ZAITEN2024年05月号
月刊ゴルフ場批評79
「花咲カントリー倶楽部」批評
カテゴリ:月刊ゴルフ場批評
これまで名前さえ聞いたことがないコースへ行く前日は、気持ちも高まりドキドキするはずだが、今回はまったく気が乗らない。中央自動車道大月IC下車5分の「花咲カントリー倶楽部」。アクセスはいいが、場所が「大月」と聞いただけで激しいアップダウンと、せせこましいコースしか頭に浮かばない。どうせ山梨まで行くなら、河口湖近辺まで足を伸ばせば楽しめるコースがあるのだが。
ICを降りて国道を曲がると、いきなりの急坂。「ほら、やっぱり」と警戒心が頂点に達する。
しかし、ハウスを一歩出た先に広がっていたのは、山の斜面に囲まれてはいるが、広々としたフェアウエーだ。段々畑方式とでもいうのか、アップダウンはホール間のインターバルで吸収し、プレーエリア自体はほぼフラットな造りになっている。
今回訪れたのは厳冬期で、使い捨てカイロを貼りまくったが、これが意外と寒くない。ティも凍結せずに普通にティアップできた。
嬉しい誤算をかみしめながらのスタートとなったが、前の組がティアップしているのにティマークが見当たらないぞ。近づいてみると、見たこともないくらい薄くて小さいペラペラの板状のティマークだ。大したことではないと思われそうだが、その後も何度かティマークに気づかず通りすぎてしまったから不便極まりない。
気を取り直してコースを眺めると、その後もフェアウエーは広くて傾斜もキツくない。ビギナーでもまずまず気軽に楽しめる。実際、客層も若い人が目立っていた。コースコンディションもセルフ制の割には上々で、グリーンの転がりもスムーズだ。
真冬にもかかわらず気分のいいゴルフを満喫していたら、8番を終わって9番に向かうカートパスでドンデン返しがきた。いくらカートを走らせても9番ホールに一向に辿り着かないのだ。かれこれ5分以上走行。芝を養生するナセリ(畑)やコース管理車両が見えてきて、ひどく不安になった。それほど9番は遠かった。
自走式カートなのだから、もう少し案内を丁寧にしてほしい。そういえばグリーンサイドには普通は必ずある「カート停止位置」という看板も見当たらなかったから、いろいろ惜しいんだよなぁ。
この日のティタイムは8時前で週末のプレー。予想はしていたが、ハーフターンでの待ち時間は1時間45分!
とにかくレストランに向かったが、再びビックリだ。食事やサービスはごくごく普通だったが、レストラン内にショップのごとくゴルフシューズやキャディバッグ、ゴルフクラブなどが颯爽と並べられている。この長い昼休憩を利用して、買わせようという魂胆か!
奥には板敷きのスペースがあり、ウォーキングマシーンも鎮座。壁際には金魚やメダカを入れた水槽が並んでいる。レストランの奥が田舎の公民館みたいだ...。確かに少しは時間を潰せたが、不可思議すぎて戸惑いが半端ない。
中央道の都県境で見つけた貴重な〝癒やし系コース〟は、ちょっぴりマイペース運営の不思議なゴルフ場でもあったのだ。
●所在地 山梨県大月市大月町花咲1872-1 ●TEL. 0554-22-3145 ●開場 2001(平成13)年9月1日 ●設計者 市川造園土木 ●ヤーデージ 18ホール、6201ヤード パー72