ZAITEN2025年07月号
巨大法律事務所と癒着し、「公平らしさ」を喪う司法
【著者インタビュー】『ルポ 司法崩壊』後藤秀典
カテゴリ:インタビュー
ルポ 司法崩壊
地平社/¥1,800+税
ごとう・ひでのり―ジャーナリスト。1964年生まれ。NHK「消えた窯元 10年の軌跡」「分断の果てに"原発事故避難者"は問いかける」(貧困ジャーナリズム賞)などを制作。著書に『東京電力の変節―最高裁・司法エリートとの癒着と原発被災者攻撃』(貧困ジャーナリズム大賞、JCJ賞受賞、旬報社)。
―前作『東京電力の変節』は、第2章で記した内容、つまり司法と電力会社の癒着の実態を描いた箇所が特に衝撃的でした。
ありがとうございます。このほど上梓した『ルポ 司法崩壊』は、司法と法律事務所の癒着というテーマに関して、前作で書ききれなかった内容について、さらに取材した成果をまとめたものです。
国と東電を被告とした原発事故避難者訴訟で、最高裁は2022年6月17日に国の賠償責任を否定する判決を出しましたが、この裁判の上告時には、元最高裁判事であり、現在は「西村あさひ法律事務所」の顧問を務める千葉勝美弁護士が東電側の意見書を提出しました。
裁判官に対して大きな影響を及ぼしうる最高裁経験者が、個別の訴訟に意見書を出すのは異例中の異例です。しかも千葉氏は、この判決を下した菅野博之裁判長を最高裁事務総局時代に指導する特別な立場でした。その千葉氏が提出した意見書の効果のほどは不明ながら、事実として最高裁は、「事故当時、津波対策として、防潮堤などの建設とともに『水密化』が想定されていた」とした高裁の事実認定を覆しました。
千葉氏が顧問を務める西村あさひは国内外に800人以上の弁護士を抱える日本最大級の弁護士事務所ですが、共同経営者に名を連ねる新川麻弁護士は経産省の資源エネルギー関連の審議会委員の常連で、21年から東電の社外取締役を務めるなど、東電との関係が非常に深いことで知られています。
―本書には西村あさひに加え、アンダーソン・毛利・友常法律事務所、長島・大野・常松法律事務所、森・濱田松本法律事務所、TMI総合法律事務所のいわゆる「5大法律事務所」が登場します。
現在の彼らは、最高裁とかつてないほどの蜜月状態にあります。
最高裁第一小法廷の宮川美津子判事は、95年から最高裁判事に就任する23年までTMI総合法律事務所のパートナー弁護士(共同経営者)でした。
......続きはZAITEN7月号で。