結婚・恋愛の相手を探す男女の間で、急速に利用が拡大しているマッチングアプリ。
2024年にこども家庭庁が15〜39歳を対象に実施したアンケート調査では、既婚者の4人に1人にあたる25%がマッチングアプリで結婚相手と出会ったと回答しており、職場や仕事関係(21%)、学校(9・9%)、友人などからの紹介(9%)などを上回り、最多となった。
デジタルマーケティング会社・ナイル(東京都品川区)が運営する恋愛・婚活メディア「出会いコンパス」によると、日本において月間利用者数が最も多いマッチングアプリ(25年6月18日付)は、エウレカ(東京都港区)が運営する「ペアーズ」で、月間利用者は約90万人。2位には、米国テキサス州に本社を置く世界最大のマッチングアプリ運営会社マッチ・グループが運営する「Tinder」が、利用者数約55万人で続く。
総会員数ランキングでも1位とされる最大手ペアーズは12年にサービスを開始し、19年には累計登録数1000万人、コロナ禍の22年に2000万人を突破。
公式サイトを見ると、トップページに「恋の面倒に、さようなら。」など、簡単に異性の相手が見つかるかのようなキャッチフレーズが踊るほか、「ペアーズで交際・結婚した人、累計70万人以上」などの実績アピール、さらに「彼に出会えたのは、まぎれもなくペアーズのおかげです/Aさん 28歳 静岡(女性)」など、体験レポートも多数掲載されている。
マッチングアプリは近年、少子化を背景に地方自治体が運営会社と連携協定を締結し、婚活支援事業として活用するケースも目立っているが、ペアーズはこの分野でも先頭を走る。神奈川県は23年11月、エウレカを含むマッチングアプリ運営会社6社とアプリの適正利用促進に関する連携協定を締結。エウレカの最高経営責任者(CEO)・山本竜馬は、『日経グローカル』(24年7月)のインタビューで、「三重県桑名市や静岡県湖西市など、これまで自治体との連携協定は12例ある」と答えている。
なおエウレカは15年からマッチ・グループ」の傘下に入っており、ペアーズとTinderは経営上は一体。マッチ・グループは、グループ全体での累計アプリダウンロード数が7億5000万件を超えるとされ、24年度の売上は約34億㌦で、時価総額は約79億㌦。ナスダックに上場し、アメリカの代表的な株価指数である「S&P500」を構成する銘柄でもある。
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みなみおか・きはちろう―1945年生まれ、早稲田大学政経学部卒。69年、アール・エフ・ラジオ日本に入社、報道部長、取締役論説室長を歴任し95年退社。慶應義塾大学新聞研究所兼任講師、同法学部講師などを務めた後、97年『月刊日本』を創刊し、現在まで発行人。
佐高:南丘さんとは長い付き合いだけど、『ZAITEN』の読者には馴染みがない人もいるかもしれないから、まず簡単に紹介させてください。私と同じ1945年生まれのジャーナリスト。アール・エフ・ラジオ日本の記者、報道部長・取締役論説室長を歴任した後の1997年に論壇誌『月刊日本』を創刊して、もうすぐ30年。数少ない、私が尊敬する右派言論人の一人です。
南丘:私のことなんてどうだっていいよ。それよりも最近、頭にきたことがありましてね。『WiLL』の7月号に、山上信吾という前オーストラリア大使が寄稿していて、日米の両首脳、つまり総理大臣と米国大統領による靖国神社への共同参拝を実現させるべきだと訴えていたんです。僕はその記事自体を読んだわけじゃないけど、産経新聞が「産経抄」で「素晴らしい考えだ」と紹介していたのを読んで知った。
佐高:そうなんだ。産経もサボらず読んでおく必要があるな。
南丘:要するに、日本の首相とアメリカの大統領が揃って靖国神社に参拝すれば、日米同盟はさらに強固なものになり、米中対決の中で、日米が紐帯を結んで中国に対峙する覚悟があることを世界に向けてわかりやすく示せる。それが何よりの抑止力となるというわけです。 で、その産経抄を書いている産経の記者自身も、実は安倍晋三の生前に同じ提案を2回もしたらしい。安倍は「なかなかいいアイディアだけど、実現はなかなか難しい」と返したらしいんですけどね。
佐高:「いいアイディアだ」とは安倍も言ったんだ?
