IT上場「SHIFT」関連会社の文化財所有に懸念

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 江戸時代から現在の東京都港区・麻布に伝わる「がま池伝説」をご存じだろうか。  

 かつて、現在の港区元麻布には今の岡山県西部にあたる備中成羽の領主、山崎主税助治正の屋敷があった。ある日、夜回りに出ていた治正の家来が屋敷の敷地内にある池に住む「大がま」に殺されてしまった。これに怒った治正が、大がまを退治することを決心すると、大がまは白衣の老人となって治正の夢枕に立ち、罪を詫びて防火に尽くすことを誓ったという。

 その後、文政4年(1821年)7月2日に、当時の古川岸あたりから大火が出て、麻布一帯はほとんど焼けてしまった。しかしその中で、山崎家の屋敷だけが類焼を免れた。その理由は、大がまが水を吹きかけて猛火を退けたからだった。

 このことが知れわたると、山崎家には御札を求める人が後を絶たなくなる。山崎家は同年9月から「上」の一字が書かれた御札を授けるようになり、御札は「上の字様」と称され、防火や火傷のお守りとして信仰を集めた。これが伝説の概要だ。

 こうした伝承があるがま池だが、都内屈指の高級住宅地である元麻布に今も残っている。その場所は高級分譲賃貸マンション「ウィンザーハウス元麻布」の敷地内だ。ただ、一般には公開されていない。  

 ウィンザーハウスの周辺には、大使館やインターナショナルスクールなどが建ち並び、要人の自宅も多い。区立麻布運動場や東京都中央図書館、有栖川宮記念公園なども近く、閑静かつセレブの街といった佇まいだ。その一方で、少し奥に入ると長屋のような一帯もあるなど、下町の雰囲気も残る。そんな一角にあるのが、表向きはパソナの保養施設で、実際は接待所として使われていたことで知られる仁風林だ。

 そのほど近くに、港区教育委員会が昭和50年(1975年)に立てたがま池を紹介する看板があった。看板には伝説が紹介された上で、次のように書かれている。

《怪奇な伝説が生まれたこの池も、今では半ば以上が埋めたてられたが、昔の面影はわずかに残っている。(中略)文化財を大切にしましょう》

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ふるや・つねひら―1982年札幌市生まれ。作家、文筆家。立命館大学文学部史学科(日本史)卒業。インターネット、ネット保守、若者論などを中心に言論活動を展開。著書に『敗軍の名将』『シニア右翼』『左翼も右翼もウソばかり』など多数。近刊に『参政党と神谷宗幣 不安と熱狂の正体』。

佐高:先の参院選で、政党批判票を最も集めたのが、参政党らしいですね。読売新聞の出口調査によると、石破茂を支持しないと答えた人の18%が参政党に投票したとか。  

 参政党としては、石破の総理辞意表明をどう受け止めていると思いますか?

古谷:石破政権の批判を展開しつつも、いざ辞意表明となると複雑な心境だったのではないかと思います。  来る総裁選で有力視される高市早苗氏が新総裁となると、積極財政や国家観で参政党と重複して、参政党の存在感が埋没すると考えているのではないでしょうか。

佐高:参政党としては、誰が総裁になるのがベストだと考えているのでしょう?

古谷:小泉進次郎氏であれば参政党との違いは明確になるので、小泉新総裁の方が戦いやすいと考えていると思います。  参院選の勢いをそのまま来るべき衆院総選挙でも維持したいから、一刻も早い解散を望んでいると思いますが、衆院は参院と違い小選挙区ですから参政党の当選は難しく、比例復活のみに重点を置いた選挙戦を志向しているのではないかと。

佐高:実は参政党にとっては石破の続投がベストだった?

古谷:そうだと思います。総裁が高市氏か小泉氏のいずれかで、参政党の党勢は大きく変化することは必然だと思います。

佐高:いずれにせよ、比例代表の得票数は742万5053万票、参院選で14議席を獲得したからこそ出てくる疑問だよね。古谷さんは、参政党を結成する前、神谷宗幣代表がまだ無名の頃からの知り合いだったんでしょう。

古谷:はい。神谷氏が東京に出てきた初期の頃から知っています。はじめて会ったのは、12年前の2013年です。私も若手の保守、ネトウヨ論客で名が知られていましたので(笑)、都内で開催された右派集会で出会ったのがきっかけです。  

