ZAITEN2024年04月号

〝ニセJAL〟出身・鳥取氏の社長就任で混乱必至

【特集】「歴史は繰り返すJAL・JAS統合の怨念史」

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もり・いさお
1961年、福岡県生まれ。ノンフィクション作家。岡山大学文学部卒業後、伊勢新聞社、「週刊新潮」編集部などを経て、2003年に独立。著書に『官邸官僚 安倍一強を支えた側近政治の罪』『国商 最後のフィクサー葛西敬之』など。18年には『悪だくみ 「加計学園」の悲願を叶えた総理の欺瞞』で大宅壮一メモリアル日本ノンフィクション大賞受賞。

〝ニセJAL〟出身・鳥取氏の社長就任で混乱必至

―JALの新社長に鳥取三津子氏が就任することをどう見ていますか。
 JAL(日本航空)とJAS(日本エアシステム)が完全に経営統合したのは2004年4月。私がJALの取材を本格的に始めたのは、ちょうどその経営統合前後でした。そこから6年後の10年1月に経営破綻し、経営の主流だった労務人事畑や経営企画畑の人材が一掃され、かつてのような派閥争いはなかなか起きにくくなっているのは確かでしょう。ただ、JAS出身で元CAの女性社長が誕生することで、何かが起きる可能性もあります。

 00年代に入り、JALでは航空トラブルが頻発します。最盛期には9つの労働組合が入り乱れ、同時に社内では様々な派閥が勢力争いを繰り広げた結果、重大インシデントと言われる事故が起きて、結果的にJALが破綻するきっかけになったのはそうした航空トラブルでした。  

 当時、世界の航空業界が再編を繰り返していました。00年代に入る前から欧州や米国で大手の航空会社が経営破綻するなど業界再編が行われていて、エアラインの淘汰の時代に入っていました。その中でJALがJASを合併します。JALは当時、世界最大級のフラッグキャリアの誕生だと言われましたが、実情は航空トラブルを頻繁に引き起こすような会社になってしまい、結局逆回転していくわけです。  

 合併当時、JALとJASは会社として相容れないものがあると言われていて、特にCAからの不満の声が結構強かった。JALでは機長組合と客室乗務員組合が非常に強く、力を持っていました。そこにJASが入ってきて、航空トラブルがたくさん起き始める。トラブルの原因はJASとの合併にあるというような内容の怪文書が出回るなどします。そのような中で特に可哀想だったのは、JASのCAたちで、経営破綻後のリストラでも、JASのCAからリストラをどんどん進めていきました。最終的にはほとんど辞めていると思います。

 JALの新社長になる鳥取三津子氏は、そのような環境下で生き残ってきた人物です。しかも、JAL幹部には珍しい短大卒。元々専務でしたから、その前に赤坂祐二に引き上げられているわけですが、そういう人物がJALのトップになるというのは驚きしかありません。



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