南丘:だから、こいつら一体何考えているんだ、アホじゃないか。と思わざるを得ないわけだけど、こんな間抜けな発想ができてしまうのがいかにも長州だよなあ、と思ってね。僕の父方の伯父2人も戦死して祀られているらしいけど、僕はあれを戦没者のための慰霊施設だとは認めていない。長州が作った、単なる長州のための政治的な道具としか考えていません。
そもそも、あの神社に大村益次郎の銅像が建っていて、(戊辰戦争で賊軍とされた)彰義隊が立てこもった上野の山を指さしているのも気に入らない。だから僕は、靖国神社なんて成り立ちからしておかしいと思っているんです。
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中国北西部にある新疆ウイグル自治区(東トルキスタン)で、中国政府がウイグル人に対し、強制労働などの人権侵害を行っているとされる問題。中国政府は一貫して関与を否定しているが、2021年から多くの外国企業が撤退し、22年には米国でウイグルからの産品輸入を原則禁止する「ウイグル強制労働防止法」が施行されるなど、波紋は大きく広がった。
ウイグル人が「綿摘み」などの強制労働に従事させられているとされる疑惑では、カジュアル衣料品店「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングが新疆綿の使用を疑われ、世界中から激しい反発を受けたことは記憶に新しいが、ここにきてさらに新たな動きが出ている。欧米各国の有力企業が続々とウイグルから撤退する中、日本企業は相変わらずウイグル強制労働との深い関与が指摘され、人権侵害を横目にビジネスを展開し続けている疑いが再燃。経営層の「ビジネスと人権」や「人権デューディリジェンス(注意義務)」に関する問題意識の希薄さが浮き彫りになっているのだ。特に今回、ウイグル関係者や人権団体などから疑問視されているのが日立製作所とソニーの2社だ。
現地事業所を開設か
この問題に取り組んでいるNPO法人日本ウイグル協会と国際人権NGOヒューマンライツ・ナウは、今年5月までに、日系企業など計41社を対象に、ウイグル強制労働問題との関係性について新たな調査を実施。日系企業30社を含む計34社がウイグル強制労働問題へ何らかの形で関与していることが確認された。これは調査対象の83%にあたり、日本ウイグル協会などは「非常に高い割合で日本の市場とサプライチェーンが深刻な人権弾圧に加担していることを示唆するもので、対策が急務だ」と危機感を強めている。
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7月で発足から四半世紀を迎えた金融庁。ここ数年、毎年のようにトップ昇格が取り沙汰されてきた伊藤豊(1989年旧大蔵省、前監督局長)が、満を持して長官に就いた。庁内もさぞ盛り上がっていると思いきや、就任から1カ月近く経っても伊藤は表舞台にあまり出て来ず、官僚の間には沈滞ムードさえ漂う。背景には、金融界で噴出する不祥事に後手の対応を続けてきた失態や伊藤個人が抱える怪しい人物からの接待スキャンダル疑惑があるようだ。このままでは「本命長官」も形無しだ。
伊藤は財務省中枢のエリートコースとされる官房秘書課長を4年務め、2019年に本人の希望で金融庁審議官に転身した。財務省秘書課長時代には森友学園への国有地売却を巡る文書改竄問題の幕引きにも奔走。この「功績」を高く評価した財務省は、金融庁に「エース官僚を手放すのだから、将来、必ず長官にするように」と異例の申し入れを行ったとされる。
にもかかわらず、伊藤は22年に事実上ナンバー2の監督局長に就いたものの3年間もそのポジションに留め置かれた。昨夏の人事では金融行政の非主流の「制度屋」で下馬評に全く上がっていなかった「別のイトウ」こと井藤英樹(88年同)に長官ポストを奪われ、サプライズを呼んだ。東大入学まで二浪し留年もした伊藤は同期入省官僚に比べて歳をくっており、ここ数年は局長の役職定年(60歳)の期限延長を重ねながら、長官に指名される日を待つ臥薪嘗胆を余儀なくされてきた。
