一部上場を視野に入れる急成長企業が、同業他社への妨害ともいえる営業活動を行っている―。 独占禁止法違反スレスレの〝グレーゾーン〟ともいえるその手法とは?
節電用の電子ブレーカーを製造・販売するネオ・コーポレーション(大阪府大阪市、以下ネオ社)。1999年創業と歴史は浅いが、2018年には日本経団連に加盟し、急成長した。株式上場も視野に入れる。24年12月期の売上高は約93億円、純利益は約17億円に上る。
本誌25年10月号では同社幹部社員による一般社員への壮絶パワハラを報じたが、さらに取材を進めるとネオ社について新たな事実が浮上した。同業他社の販売店に対する嫌がらせとも言える営業活動が日常的に繰り返されている実態が明らかになったのだ。
まずは業界の取引構図を説明しよう(56頁参照)。
電気代を削減する目的で節電用の電子ブレーカーの購入を検討しているユーザー(顧客会社、図中のA社)がいるとする。販売店(ネオ社のほか、図中のB社などの同業他社)から電子ブレーカー商品を購入するが、この際に販売店と取引のあるリース会社(図中のC社)とリース契約を結び、C社に月々の代金を支払うことになる。
C社は、A社の代わりに販売店から商品を購入し、A社に貸し出すサービスを提供。一方でB社はC社と商品の売買契約をし、C社から機器購入代金を受け取る。こうした取引構図は一般的に、コピー機などのOA機器や店舗設備など初期費用が多額になる設備購入などで利用されることが多い。
......続きはZAITEN1月号で。
オープンハウスの元社員たちが次々と手を染めた「特殊詐欺事件」は実刑判決で幕を閉じた。 しかし、オープン社は沈黙を貫いた。元警察官僚を顧問に招聘する同社の倫理観が問われている。
2021年5月21日、東京地裁815号法廷は、警察関係者とみられる傍聴人で混雑していた。保釈中のオープンハウス社員K(懲戒免職)は母親に付き添われて入廷し、被告人席につく。黒のスーツに白いワイシャツ、青のストライプのネクタイをつけている。
結城真一郎裁判官の指示で証言台に立ったKが、結審に際しての心境を張りのない声で言う。 「本当に被害者の方がたに申し訳ない気持でいっぱいです。どのような判決もきちんと受け入れていきたいです」
少し間があってから判決が言い渡された。 「主文、被告人を懲役1年10月に処す。未決勾留日数中30日をその刑に算入する―。主文は以上です。いいですか、懲役1年10月の実刑です」
Kの様子に動揺はみられない。実刑になることを聞かされていたのかもしれない。 「出し子」としてかかわり、3カ月間で約30万円を得た。オープンハウスの給与からすると小遣い銭程度といえる。軽い気持ちでやったのだろうが、代償は大きい。
「モラル崩壊」の縮図
同年5月24日、私はオープンハウス公式ホームページの「お客様相談室」の質問機能をつかって次の質問を行った。
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増床が多いほど超過死亡数が多い―。にわかには信じられない報告が専門家からなされた。 国費負担削減を進める財務省・厚労省の意向により、「老人切り捨て」は着実に進行している。
2021年から23年までの日本の死亡者数が、国立社会保障・人口問題研究所(社人研)の推計を年間で約10万人も上回っている要因を専門家が統計的に分析したところ、驚愕の結果が判明した。サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)が増加している都道府県ほど超過死亡数の増加が大きいという相関関係が強く示唆されたのだ。
サ高住は入居者の病状が悪化しても病院搬送をせずに施設内で看取る「抱え込み」の傾向があり、厚生労働省が医療費削減を目論む財務省の言いなりになって抱え込みを主導している。医療費抑制が国家的課題であることは論を俟たないとはいえ、入居者に必要な医療を受けさせないことで解決を図るやり方は、〝非人道的〟と言うほかない。
サ高住増加と超過死亡が相関
この問題は、25年10月30日に開催された日本公衆衛生学会総会で奈良県立医科大学の今村知明教授(公衆衛生学)が行った発表(演題=日本の死亡者数推計値に比して近年死亡者数が増加している要因の解析)で明らかになった。
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日系ファンドAPFが支配する老舗ゴム会社で、社長以下4人の取締役が、裁判所に取締役としての地位を 否定される珍事が発生。だが、その原因たるファンド同士の抗争を、子会社社員は白けた目で眺めている。
千葉県柏市に本社を置き、東証スタンダードに上場する「昭和ホールディングス」(昭和HD)。
創業は1886(明治19)年と、業歴150年に迫る同社の旧社名は「昭和ゴム」。戦前からゴム製品の製造を手掛け、もともとは現在の明治HDと同じ旧明治製糖グループに属していた。
