2021年05月号

石橋秀一CEOは“パワハラ大魔王”改め“首切り大魔王”に

ブリヂストン「大リストラ」と「製造不正」疑惑

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実に69年ぶりの最終赤字を計上したタイヤ世界首位級のブリヂストン。会長の津谷正明らを追放し、名実ともにトップに君臨する石橋秀一は、今や「リストラの鬼」と化す。その一方、製造現場では......。

「津谷追放」の因果応報

 ブリヂストンの「パワーハラスメント大魔王」としてその名を轟かすグローバルCEO(最高経営責任者)、石橋秀一が独裁者としての本領を発揮している。2020年12月期決算が69年ぶりとなる最終赤字に転落すると、工場閉鎖と人員削減による大規模リストラを断行する計画をまとめた。同時に、石橋をトップに引き上げてくれたはずの前CEO津谷正明と、その子飼いでCOO(最高執行責任者)兼社長だった江藤彰洋を3月末で追放。ブリヂストン社員らは、パワハラ大魔王改め「首切り大魔王」の影に怯えている。

「歴史は繰り返すというが、津谷氏にとっては寝耳に水だっただろう」―。津谷の取締役退任を伝えるブリヂストンの役員人事を見た、ある自動車部品メーカー首脳はこう漏らした。

 石橋をトップに起用した津谷は9年前の12年にCEOに就任すると、前任者で会長に就いた荒川詔四、ナンバー3としてCOOに昇格した西海和久とともに「3頭体制で経営していく」とトロイカ体制を宣言。しかし、翌13年には荒川を「病気療養」を理由に会長ポストを剥奪して相談役に追いやった。当時、荒川は「業界の会合などで健康そうに見えた」といい、荒川会長の下で、自分がナンバー2に見られるのが許せなかった津谷が荒川を排除したとの見方は強い。荒川の〝過去の行状〟を論い、多額の退職金と引き換えに退任を迫ったのは公然の秘密だ。そして津谷は今回、その報いを受けることになった。

 津谷は19年、ナンバー2の西海を退任させるとともに、後継者として江藤を社長に昇格させて、自らはCEOとして続投、院政を敷く構えだった。この時、副社長から副会長という〝上がり〟のポストに追いやられた石橋は怒涛の巻き返しを図る。石橋はもともと津谷に近かったが、業績低迷を巡り江藤の責任を追及する一方、津谷に対しては、五輪最高位のワールドワイドスポンサーを獲得した功績を強く喧伝。結果、石橋は昨年、津谷の後継者としてCEOに就任、社内抗争を勝ち抜いた。

 名実ともにトップに上り詰めた石橋が真っ先に実行したのが粛清の嵐だ。社長執行役、COOに就いて1年半しか経過していない江藤を強引に退任させて、業績不振の元凶となっている欧州・ロシア・中近東・インド・アフリカ地域の担当に格下げ。そして江藤の後任のグローバルCOOには、副会長だった東正浩を就けた。石橋は「トップ争いに敗れた役員が就任するというイメージの強い副会長ポストからCEOに這い上がった印象を持たれていることを気にしていた」(関係者)。それだけに、同じく副会長だった東をラインに戻し、「副会長ポストは経営トップの〝登竜門〟と印象付けようとしている」(同)ようだ。

......続きは「ZAITEN」2021年5月号で。

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