ZAITEN2025年11月号

失敗は「自明の理」だった―

【特集1】「洋上風力開発破綻」で始まる〝撤退ドミノ〟

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三菱商事が世界的なインフレや円安による建設費高騰を理由に、洋上風力発電開発から全面撤退。 これに追従して他の落札企業からも「撤退ドミノ」が起こるのは時間の問題だ。

 経済産業省が「再生可能エネルギーの切り札」と煽ってきた洋上風力発電の開発バブルが遂に崩壊した。国の第一弾の公募入札(2021年12月)で秋田県や千葉県の沖合3海域を「総取り」した三菱商事が、世界的なインフレや円安による建設費高騰を理由に全面撤退したのがきっかけだ。社長の中西勝也は「売電価格を2倍以上にしても事業が成り立たない」と泣き言をいい、日本での洋上風力ビジネスそのものに見切りを付ける考えを示唆した。第2、第3弾の公募で海域を落札した大手商社や大手エネルギー企業も経産省の甘言に乗せられて甘い収支計画を立ててきた事情は同じで、軒並み「採算見通しが全く立たない」などと阿鼻叫喚の体。三菱商事に続く「撤退ドミノ」が起こるのは時間の問題といえる状況だ。

「再エネ政策の破綻」を恐れる経産省は、洋上風力の落札事業者を引き留めるため、売電価格の大幅な引き上げや公的支援拡充に乗り出しているが、そうなれば、電気料金に跳ね返り、国民に過大な負担がしわ寄せされる。そもそも開発環境や制度設計をまともに整えないまま、欧州の「猿真似」のごとく洋上風力に飛びついたところで失敗するのは自明の理だった。杜撰なエネルギー行政を続けた経産省の罪は重い。

声を荒げた武藤経産相

「洋上風力全体に対する社会の信頼そのものを揺るがしかねない」。経済産業相の武藤容治は8月27日、撤退の報告に訪れた三菱商事社長の中西に対し、珍しく声を荒げた。通商産業相や外相、自民党総務会長などを歴任した武藤嘉文を父に持つ「毛並みの良さ」とは裏腹に「政治家としての売り物は温厚な性格くらい」(永田町筋)とされる軽量級大臣が憤りを露わにしたのは、省を挙げて鳴り物入りで推進してきた洋上風力の開発の出鼻をくじかれた衝撃が大きかったからだ。

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