以前の働き方を表象しており、「こうした表現は社会の変化とともにどう変わっていくのだろうか」という疑問が浮かびました。以来、広告の男性描写に注目していくようになりました。

 また、ジェンダーの問題意識において、多くの男性が自分事として捉えていない、要するにジェンダーの問題=女性の問題という認識になっていると感じていました。実際に、広告表現におけるジェンダーの問題から、SNS等でいわゆる炎上する事例は、ほとんどの場合、女性の図像です。家父長的な価値観に根差した女性蔑視的な表現は、社会全体が男女平等という考えを共有していても、依然として広告表現としてたびたび再生産され批判を受けます。

 一方で、こうした女性蔑視的な価値観は、裏を返せば、男性に対して過剰な男らしさを求めるものでもあります。この男らしさというのが経済的・社会的な地位に恵まれ、肉体的にも若々しく強靭であるといった非常に狭窄的な価値観です。広告表現には、そういった男性をエリートあるいはデキる男として、記号化するものが非常に多いのです。 『その〈男らしさ〉はどこからきたの?』(朝日新書)では、この記号化した「男らしさ」の問題点を指摘し、ジェンダーの問題において、男性にも当事者意識を高めてもらう意図がありました。

―本書では、多種多様な広告において、「男らしさ」と「社会的な成功」を狭窄的かつ同一視している広告表現の問題点を指摘しています。

 広告表現が記号として多用する「男らしさ」、「デキる男」の表現の1つに、スマートなスタイルで清潔感のある頭髪、若々しく見えるスーツ姿のオフィスワーカーというのが非常に多いです。こうした表象は、高度経済成長期からバブル期における社会的な価値観と言えます。

......続きはZAITEN12月号で。

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