 彼は35歳で、僕は30歳でした。その頃の彼は大阪・吹田市議を辞めて、衆議院に自民党公認で立候補したものの落選した。それで東京に出て来ました。  

 私が当時レギュラー出演していたCSの番組『日本文化チャンネル桜(チャンネル桜)』だったり、編集長をしていた青林堂の保守言論雑誌『ジャパニズム』で何度かインタビューしたり、ほかにも彼にはいろいろと紹介しました。

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日本製鉄〝鬼っ子〟USスチールの「深刻な危機」

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 日本製鉄が米USスチール(USS)の買収代金140億㌦(約2兆円)を払い込んだのが6月18日。親会社として「100日計画」で相乗効果発揮の策を練ると宣言した。だが、8月11日、米ペンシルベニア州のUSS主力製鉄所で12人の死傷者を出す爆発事故が発生。かねて取り沙汰された設備老朽化の懸念が的中し、日鉄の描いたUSS再生プランに早くも暗雲が漂ってきている。

通常操業に数百万ドル

 事故が起きたのは、USSモンバレー製鉄所クレアトン地区のコークス炉。8月11日午前10時50分頃、最初の爆発があった。爆発事故による死者は2人、負傷者は10人でこのうち5人は重傷だった。同月15日のUSSの発表では、コークス炉のガスバルブの洗浄を行っていた際にバルブが破損し、漏れたガスに引火して爆発した可能性が高いとされた。

 米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)』は同13日付電子版で〈試される日鉄の投資計画、USスチール工場爆発〉と事故の深刻さを報じた。  モンバレー製鉄所は米国内4カ所にあるUSSの主要製鉄所の1つで、高炉2基を抱える。日鉄は買収後、米国内で110億㌦(約1・6兆円)の設備投資を28年までの3年間に実施すると米大統領ドナルド・トランプに約束し、このうち22億㌦(約3200億円)をモンバレー製鉄所に投じると公表しているが、WSJによると、その投資計画リストにクレアトン地区のコークス炉の大規模改修は含まれていないという。

 コークス炉では石炭を乾留(蒸し焼き)し、高炉の製鋼に不可欠な還元剤や燃料として使われるコークス(石炭の炭素部分だけを残した燃料)を製造する。クレアトン地区には6カ所の炉群があり、コークス工場として国内最大規模。モンバレー製鉄所やゲイリー製鉄所(インディアナ州、高炉4基)向けにコークスを供給していたが、今回の爆発で2つの炉群が停止したと報じられている。

 結果としてクレアトン地区の6つのコークス炉すべてがストップする事態は避けられたが、今回の爆発事故により、地元ペンシルベニア州を中心に批判の多かったUSSの安全対策への疑問が再浮上している。同社のクレアトンコークス工場は、これまで度々事故やトラブルに見舞われてきた。  

 2010年に今回と同様の爆発事故が起き、20人の負傷者を出したのをはじめ、18年のクリスマスイブに大規模火災が発生し、その後数カ月にわたり工場の排出制御システムが停止。米紙『ニューヨーク・タイムズ』は〈この火災で4千万ドルの損害が発生し、多数の人々が呼吸器系の疾患で医療機関を受診した〉(8月12日付電子版)と伝えている。

 今年に入ってからも、2月にコークス工場のバッテリー設備の故障で発生したガスが引火して火災を起こし、作業員2人が病院に搬送されたのに続き、6月には制御室の故障で二酸化硫黄の濃度が上昇するトラブルが発生した。

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令和の「信用金庫・信用組合クライシス」

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〝金利のある世界〟で猛烈逆風

 10年以上も続いた異次元緩和を正常化する過程で金融システムがハレーションを起こすのは必然だ。当の日銀は物価と賃金上昇の「好循環」を囃し立て、更なる利上げに意欲を見せているが、日本の金融システムの毛細血管とも言える信用金庫・信用組合は「金利のある世界」への移行で猛烈な逆風にさらされ、経営の持続可能性が懸念される事態となっている。

「令和の信金・信組クライシス」を警戒した金融庁は経営監視の強化に乗り出したが、地方の人口減少による貸出先の減少や、インターネット銀行への預金流出などの影響が地銀以上に深刻な協同組織金融機関の経営安定化に向けた妙案は持ち合わせていない。「豪腕長官」を自任する伊藤豊(1989年旧大蔵省)も頭を抱えているのが実情のようだ。 膨らむ国債の含み損 「保有する有価証券の大半は国債など安全資産で、過半が満期保有目的だ。現時点で含み損が経営に直接影響を及ぼすものではない。業界には中央機関である信金中央金庫が資本支援する枠組みとして『信用金庫経営力強化制度』があり、今般、この制度を利用して財務の健全性をより確実なものとすることにした」(リリース要約)。