「オーパス伊藤」
「東大野球部主将兼捕手というスポーツマンらしい爽やかさ」「永田町や産業界の人脈も豊富」。庁内や霞が関で評判が高かった伊藤の長官就任が長らくお預けにされてきたのは、22年10月に『週刊文春』で報じられた怪しげな人物からの供応接待疑惑が尾を引いてきたからだ。
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ゼネコン業界ランキングに異変が生じている。準大手の五洋建設が急伸。かつて10〜15位が指定席だったが、2025年3月期売上高は前期比18%増の7275億円で8位に浮上した。土木に強く国内は災害復旧、海外は港湾インフラなどの受注が好調だが、他方「マリコン」(海洋土木工事会社)と呼ばれて業界内で区別され、「向こう傷は問わない荒っぽい社風」(大手ゼネコン幹部)と陰口を叩かれてきた。業容は拡大中だが、案の定、同社が絡むトラブル・不祥事が目立ってきている。
「自民党をぶっ壊す」と公共工事削減を宣言した小泉純一郎政権から「コンクリートから人へ」の民主党政権までの〝ゼネコン冬の時代〟。そのピークだった10年3月期には五洋の連結売上高は3248億円で12位だった。
当時から「スーパーゼネコン」と呼ばれる大手5社(鹿島建設、清水建設、大成建設、大林組、竹中工務店)は売上高(竹中は09年12月期の数字)が1兆円を超える別格であり、それ以下の準大手では戸田建設や西松建設、三井住友建設などが上位10社に食い込んでいた。だが、今では五洋が戸田、西松、三井住友を抜き去り、大手5社との間に長谷工コーポレーションとインフロニア・ホールディングス(21年10月に前田建設工業、前田道路などの共同持株会社として設立)の2社しかいない。
ただ、売上高や受注が好調な割に投資家の評価は芳しくない。足元の株価は940・5円(7月22日終値)と2年前の高値(952・4円=23年9月)にようやく追いついた程度。株式時価総額はわずか2670億円だ。懸念材料になっているのが海外工事の損失懸念や国内で相次いでいるトラブル・不祥事である。
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「母親は100歳を超えるが元気だ。僕もやれるところまで勝負する」。ネット金融最大手、SBIホールディングス(HD)会長兼社長の北尾吉孝(74歳)は、マスコミから後継者問題を問われると、決まってこう嘯いている。
創業者として株式上場に伴う多額のキャピタルゲインを手にしている上、年間報酬は約3億円。都内一等地に複数のマンションを所有し、熱海や軽井沢にも別荘地を保有する億万長者だ。
それだけに、後期高齢者(75歳以上)の仲間入りをする来年には経営の一線を退き、悠々自適の生活を送ってもいいはずだ。にもかかわらず、経営権を決して手放さず、後進に道を譲ろうとしないのは、連結売上高が1兆円を大きく超える金融グループを支配する権力の心地よさに抗いがたい故か。社内では「最低でもSBI創業30周年となる2029年度まではトップを降りる気はさらさらない」と囁かれている。
社内に漂う不安感
問題は「勝負には絶対勝つ」と豪語してきた北尾の経営判断に衰えの兆しが見え始めていることだろう。フジテレビを傘下に持つフジ・メディアHDの経営支配を巡る妄想や、パートナーの台湾企業に逃げられ頓挫した車載向け半導体事業への進出の失敗だけにとどまらない。北尾が「大成功」と喧伝するSBIHDとNTTとの資本業務提携(今年5月発表)についても、かつては考えられなかったようなビジネス戦略面での詰めの甘さが指摘され、「どこまでグループの成長力強化につながるのか」(元幹部)と疑問視されているのが実情だ。
