ZAITEN2022年04月

CORONA 死亡事故の報告も「その他のお知らせ」に

カテゴリ:クレーム・広報

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重大製品事故報告にあったコロナ製ストーブ (小売店のHPより)

〈正月、実家に帰省すると、一人暮らしの高齢の母親が今も石油ストーブを使っていて。「コロナ」という会社の製品だったので、事故がないのか、会社のホームページを調べてみたんです。最初はそういった情報はなくて安心したのですが、HPをよく見ると、片隅に《その他のお知らせ》というのがあって、その中に事故情報が載っているではありませんか。しかも死亡事故まで! こんなに分かりづらく表示するなんて、コロナは事故を隠そうとしているのでしょうか!?〉(読者のメールより)


 このご時世、何やら不気味な社名に聞こえるが、「株式会社コロナ」は新潟・三条が本社の石油ストーブ大手。他にもダイニチ工業やトヨトミといった企業があり、この3社が石油ストーブの国内シェアの大半を占める。  一方、火災事故の危険性がある石油ストーブについては、消費生活用製品安全法(消安法)で、業者は国への「重大製品事故」情報の報告が義務付けられている。その上、同法では一般消費者に対しても、〈適切〉に情報提供に努めることが定められているのだ。

 コロナがHP上で公開する事故情報も消安法に沿った開示というわけだが、競合3社のHPを比較したところ、各社とも、事故発生日や製品名、機種名・型式、事故内容などを無味乾燥に列記した事故の一覧を掲載。そして、大半の事故については「原因を調査中」となっており、製品と事故の因果関係は不明のままという体裁だ。  とはいえ、ダイニチは《重大製品事故》の欄に黄色いザブトンが敷かれ、トヨトミも事故情報は《重要なお知らせ》の中に設置されており、一応は目を引く構造。

 しかしコロナの場合、読者の指摘の通り、重大製品事故の報告はフロント画面下部の《その他のお知らせ》コーナーの中にまとめられており、一段奥まった展開。事情に通じた者でなければ、即座に見つけることは出来ないだろう。

 役所として事故情報を公開している消費者庁に問い合わせたところ、「公表の仕方については一義的には事業者の問題」としながらも、HP上での情報開示の場所が不明瞭な企業があることは「認識している」(安全課)とした。もっとも、石油関連製品の所管は経済産業省で、同省が業界団体や業者にどう指導するかにかかっているというから、頼りないのも確か。

 いずれにせよ、コロナのHPの在り様は、およそ消安法が定める「適切な情報提供」とは言えない。なお、原因は不明であるものの、コロナは5~6月を除く昨年の全ての月で同社製品が関連する火災事故の報告がある。一方、ダイニチ、トヨトミは両社合わせて年3件ほどで収まっていた。

 それでは、当のコロナは何と答えるのか。2月8日、広報室に質問状を送ったが、返信なし。確認電話を入れると、「内容を確認したら返信する」。それでも期限内の返信はなく、改めて「消費者の命に関わる問題であり、数カ月前にも死亡事故に関連する報告も出しているにもかかわらず、事実確認すら答えられないのか」と問い質しても、「この件に関しては未回答ということで......」。

 ところが―。本稿を書き上げた2月17日にコロナのHPを再度確認すると、下部のままではあるが、フロント画面に《製品事故情報》のコーナーを新設、昇格させていたのである。何とも姑息だが、改善は改善。でも、最初から素直に答えればいいのに......。


......続きはZAITEN2022年04月号で。

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