 栃木信用金庫(栃木県)は7月31日、信金中金から50億円規模の資本支援を受けると発表した。日経新聞のネットでスクープされ、慌ててリリースした格好だ。中身は「経営不安は一切感じていないが、制度があるから使うんだ」と言わんばかりの手前勝手な言い草に終始していたが、実際には理事長の伏木昌人ら経営陣の危機感は深かった。

 2025年3月期決算で2億6000万円強の最終黒字を確保したものの、金利上昇で国債など保有する有価証券の含み損が約68億円と、自己資本(約52億円)を上回る水準に膨れ上がっていた。

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東京電力 経産省が完全国有化目指すも「資金繰り破綻」寸前

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「約束が再び破られた。東京電力ホールディングス(HD)の再建スキームは破綻したということだろう」。東電のメーンバンクの大手行幹部は苦々しく呟いた。  

 東電や経産省は当初2024年度内に予定していた新たな再建計画「第5次総合特別事業計画(5次総特)」の策定を先送り。その際「25年夏までにはお示しする」(東電幹部)と約束しながら、それすらも果たせなかったのだ。収益改善の柱と当て込んできた柏崎刈羽原発(KK・新潟県)の再稼働の時期が見通せないことを強調しているが、要は経営の著しい悪化で、頭脳明晰な経産官僚をもってしても「収益計画の辻褄合わせがもはやできなくなった」(霞が関筋)ということだろう。  

 フリーキャッシュフロー(事業で稼いだキャッシュから設備投資分を差し引いた純現金収支)が19年3月期以降、7期連続で赤字となる中、東電は資金繰り破綻の危機にさえ瀕している。経産省は少数与党政権下の政局混乱などに乗じ、水面下で完全国有化も含む新たな東電救済策を検討しているようだが、それは福島第1原発事故後の「東電処理策の失敗」という行政責任のツケを国民に回すことにほかならない。

稼ぐ力が衰退の一途

 実際、東電の経営の惨状は目を覆わんばかりだ。25年4~6月期にメルトダウンした1~3号機の燃料デブリ(溶融燃料)の取り出し準備にかかる費用9030億円を特別損失として計上。8576億円の最終赤字(前年同期は792億円の黒字)に転落した。

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【特集2】大東建託の火災保険「押し売り商法」

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 土地の所有者に営業して賃貸住宅の建築を請け負うとともに、完成した建物はオーナーから一括で借り上げ、客付け(入居者の募集と仲介)から建物管理までを一貫して代行する「サブリース」により、業界トップとなる129万戸(2025年3月期末時点)の賃貸住宅を管理する大東建託。

 だが、同社が管理する物件への入居に際して、特定の火災保険への加入を不当に強制された、との証言が入居者から得られた。 系列の火災保険加入を強制  大東建託との間でトラブルに見舞われたのは、今年夏に首都圏を離れ、別の地方都市で暮らすことが決まっていたAさん。

 春先からインターネットの不動産サイトで条件に合うアパートを探し始めて間もなく、ある物件に目をつけ、春のうちに物件所在地の不動産仲介業者・B社を介して契約した。契約に際して賃貸借契約の開始日は、実際に引っ越すことになる月の前月下旬にする、ということで双方合意し、その際に敷金・礼金のほかクリーニング代なども含め初期費用20万円を払い込んだ。

 自分が契約したのが大東建託のサブリース物件であることにAさんが初めて気づいたのは、契約時にB社から銀行口座の残高証明を求められ、その提出先が大東建託であると告げられた時だった。

 Aさんによれば、この契約時にB社の当時の経営者も、実は自分が大東建託の出身者だと明かしたといい、「『あの会社はノルマが厳しく、成績が出せない社員はすぐにクビになる』と話していたのが印象的でした」(Aさん)という。

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【特集1】「洋上風力開発破綻」で始まる〝撤退ドミノ〟

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三菱商事が世界的なインフレや円安による建設費高騰を理由に、洋上風力発電開発から全面撤退。 これに追従して他の落札企業からも「撤退ドミノ」が起こるのは時間の問題だ。

