2022年06月号

【著者インタビュー】

森永康平インタビュー『スタグフレーションの時代』

カテゴリ:インタビュー

森永康平.JPG森永康平氏(編集部撮影)

もりなが・こうへい―金融教育ベンチャーの株式会社マネネCEO、経済アナリスト。証券会社や運用会社にてアナリスト、ストラテジストとしてリサーチ業務に従事。その後はインドネシア、台湾、マレーシアなどアジア各国にて法人や新規事業を立ち上げ、各社のCEOおよび取締役を歴任。現在はAIベンチャー企業のCFOも兼任している。

―本書を上梓した動機を教えてください。
 新型コロナ以降、世界的なインフレーションが進行し、一足遅れて日本にも値上げラッシュの波が押し寄せています。私自身、もともと物価の動向に強く関心を寄せてきたこともあって、この機会に本としてまとめたいと考えました。インフレの要因を簡単に言えば、経済再開に伴う需要の急増に対してコロナ禍における供給制約が存在したことです。加えて、ロシアのウクライナ侵攻の影響でエネルギーや原材料価格が高騰しています。その結果、米国の3月の消費者物価指数は前年同月比プラス8・5%と約40年ぶりの高い伸びを記録するなど、欧米では歴史的なインフレが続いています。


 一方、この30年間でろくに経済成長をしていない日本においては、今後も賃金が上がるとは思えません。すると、本書のタイトルにもなっている「スタグフレーション」という状態に陥ります。不況にもかかわらず物価が上がっていく現象です。金融的観点から考えると、米国の中央銀行にあたるFRBが金利を引き上げる一方で日銀は金融緩和を続けているため、理屈として日米金利差が広がり円安になるのは当たり前です。その上、資源に乏しい日本は輸入に頼らざるを得ないので、円安によるインフレ圧力はさらに強まります。ただし、今起きている円安は、日本のファンダメンタルズ、つまり経済状況の基礎的条件が市場で評価されていないことが根本にあると思います。特にコロナ禍とウクライナ危機では、エネルギーと食糧の自給率の低さが如実に表れたと言えます。

―この状況を脱するための処方箋はあるのでしょうか。
 正直な気持ちでは、日本経済はすでにポイント・オブ・ノーリターン(帰還不可能点)を通り過ぎてしまったと思っています。ただし、まだ助かる見込みがあるのだとすれば、やはり政策を現状の緊縮から積極財政へ転換することが必須でしょう。国内の主たる経済主体は家計、企業、政府の3者ですが、そのうち家計および企業は物価高や不況といった環境下では合理的に消費等の投下を抑えるので、政府が経済をシュリンクさせないためにお金を出すしかありません。ところが、日本の歴代政権がやってきたのは実のところ緊縮財政でした。消費増税も緊縮政策の一環です。結局、日本経済の「失われた30年」は、景気が多少上向きになるたびに消費増税をして人々の消費マインドを冷え込ませる、その繰り返しでした。


 なお、消費税3%時代の90年度の一般会計税収は60・1兆円で、消費税10%時代の2020年度の60・8兆円と大差ないですが、内訳を見ると、法人税を引き下げた分を消費税で補填しています。政治家は消費増税分を社会保障の財源に充てていると言いますが、内訳を見ると半分以上は保険料であり、税財源で不足している部分は国債で賄っています。つまり、消費減税をすると社会保障制度が崩壊するというのは虚偽なのです。

......続きはZAITEN6月号で。

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