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「だから言わんこっちゃない。大将の暴走を止められず、大恥をかかせた上に、企業イメージまで悪化させた役員たちの責任を問いたい気分だ」 会長兼社長の北尾吉孝(74歳)を戴くインターネット金融最大手、SBIホールディングス(HD)社内では今、社員たちの間で、こんなやり場のない怒りが広がっている。
フジテレビの親会社であるフジ・メディアHD(FMH)が6月25日に開いた株主総会で、大株主の米アクティビストファンド、ダルトン・インベストメンツが提案した北尾を含む取締役選任の株主提案が圧倒的多数で否決されたからだ。
大将こと北尾は、ダルトンからの取締役候補就任要請を受諾したことを受けて4月17日に記者会見を開催。タレントの中居正広による元女性アナウンサーへの性暴力問題をきっかけに経営危機に陥ったFMHについて、自らの手で「企業文化・経営・風土を融和させる」と強調。「FMH側が敵対的な態度を取るなら、私も徹底的に勝負する」などと啖呵を切った。 しかし、社内では当初から「ファンドのオモチャにされるだけではないか」(中堅幹部)と危惧する声が出ていた。そうした懸念が的中し、ダルトンが提案した北尾取締役案に対する株主の賛成率は3割にも届かず、大惨敗という結果に終わった。
甘言に乗せられ
40年近くにわたった前取締役相談役の日枝久(87歳)による歪な経営支配が女性の人権を蔑ろにするような悪しきカルチャーを生んだFMH。新社長に抜擢された清水賢治(64歳)が経営の若返りで再生をアピールする中、「後期高齢者(75歳)一歩手前のロートル人材」(フジテレビ幹部)である北尾が取締役に入る余地はそもそも乏しかった。にもかかわらず、北尾は「FMH代表取締役会長に就いて、堕ちた名門民放を復活させたい」などとする妄想に駆られて、ダルトンの誘いに乗った。
新社長の清水について「彼のことは評価している。上手くやれる」などとしきりに秋波を送っていたのは、ダルトンと敵対するFMH側も一代でネット金融帝国を築いたSBIHD会長兼社長の自分の事は蔑ろにはしないはずなどと、勝手に思い込んでいたからだろう。あにはからんや、清水含むFMH経営陣は4月末、経営改革を名目に取締役の定年制(常勤取締役65歳、代表取締役70歳)を導入し、北尾の経営参画にきっぱりとノーを突きつけた。
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近年のテレビ局で不祥事が相次いだことで、各局が総務省に支払う「電波利用料」が再び注目されている。総務省によれば、携帯電話のキャリア大手が2024年度に支払った電波利用料は、
トップのNTTドコモが約176億円で、以下、KDDIが約145億円、ソフトバンク約129億円、UQコミュニケーションズが約81億円、ワイヤレス・シティ・プランニングが約48億円、楽天モバイルが約33億円と続く。
対して、地上波テレビ局が同年度に払った電波利用料はNHKが約26億円で、日本テレビ、TBS、フジテレビ、テレビ朝日、テレビ東京の在京民放5社はいずれも6~7億円台。地方局は大阪と名古屋の準キー局が1億1000万~1億3000万円台なのを除けば、1000万円に満たない局も珍しくない。携帯電話会社と比べ、不当に低い額しか払っていないのではないか。
だが、放送行政に詳しい立教大学社会学部の砂川浩慶教授は、携帯キャリアと放送局が払う利用料のみに着目した議論は必ずしも公平でないという。 「ドコモやKDDIなど携帯キャリア各社の年間売上は5兆~6兆円、年間の設備投資額も数千億円規模であるのに対し、放送は年間売上が数千億円で、設備投資額も数百億円。そもそもの事業規模が違いすぎるため、単純比較は不可能です」