 経済産業省が「再生可能エネルギーの切り札」と煽ってきた洋上風力発電の開発バブルが遂に崩壊した。国の第一弾の公募入札(2021年12月)で秋田県や千葉県の沖合3海域を「総取り」した三菱商事が、世界的なインフレや円安による建設費高騰を理由に全面撤退したのがきっかけだ。社長の中西勝也は「売電価格を2倍以上にしても事業が成り立たない」と泣き言をいい、日本での洋上風力ビジネスそのものに見切りを付ける考えを示唆した。第2、第3弾の公募で海域を落札した大手商社や大手エネルギー企業も経産省の甘言に乗せられて甘い収支計画を立ててきた事情は同じで、軒並み「採算見通しが全く立たない」などと阿鼻叫喚の体。三菱商事に続く「撤退ドミノ」が起こるのは時間の問題といえる状況だ。

「再エネ政策の破綻」を恐れる経産省は、洋上風力の落札事業者を引き留めるため、売電価格の大幅な引き上げや公的支援拡充に乗り出しているが、そうなれば、電気料金に跳ね返り、国民に過大な負担がしわ寄せされる。そもそも開発環境や制度設計をまともに整えないまま、欧州の「猿真似」のごとく洋上風力に飛びついたところで失敗するのは自明の理だった。杜撰なエネルギー行政を続けた経産省の罪は重い。

声を荒げた武藤経産相

「洋上風力全体に対する社会の信頼そのものを揺るがしかねない」。経済産業相の武藤容治は8月27日、撤退の報告に訪れた三菱商事社長の中西に対し、珍しく声を荒げた。通商産業相や外相、自民党総務会長などを歴任した武藤嘉文を父に持つ「毛並みの良さ」とは裏腹に「政治家としての売り物は温厚な性格くらい」(永田町筋)とされる軽量級大臣が憤りを露わにしたのは、省を挙げて鳴り物入りで推進してきた洋上風力の開発の出鼻をくじかれた衝撃が大きかったからだ。

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【特集1】中西社長に問われる〝責任問題〟追及の大合唱

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洋上風力発電事業からの撤退、そして本誌が報じてきた垣内威彦会長の愛娘の縁故採用―。今、三菱商事社内では中西勝也社長への〝責任〟を問う声が静かに渦巻いている

 不穏な気配である。9月上旬、三菱商事に衝撃が走った。

「社長に脅迫状が届いたらしい。しかも、1通ではないようだ」  

 原因は言うまでもない。1週間余り前の8月27日に発表した、3海域の洋上風力発電事業の全面撤退である。社長の中西勝也は記者会見の冒頭、国策プロジェクトからの撤退を「断腸の思い」と語ったが、そのあと1時間で打ち切られた会見は言い訳の連続。「風車の建設費が当初の2倍以上に膨らみ、投資回収が困難になった」とインフレ影響を強調し、それを補塡する「制度が追い付いていない」と国の入札制度の不備まで指摘した。多方面の非難は激しい。

「謝罪会見かと思ったら、まるで独演会じゃないか」
 とりわけ信頼を裏切られた地元、千葉県と秋田県の怒りは収まらない。中西のお詫び行脚に対し、同28日に面談した千葉県知事・熊谷俊人は「謝罪の態度ではない」と周囲に吐き捨てた。こうした中西の行動が脅迫状を招いたことは明らかだろう。  では、当の本人は今、どうしているのか―。

揺らぐ「社長の正当性」

「盛んに海外出張へ出ている。名目は各部門の事業視察だが、大半は遊びだろう」  

 社内からは怨嗟の声が上がる。中西の娘は海外で生活しており、脅迫状の実害の怖れは小さい。その家族と中西は出張を口実に団欒、ゴルフを楽しみ、グルメ三昧の日々という。下戸の中西はアルコールは呑めないが、好物のスイーツに舌鼓を打っていたらしい。

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【特集1】三菱商事が抱える「欧州最大規模の環境汚染」

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三菱商事の「リスク爆弾」

イタリアの地方裁判所は、今年6月、環境汚染をめぐって三菱商事元社員3人らに有罪判決を下し、 賠償金の支払いを命じた。元社員らを知る周囲から聞こえてきたのは、当時の呆れた経営実態だった。

「ヨーロッパ最大規模のPFAS環境汚染」として、イタリア国内をはじめ欧州や日本でも報じられたのが、1996年から2009年まで三菱商事の100%子会社だったミテニ社が〝永遠の汚染物質〟と言われる有機フッ素化合物のPFASを垂れ流した問題だ。PFASは重篤な疾患やがんの原因とされている。

