ZAITEN2022年05月号
理不尽な解任劇の主役は文部科学省
北海道大学元総長「解任の謎」と「1日復学打診」の怪
カテゴリ:事件・社会
全国の国立大学で、初めてトップが解任されたのが北海道大学(北大)だ。当時総長だった名和豊春氏に関する公益通報があったとして、総長選考会議が調査。2019年7月に30件もの非違行為を認定して解任を決議し、萩生田光一文部科学大臣(当時)に申し出た。ほぼ1年後の20年6月、名和氏は総長を解任された。国は30の非違行為のうち、28の行為を認定した。
・日常的なハラスメント18件
・対外的な信用失墜行為2件
・研究者としての問題行為3件
・その他資質を疑わせる行為5件
だが名和氏は、認定された非違行為は明らかな事実誤認や評価の誤りを含み事実ではないと主張。20年12月に解任の取り消しなどを求める訴えを札幌地方裁判所に起こしている。 客観的に見て、文科大臣の認定には首を傾げる点がある。総長選考会議は、調査でハラスメントの疑いがあると報告したものの、解任を決議する際には、ハラスメントの文言を使わなかった。にもかかわらず、文科大臣は再びハラスメントの言葉を使って非違行為を認定している。しかも、被害者とされるのは、多くが文科省からの出向者などの幹部職員で、総長室や総長車の中での会話を録音したものが情報のベース。そこに「激昂」「罵声」「威圧的」などの文言を加えて事実認定している。名和氏は「文科省にはめられた」と言い切る。 「今回の私の解任劇の主役は文科省です。正確に言えば、文科省から派遣された事務方と、それに同調する一部の理事です。私を追放するために不祥事を作り上げ、私の弁明を聞くこともなく、総長選考会議で解任が決議されました。私には全く覚えがありません」
1日だけの総長復帰を打診?
国と北大を相手取り係争中の名和氏のもとに今年1月、奇妙な連絡が入った。4月から国の外郭団体の理事に就任する元部下から、1日だけの総長復帰を打診されたのだ。 「1日だけ私が総長に復学することをもちかけてきました。復学することで退職金を支払い、私の名誉を回復する形で終わらせようと考えたのではないでしょうか」 この打診に対して、名和氏は「多くの関係者との話し合いが必要」だと答えた。その後、3月に元部下と会ったが、元部下はこの話には触れなかったという。
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