ZAITEN2025年12月号

軍事研究禁止のはずが〝こっそり解禁〟

東北大学「国際卓越研究大」の揺らぐガバナンス

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 今年9月、東北大学で学内の教職員が「おいおい」と突っ込まざるを得ない事態が起きた。それは、防衛装備庁の「安全保障技術研究推進制度」、いわゆる軍事研究予算に東北大の研究者によって申請された課題が2件採択されたからだ。というのも、東北大ではこれまで軍事研究を行わないことを明確に示していた。2014年の学内文書である「東北大学における軍事・国防に関する研究等の基本的考え方」では、〈本学に所属する研究者は、軍事・国防に直接繋がる研究を行ってはならない〉と明記されている。

 さらに、22年4月には防衛装備庁の制度に対して〈本学研究者が研究実施者として応募することは認めない〉と理事・副学長名で学内に周知したほか、役員会でも〈軍事的利用を直接の目的とする研究は行わない〉とする文書を23年3月と今年3月にも出していて、全教員に周知されていた。にもかかわらず、25年度の公募に応募して採択されたのだ。しかも、学内には全く説明がなかった。ある教員は呆れる。

「防衛装備庁から採択の発表があった今も、大学の執行部からは教職員や学生に何の説明もありません。直近の3月にも軍事的利用を直接の目的とする研究は行わないと学内に通知しておきながら、一方で応募したい教員からの相談を受けて、応募を認めていたわけです。これは明らかな二枚舌です。軍事研究をいつ解禁したのか、執行部は説明すべきでしょう」

 防衛装備庁は、「安全保障技術研究推進制度」の趣旨を〈防衛分野での将来における研究開発に資することを期待し、競争的研究費により先進的な民生技術に係る基礎研究について、外部の研究機関等に委託又は補助金を交付する制度〉と説明している。また、24年10月発表の「防衛生産・技術基盤の維持・強化について」には、先進技術の橋渡し研究として装備品の研究開発につなげると明記されており、れっきとした軍事研究だ。

......続きはZAITEN12月号で。

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