ZAITEN2024年06月号
想定される〝最悪〟のシナリオはー
【特集】植田日銀「マイナス金利解除」で待つ〝異次元地獄〟
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「様々な幸運にも恵まれ、いくつかの政策変更を進めることができた」―。「史上初の学者総裁」と騒がれてから1年。日本銀行総裁の植田和男が感慨に浸っていられたのも束の間だった。
確かに3月の金融政策決定会合で、満を持して短期のマイナス金利政策の解除や長期金利を低位に抑え込む長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の撤廃などを決め、11年にわたった「異次元緩和」からの脱却をアピールした姿は得意絶頂の様子だった。しかし、百戦錬磨の投機筋から「見掛け倒し」とすぐに見透かされ、外国為替市場では円相場が1ドル=154円台半ばまで急落する誤算に見舞われた。約34年ぶりの円安・ドル高水準だが、それでもなお、円安は止まらない様相だ。
かつて「円の信認を守るのが中央銀行の使命」と教え込まれた日銀OBからは早期の追加利上げを求める声も上がっているが、安易に金融引き締めに走れば、長年「金利のない世界」にどっぷり浸かり、借金を積み上げてきた国や企業、家計が耐えられない。歴史的な円安の大波に手も足も出せない植田日銀の様子はまるで「地獄」に嵌まったかのようだ。
国会でブレブレ発言
「為替が経済・物価情勢に無視できない影響を与えることもあり得る。そういう事態になれば、金融政策の対応を考える」(参院財政金融委員会/4月9日) 「為替が動いたから直接的に金融政策の変更を考えようということでは全くない」(衆院財政金融委員会/4月10日)
円安と金融政策運営を巡る植田の国会でのブレブレ発言は、日銀が置かれた苦しい立場を浮き彫りにした。植田日銀のシナリオでは、3月19日の決定会合で17年ぶりの利上げとなるマイナス金利解除に踏み切れば、それを起点として為替相場は円高方向に転換するはずだった。
......続きはZAITEN6月号で。