ZAITEN2025年08月号

P&G、花王、ライオンが生み出す新たな社会問題

【特集】「香害」を垂れ流す消費財メーカーの大罪

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 香害とは、合成洗剤や柔軟剤などに含まれる香り成分(化学物質)により様々な健康被害が誘発されること。近年では、この香害を原因として、化学物質によるアレルギー反応や急性・慢性中毒である化学物質過敏症(CS)を発症する人もいる。主な症状として、頭痛、発熱、疲労感、鼻炎、皮膚炎、不眠、うつ状態、記憶困難、集中困難などが挙げられる。抜本的な治療方法はなく、化学物質から離れるしかないのが実情だ。

 日本ではCSは2009年に傷病名として登録されたが、現時点で香害は医学的な疾病としては認知されていない。とはいえ、香害による症状はCSのケースとほぼ同じと言われ、明確な区別があるわけではない。香害も含めてCSとする見方もあり、狭い意味での香り成分に過敏に反応することで人によって様々な症状が出ている状態と言える。

 香害の存在が日本で顕在化したのは、消費者団体の日本消費者連盟が17年に設置した電話相談窓口「香害110番」が始まりとされる。20年には大規模アンケートを実施。「頭痛がひどくて仕事を休んだ」「柔軟剤を使用している家庭が多いので、幼稚園から子どもが帰ってくると、肌荒れやじんましん、痒みなどの症状が出る」「地下鉄の車内の香りが強く、乗れない」などの切実な声が集まった。  

被害を訴える多くの声を受けた形で消費者庁、文部科学省、厚生労働省、経済産業省、環境省の5省庁は連名で啓発ポスターを作成。改訂を経て現在は「知ってください!! その香り 困っている人もいます」などの文面で、公共施設のほか、過密空間の電車内で被害に遭う可能性が高いことから、公共交通機関の駅などでも貼られている。また、多くの地方自治体の議会でも香害対策を促す意見書を採択するなどの動きが活発化している。

 24年1月には、地方議員らで作る「香害をなくす議員の会」、日本消費者連盟に事務局を置く「香害をなくす連絡会」、香害の被害者団体「カナリア・ネットワーク全国」の3団体が、「STOP!マイクロカプセル香害」キャンペーンとして行った署名活動で集まった8889筆の署名を大手洗剤メーカーの花王、ライオン、P&Gの3社と業界団体である日本石鹸洗剤工業会に提出したことで注目された。

......続きはZAITEN8月号で。

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