 イタリア北東部に位置するベネト州のヴィチェンツァ県、パドヴァ県、ヴェローナ県で家庭の水を無自覚に飲んでいた住民に健康被害を与えたとされ、被害者は35万人にのぼると想定されている。

 この問題で三菱商事の元社員4人や、三菱商事から09年にミテニ社を1ユーロで買収したドイツの化学専門投資グループICIG(International Chemical Investors Group)の幹部、それに現場責任者ら15人が起訴された。裁判はベネト州のビチェンツァ地方裁判所で、市民が参審員で参加する参審制のもとで21年から4年にわたって審理され、今年6月26日に判決が言い渡された。有罪判決を受けたのは15人中11人で、量刑は拘禁刑2年8カ月から17年6カ月。さらに、イタリア環境省への賠償金として総額約5700万ユーロ(約96億円)を連帯して支払うよう命じられている。

 三菱商事の元社員については、起訴された4人のうち3人に有罪判決が言い渡され、1人は無罪となった。

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「富士クラシック」批評

富士クラシック のコピー.jpg 山梨県富士河口湖町にある「富士クラシック」だが、河口湖畔から25㌔ほど富士宮方面に向かう。高速を降りてからの下道が長いのには辟易するが、一般道を曲がってコースへの進入路に入った瞬間、衝撃が走る。

 いきなり広々とした空間が開け、正面のクラブハウスまで2車線の道路が真っすぐ伸びた先には、眼前に迫ってくる富士山頂の勇姿が飛び込み、圧巻の迫力だ。

 コース用地は元牧草地で樹々も疎らだから、とにかく空が広い。その広い空の一角を常に富士の頂きが占めている。富士山の眺望が望めるゴルフ場は他にいくらでもあるが、「富士山でゴルフをしている」という表現がピッタリなのは希少。移動距離を犠牲にした甲斐があるというもんだ。

 標高は1200㍍。避暑地といわれている河口湖の標高が833㍍で、それより400㍍近く高いから、気温が30度に達することは珍しく、ちょっと曇ると真夏でも肌寒い。この標高ともなると、気圧も低くなるから、下界よりかなり飛距離が伸びると言われる。

 今では北海道でさえ灼熱の地と化した日本列島。ここは真の避暑地と言えるうえ、洋芝のフェアウエーやベントグリーンを良好なコンディションに保つことができる、国内でも貴重なコースなのは間違いない。

 コース設計は、英国出身のデズモンド・ミュアヘッド。ゴルフコースに芸術を持ち込んだ鬼才だ。同コースも18ホール全体は葛飾北斎の「富嶽三十六景」をモチーフにしていて、その名画を題材にしていることで知られている。

 中でも有名なのは、「神奈川沖浪裏」の波を池とバンカーで表した17番パー3、「駿州江尻」の稲穂が揺らめく様をフェアウエーのうねりで表現した3番パー4だ。

 また、16番パー4は、フェアウエーど真ん中に配された卍型バンカーで有名。北斎の作品について勉強していくのも一興だろう。  コースの地形はなだらかな丘陵地。フェアウエーは広くアップダウンは少ないが、山麓を横切るように造られているため、わずかながらツマ先上がり、ツマ先下がりのライになるケースが多い。

 ミュアヘッドの真骨頂ともいえる、大胆な池やバンカーの配置は強烈。美しくはあるが、うねりがあるフェアウエーはなかなかフラットなライから打たせてもらえない。正直、アベレージゴルファーにはしんどい。  

 加えて、高山特有の強風の吹く日も多く、特に向かい風のホールは一気に難易度が増す。うねりがある大きなワングリーンもやっかいで、富士山からのきつい芝目がプレーヤーを惑わせる。

 素晴らしい眺望と理想的とも言える地形。この大地が持つスケールに対し、凝ったレイアウトのギャップがたまらない、という人もいるだろう。半面、ティーイングエリアとグリーンを配置するだけでも、素晴らしいゴルフ場ができるんじゃないかな。ちっぽけな人間があれこれいじり過ぎという、少しおセンチな気分になった。

 もっと素朴なリンクスでもよかったんじゃないか? 決して大叩きした言い訳じゃないぞ。

●所在地 山梨県南都留郡富士河口湖町富士ケ嶺2-2 ●TEL. 0555-89-3300 ●開場 1995年10月1日 ●設計者 デズモンド・ミュアヘッド ●ヤーデージ 18ホール、7171ヤード、パー72

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