ZAITEN2022年011月号

月刊ゴルフ場批評61

「日高カントリークラブ」批評

カテゴリ:月刊ゴルフ場批評

日高CC1番_S.jpg その名のとおり、埼玉県日高市にある老舗コースが日高カントリークラブ。日高市といっても関東エリアでも印象が薄く(失礼!)、どの辺か想像しにくいかもしれないが、川越市や狭山市、飯能市が隣接といえばなんとなくイメージできるだろう。ゴルフ場でいえば東京GCや霞ヶ関CC、狭山GCなど超名門コースが軒を連ねる、日本でも有数の名門エリアだ。

 2019年には「日本シニアオープン」を開催したことで若干脚光を浴びたが、周辺のコースが有名すぎて、ワリを食ってきたともいえるだろう。  

 開場は1961年、設計は植物学者でもあった相馬正胤。戦前のゴルフ界で日本の気候に合うベント芝を研究し、「相馬ベント」の名で知られる相馬孟胤氏の実弟だ。これ、ちょっと豆知識ね。

 その相馬氏、もともとあった松を多く残し、戦略性を高めたレイアウトに仕上げた。  

 当時に比べるとだいぶ松は剪定されたようだが、日本シニアオープンでも難コースぶりが話題となったのは確かだ。  

 フェアウエーは広いが攻略ルートに松が絡み、微妙な起伏と相まって、グリーンへのショットが一筋縄ではいかない。グリーンもホールによってバリエーションが豊富な形状だから、実にさまざまなアプローチを要求される。派手さはないが、玄人好みのコースといえるだろう。

 もう一つの特徴はホール立ての複雑さ。東、西、南の27ホールが複雑に絡み合うようにレイアウトされていて、プレーしていて次のホールがどちらにあるか分かりにくいうえ、ホール毎に風の向きが変わるので計算が難しい。

 ゴルフの聖地、英国「セントアンドリュース」のオールドコースは同じ方向に数ホール進み、折り返して逆方向に戻ってくる。風の強さはともかく、風向きはハッキリ認識しやすい。  

 一方、今年の「AIG女子オープン」の舞台となったスコットランドの「ミュアフィールド」は、日高CCのように渦を巻くようにホールが展開していく。ただでさえ難しいコースのうえ、風向きの読み方でもゴルファーを苦しめるように仕組まれている。

 面白いミュアフィールド型の日高CCはメンテナンスも申し分ないのに、近隣のコースが有名すぎて霞んでしまっているとすれば、不憫でたまらない......。  

 また、ハウス周りの施設の配置も一考の余地ありだ。

 古くて簡素なのは歓迎だが、27ホールにしては手狭。そのうえ駐車場や練習場、練習グリーン、スタートホールなどが狭いエリアに集中しており、移動の手間は省けて使い心地は悪くないものの、逆に近すぎて窮屈に感じる。

 駐車場のすぐ横にはキャディ棟もあって、「仕事モード」に入る前の私服姿の従業員の様子が丸見えなのだが、従業員の素の姿はあまり見たくない。ホテルでもレジャー施設でも、「舞台裏」は見せるべきではないだろう。

 従業員の仕事ぶりには何の不満もないだけに、直せるところは改善して、もう少し脚光を浴びてほしいと思うコースだった。

●所在地 埼玉県日高市高萩1203 ●TEL. 042-989-1311 ●開場 1961(昭和36)年1月23日 ●設計者 相馬正胤 ●ヤーデージ 27ホール、1万87ヤード(Aグリーン使用時・バックティ)、パー108

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