だが、2000年にグループを離脱した後は、経営権がいくつかのファンドの手から手へと渡ったのち、08年6月に第三者割当増資を実施し、これを引き受けた「アジア・パートナーシップ・ファンド(APF)」グループの実質的な傘下となった。
旧昭和ゴムは09年6月には昭和HDに社名を変更して、持ち株会社となった上で、主業であるゴム製造は同年10月、新たに設立した事業子会社「昭和ゴム」に継承された。
配管やタンクなど、大型工業機器の接液面にゴムを接着し、機器の腐食を防ぐ「ゴムライニング」の技術を持つ企業は国内には数社しかなく、特に東日本では、もはや昭和ゴムしか残っていないとも言われる。
だが今秋、その老舗企業に関する「珍事」が一部の耳目を集めた。
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相変わらずの海外事業の不振により、2025年12月期の連結決算で3期連続となる最終赤字を出す見通しとなった電通。 その同社の海外支社長が、国際的な経済制裁を受ける国同士の「仲介ビジネス」に手を染めていた疑惑が浮上した。
政府が副業解禁の推進に舵を切り、経済産業省によれば上場企業の約7割がなんらかの副業を認めている昨今。海外拠点を多数抱え、米国企業とも連携する大手広告代理店・電通も、副業を許可制としている。
ただ、同社の海外駐在員が、国際社会の制裁対象国を舞台に、無許可で「仲介ビジネス」を進めていた、となると話は複雑だ。
制裁国同士を仲介する「電通マン」
「電通の元ミャンマー支店長(マネージングダイレクター)で、現在は電通フィリピンのエグゼクティブダイレクター(支社長)を務めているIは、イランから液化石油ガス(LPG)をミャンマーへ輸入しようとしていました」 こう証言するのはIの知人であるA氏だ。
イランは、中東における地政学的緊張の中心国であり、イスラエルや米国と長年対立し、経済制裁国ともなっている。
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こが・まこと―1940(昭和15)年生まれ。福岡県山門郡瀬高町(現:みやま市)出身。議員秘書を経て、80年に衆議院旧福岡3区から初当選。96年に第2次橋本内閣の運輸大臣で初入閣。98年に国会対策委員長、2000年には幹事長に。「加藤の乱」以降分裂していた谷垣・古賀両派が合流した06年には、宏池会の会長(のち名誉会長)に就任する。12年、政界引退。02年から引退まで日本遺族会の会長も務めた。
「改革」から起こった自民党の危機
佐高:今日は古賀さんに、今後の自民党はどうなってしまうのか、ご意見を聞きに来ました。
古賀:いや、今日は私も佐高さんに話をうかがって、勉強したいと思っていたんですよ(笑)。
佐高:参議院で過半数を割ったうえに、先の衆議院選挙で過半数を割り、公明党が連立を離脱した。代わりに日本維新の会が連立に加わったけれど、自民党の危機的な状況には変わりないと思います。
古賀:秘書時代から数えて50年ほどこの世界に携わってきた私から見ても、これまで自民党の危機は何度もありました。
ひとつは三木武夫内閣時代に表面化したロッキード事件で起きた「三木おろし」。三木先生は結局衆議院解散をできずに、政権が移っていきました。
あとは宮澤喜一内閣が政治改革で潰れたとき。また、麻生太郎内閣が議席を減らして潰れていった。こうして見ると、自民党には16〜7年に一度、曲がり角というものがやってくるんです。
佐高:麻生内閣の崩壊を呼んだのは、小泉純一郎内閣のいわゆる「聖域なき構造改革」からの影響も大きかったんじゃないですか。
古賀:ええ。小泉内閣の構造改革にしても、宮澤内閣の政治改革にしても、「改革」という名前で何かが変わったところで、すべてがいい方向に向かっていない。間違いだったと言っていいと思います。
佐高:「改革」というのは口触りのいい便利な言葉で、何を守って何を残すのか、という芯の部分があいまいなまま、「新しい」というイメージだけで使われてしまっている。それが混乱を呼ぶんですよ。「改革」から起こった大きな混乱といえば、中選挙区制を廃止したこと。私はこれに大反対の立場なんですが、中選挙区制に戻すということは難しいんですかね。
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「休むと迷惑」という呪縛
学校は休み方を教えない
平凡社新書/¥1100+税
ほさか・とおる―千葉大学名誉教授。同大学教育学部グランドフェロー。1956年東京都出身。東京大学大学院教育学研究科博士課程単位取得中退。東京大学教育学部助手(学生相談所専任相談員)、千葉大学教授などを経て現職。おもな著書に『いま思春期を問い直す』、『学校と日本社会と「休むこと」』(いずれも東京大学出版会)など多数。
―仕事を「休むこと」と学校を「休むこと」が地続きになっている点に注目されています。
私は教育心理学者ですが、不登校の児童生徒、その保護者と接する機会が多く、かつては、狭い意味での専門領域として「教育相談」と答えていました。私自身、生来虚弱で小中学校時代はよく学校を休みました。高校生になると知恵も付けて〝合法的〟に授業を休んだ経験もありました。こうした自分の体験から「休むこと」にこだわり続けて、教育現場の「休み=欠席」を研究対象として捉えるようになりました。
