ZAITEN2025年11月号
江戸時代から信仰を集める「がま池」の今後は―
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江戸時代から現在の東京都港区・麻布に伝わる「がま池伝説」をご存じだろうか。
かつて、現在の港区元麻布には今の岡山県西部にあたる備中成羽の領主、山崎主税助治正の屋敷があった。ある日、夜回りに出ていた治正の家来が屋敷の敷地内にある池に住む「大がま」に殺されてしまった。これに怒った治正が、大がまを退治することを決心すると、大がまは白衣の老人となって治正の夢枕に立ち、罪を詫びて防火に尽くすことを誓ったという。
その後、文政4年(1821年)7月2日に、当時の古川岸あたりから大火が出て、麻布一帯はほとんど焼けてしまった。しかしその中で、山崎家の屋敷だけが類焼を免れた。その理由は、大がまが水を吹きかけて猛火を退けたからだった。
このことが知れわたると、山崎家には御札を求める人が後を絶たなくなる。山崎家は同年9月から「上」の一字が書かれた御札を授けるようになり、御札は「上の字様」と称され、防火や火傷のお守りとして信仰を集めた。これが伝説の概要だ。
こうした伝承があるがま池だが、都内屈指の高級住宅地である元麻布に今も残っている。その場所は高級分譲賃貸マンション「ウィンザーハウス元麻布」の敷地内だ。ただ、一般には公開されていない。
ウィンザーハウスの周辺には、大使館やインターナショナルスクールなどが建ち並び、要人の自宅も多い。区立麻布運動場や東京都中央図書館、有栖川宮記念公園なども近く、閑静かつセレブの街といった佇まいだ。その一方で、少し奥に入ると長屋のような一帯もあるなど、下町の雰囲気も残る。そんな一角にあるのが、表向きはパソナの保養施設で、実際は接待所として使われていたことで知られる仁風林だ。
そのほど近くに、港区教育委員会が昭和50年(1975年)に立てたがま池を紹介する看板があった。看板には伝説が紹介された上で、次のように書かれている。
《怪奇な伝説が生まれたこの池も、今では半ば以上が埋めたてられたが、昔の面影はわずかに残っている。(中略)文化財を大切にしましょう》
......続きはZAITEN11月号で。