総務省では、警察や消防、航空、鉄道、医療など社会インフラを支える無線通信に障害を引き起こすほか、テレビや携帯電話の電波送受信にも支障をきたす可能性がある不法電波の監視と取り締まりに年間100億円近い予算をかけて行っている。電波利用料は、この不法電波対策事業の原資でもある。砂川教授によれば、通信事業者はこの恩恵を、放送事業者以上に受けている面がある。 「放送用の電波を妨害ないしジャックするには相当の電力と大がかりな設備が必要になりますが、通信用の電波を妨害するのは比較的簡単で、一般の人が想像する以上に飛び交っています。総務省はこうした不法電波を、各地の総合通信局で監視しているほか、測定機器を積んだ車両を走らせることで取り締まっています。そうした、電波利用料の〝用途〟に目を向けず、単に金額の差だけ見ても意味はありません」(砂川教授)
それでもテレビ局各社に世間から厳しい目が向けられてしまうのは、彼らが払う電波利用料には、「国民全体に情報提供を行う公共性の高い役割」があるとの理由で、出力や周波数帯に応じた基本額に「0・1」という係数(公共性係数)を乗じて算出されているからだ。これにより、放送局が払う電波利用料の負担は、相対的に軽減されているが、現在の放送局が、この「公共性係数」を適用されるに相応しい存在か否かは、当然ながら議論の対象になる。実際、テレビ局の腐敗がここまで問題視されるようになったのは、電波利用料の軽減で甘やかされてきたことも理由の一つだからだ。
桜美林大学芸術文化学群の田淵俊彦教授は、現在のテレビ局において、放送番組が「コンテンツ」化していることを公共性との関連から問題視している。 「少し前までのテレビ局は、ネットフリックスやAmazonプライムに代表される配信サービスを〝競争相手〟とみなしていましたが、太刀打ち不可能と悟ると共存共栄を図るようになり、自分たちが制作した番組を配信会社にコンテンツとして売るようになりました。しかし、販売用コンテンツは数が多いほど儲けることができますから、必然的に粗製乱造傾向が強まりますし、配信向きでない番組についても、そちらはそちらでスポンサーを獲得しようと、視聴率至上主義に拍車がかかっています。
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タレント(中居正広)による社員への性加害問題でスポンサーが離れ、経営が悪化したフジ・メディア・ホールディングス(FMH)の株主総会が6月25日、都内で開かれた。取締役選任案など会社側提案がすべて承認され、投資ファンドなどアクティビストとの委任状争奪戦をFMHが制した。ただ、総会の運営進行ではフジの変わらぬ緩い企業体質が露呈し、企業再生の遠さを示した。
中居正広の性加害を社長ら経営首脳が矮小化し、企業統治不全を問われたFMH子会社フジテレビジョン。最初の会見を記者クラブ加盟社に限定して更なる批判を浴び、1月27日に10時間超の2度目の会見を開いたものの問題は収束せず、スポンサーが大量に離反。社長(当時)の港浩一ら経営陣の大半が辞任に追い込まれた。さらに取締役全員の入れ替えを求める米ダルトン・インベストメンツ(ダルトン)のほか、旧村上ファンド系らのFMH株の大量保有が判明。20年前のライブドアのニッポン放送買収事件に続き、日本を代表するメディアグループを巡る委任状争奪戦の再来を予感させた。
筆者は20年前のニッポン放送買収事件を毎日新聞記者として、フジの会長(当時)日枝久やライブドア社長(同)の堀江貴文、村上ファンド代表(同)の村上世彰を取材した。今年1月の10時間超会見も企業統治取材のため出席。事態が収束せず、フジの問題意識の低さを実感したこともあり、FMH株を購入し、総会出席を決めた。総会は東京都江東区にある収容人員1万5000人の有明アリーナで開かれた。FMHが出席株主の増加を見込み、前年の港区お台場のフジ本社から変更した。交通の便はよくないが、大人数に備えたためでやむを得ない。会場は1階アリーナ席から2~4階席まで用意されていたが、出席した株主は3364人だった。
「会場撮影」に株主が不満
