ZAITEN2025年11月号
「豪腕」を自任する金融庁の伊藤豊長官
令和の「信用金庫・信用組合クライシス」
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〝金利のある世界〟で猛烈逆風
10年以上も続いた異次元緩和を正常化する過程で金融システムがハレーションを起こすのは必然だ。当の日銀は物価と賃金上昇の「好循環」を囃し立て、更なる利上げに意欲を見せているが、日本の金融システムの毛細血管とも言える信用金庫・信用組合は「金利のある世界」への移行で猛烈な逆風にさらされ、経営の持続可能性が懸念される事態となっている。
「令和の信金・信組クライシス」を警戒した金融庁は経営監視の強化に乗り出したが、地方の人口減少による貸出先の減少や、インターネット銀行への預金流出などの影響が地銀以上に深刻な協同組織金融機関の経営安定化に向けた妙案は持ち合わせていない。「豪腕長官」を自任する伊藤豊(1989年旧大蔵省)も頭を抱えているのが実情のようだ。 膨らむ国債の含み損 「保有する有価証券の大半は国債など安全資産で、過半が満期保有目的だ。現時点で含み損が経営に直接影響を及ぼすものではない。業界には中央機関である信金中央金庫が資本支援する枠組みとして『信用金庫経営力強化制度』があり、今般、この制度を利用して財務の健全性をより確実なものとすることにした」(リリース要約)。
栃木信用金庫(栃木県)は7月31日、信金中金から50億円規模の資本支援を受けると発表した。日経新聞のネットでスクープされ、慌ててリリースした格好だ。中身は「経営不安は一切感じていないが、制度があるから使うんだ」と言わんばかりの手前勝手な言い草に終始していたが、実際には理事長の伏木昌人ら経営陣の危機感は深かった。
2025年3月期決算で2億6000万円強の最終黒字を確保したものの、金利上昇で国債など保有する有価証券の含み損が約68億円と、自己資本(約52億円)を上回る水準に膨れ上がっていた。
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