一方で、働き方改革やコロナ禍中での行動様式の変化が、休むことについてどう影響していくのか関心を寄せていました。
ところが、実際には、ほとんど変わらなかった。リモートワークなど、一部ではフレキシブルな発想の転換がありましたが、「働き方改革」が叫ばれて10年、その途中で未知のウイルスが蔓延しても、社会全体が相変わらず「休むこと」に消極的であることに驚いています。
こうした学校を含めた社会全体の「休むこと」に対する研究調査をまとめた『学校と日本社会と「休むこと」』(東京大学出版会)を2024年4月に上梓しました。「休まないこと」を美徳とする価値観だけが先行して、教育現場で児童生徒に対して「休み方」を教えていないことが、「仕事は休んではいけない」、「休むと迷惑」という価値観や考え方を労働現場に根付かせたのではないか、という仮説を提示しました。
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『犯罪被害者代理人』
(集英社新書)/¥1,000+税
かみたに・さくら―弁護士。保護司。福岡県出身。青山学院大学法学部卒業後、毎日新聞記者を経て2007年弁護士登録。第一東京弁護士会所属。犯罪被害者支援弁護士フォーラム事務次長。関東交通犯罪遺族の会(あいの会)顧問。こども性暴力防止法準備検討会構成委員。
犯罪被害者に代わって、司法手続きやマスコミ対応に尽力する弁護士の 視座から司法、メディア、社会の課題を考える―。
―犯罪被害者をとりまく現実はどのようなものでしょうか。
犯罪に巻き込まれるというのは、災害などと同様に予期できないものです。ある日突然、一方的に被害者になってしまうのです。また、自然災害と違って、被害者になること自体を予め想定しながら日常生活を送っているひとは、ほぼ皆無です。
そもそも、犯罪の種類も非常に多岐に渡ります。交通事故や医療事故、暴行や性被害に遭うかもしれない。詐欺や放火に巻き込まれるかもしれない。犯罪の被害者になるというのは、実際にどんな状況に陥って、日常生活にどんな影響があるのか、ほとんど想像したことがないようなことから始まります。何よりも精神的に非常に辛いものです。
たとえば、自動車に乗った家族が交通事故に遭って、同乗者が亡くなってしまい、自分も大ケガを負ったとします。その人は、死亡事故の遺族であり、ケガを負った被害者本人でもあるわけです。ケガの治療だけでなく、大切な家族を失った心的な負担は筆舌に尽くしがたいもののはずです。
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これまで本誌が何度も詳報してきた「問題だらけ」の学校法人、帝京大学。大学トップの書類送検という非常事態にもかかわらず、相変わらず無回答を貫く姿勢は、非常識を超え狂気すら感じる―。
本誌今月号では帝京大学グループ総帥の冲永佳史理事長が実兄への侮辱の疑いで書類送検された事件を詳報した(詳細は37頁~を参照)。日本有数のマンモス大学のトップが書類送検されたということで、編集部では記事化するにあたり詳細な質問状を帝京大学に送付する必要に迫られた。
代表電話に架電して取材の旨を伝えたところ、帝京大学本部広報課へのメール送付を指示された。送ったのは以下の内容だ。
・冲永理事長の書類送検は異例の事態であると思われるが、法人としてどのように考えるか。
・冲永理事長が事情聴取に応じたのはいつか。
・事情聴取に応じるまで、警察からの要請を何度か断ったと聞いているが、どのような事情からか。
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「海外のオンラインサイトでホテルを予約したり、国際線航空券を買ったりした際、トラブルになるのは仕方ないと思っていましたが、まさか国内、それもJRグループで散々な目に合うとは夢にも思いませんでした」
こう嘆息するのは読者のY氏だ。この夏、関西旅行をした際、JR大阪駅の券売機で次の目的地に向かうため、山陽新幹線の乗車券・特急券の購入した際に決済トラブルに見舞われた。
「自動券売機で新幹線の乗車券等をカード決済で購入しました。しかし、いつまでたっても決済が完了しませんでした」(Y氏)
不審に感じていると、係員から、「エラーが起きたので別の券売機で買いなおしてくれませんか」と告げられた。
すでにカード決済をされた可能性はないかと係員に尋ねると、「データ上、その形跡はありません」とのことだったため、Y氏は指示に従い、再度乗車券等の購入手続きを進めた。 だが、新幹線に乗り込んだ直後に異変は起きた。
「エラーで決済されていなかったはずのチケット代金が決済されていたのです。つまり〝2重決済〟されてしまっていました」(Y氏)
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