当日は朝から雨で株主は傘を差しながら会場に向かう。ここで鞄の中身を見せ、手持ちの金属探知機で身体検査を受ける。同じことはフジ本社の記者会見でも行われた。刃物などの持ち込みを防ぐ意図だろうが、せいぜい数百人の記者と数千人の株主では手間が違う。案の定、会場入りが遅れて席を探す株主が相次いだ。
そもそもこの程度の検査体制では不十分だ。例えば、日本銀行は入り口にX線の検査装置があり、鞄ごと検査を受ける。入行者はゲート式の金属探知機を通過した後、さらに手持ちの探知機で検査を受ける。フジの検査は〝やってる感〟を経営陣や会社幹部に醸し出すものに過ぎない。
この〝やってる感〟は一連の問題発覚以降のフジの対応に共通する。日枝の長期独裁はその一例だ。日枝独裁が企業統治を損なったのではないかと内外から問われたフジは、日枝本人への批判はほとんど行わず、取締役の若返りや在任期間に制限を加えた人事刷新でお茶を濁した。批判に正面から答えず、この場合は主にスポンサー向けに〝やってる感〟を示した。
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日テレ『鉄腕DASH』死守の闇とスポンサーの対応
日本テレビ(日テレ)が元TOKIOメンバーの国分太一について、コンプライアンス違反を理由にレギュラー出演していた『ザ!鉄腕!DASH‼(鉄腕DASH)』からの降板を発表したのは6月20日だった。同日、国分が副社長を務める株式会社TOKIOも、国分の活動を無期限で全て休止すると報告。同月25日には、デビュー以来31年活動を続けてきたTOKIOの解散も発表された。国分の活動休止の影響は、国分がレギュラー出演していた他局の番組や、ジャパネットたかたをはじめとする出演していたCMの差し止めに広がるなど、放送業界に混乱をもたらしている。
ところが、国分のコンプラ違反を発表した日テレは、問題となった行為の内容を明らかにしていない。にもかかわらず、『鉄腕DASH』を継続する方針を示した。 日テレ社長の福田博之が6月20日の会見で述べたことは、ほぼ次の点に集約される。 〈過去に複数のコンプライアンス上、問題ある行為というのが認められました。プライバシー保護の観点から、その行為につきましては、お話することができません〉
質疑応答では行為の内容を何度も問われたが、福田は「プライバシー保護の観点」を理由に回答を拒否し続け、事案の内容も、発生した時期についても答えなかった。質疑で福田が明かしたのは、自身が事案を覚知したのは5月27日だったことと、第三者の弁護士が調査した上で国分に番組降板を伝えたのが会見2日前の6月18日だったこと。そして、明確な犯罪行為ではないということだった。国分の行為が『鉄腕DASH』の番組と関係があるかどうかについては「何とも申し上げることはできません」と述べるに留めた。
国分自身はコンプラ違反の
詳細を理解しているのか
降板発表から1カ月あまりが経った本稿執筆時点でも、国分のコンプラ違反の内容は明らかになっていない。週刊誌などではハラスメント疑惑などの報道がなされているものの、真相は不明のままだ。
日テレ以外に行為の内容を知っていると考えられるのは、株式会社TOKIOと旧ジャニーズ事務所のSTARTO ENTERTAINMENT(STARTO社)だろう。TOKIOはSTARTO社の関連会社という位置付けだ。ところが、ある関係者は、この2社も詳細が分かっていないのでは、と語る。
「STARTO社もTOKIOの他のメンバーも、一体どんな行為があったのか分かっているのでしょうか。6月27日にTOKIOメンバーの松岡昌宏が報道陣の前に出てきて解散についてコメントした際、詳細については松岡自身も、リーダーの城島茂も把握していないと言いました。日テレが言うように、明確な犯罪行為ではないなら、なぜ1人の人間が消されなければならないのか、理由が全くわかりません」
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