ZAITEN2024年08月号
月刊ゴルフ場批評82
「鹿沼カントリー倶楽部」批評
カテゴリ:月刊ゴルフ場批評
栃木県の老舗コース「鹿沼カントリー倶楽部」といえば、人気ゴルフ漫画『風の大地』の主人公・沖田圭介が、研修生として腕を磨いた舞台。ファンの間では聖地となっているゴルフ場だ。
同作品は原作者のプロゴルファー本人がモデルになっていて、実在の人物も多数登場。支配人、料理人、キャディマスターなども描かれ、沖田の奮闘ぶりはもちろん、ゴルフ場のリアルが垣間見えることから、毎週興味深く読んでいた記憶が甦る。
45ホールもあるマンモスコースだけに、人が多いのは致し方ないが、古びたクラブハウスに一歩足を踏み入れた途端、とてつもない喧噪に巻き込まれた。導線が入り組んでいるため、ロッカーやマスター室を探すのもひと苦労。ラウンジ? の一角には『風の大地』関連の展示コーナーがあるが、壁という壁に掲示物が張られていてなんとも落ち着かない。ロッカーも幅が狭く、大きめのボストンバッグだと収まらない。
雑踏をすり抜けてマスター室前に出ると、そこには何本にも分かれたカートの行列。45ホールだからスタートホールが5カ所。ここから自分のカートに辿り着くのは至難の技だ。コースによってはスタートホールがハウスから離れているため、ちょっと遅れたりしたら置き去りにされてしまう〝カート難民〟も発生するとか。
今さらどうにもならないのだろうが、45ホールのコースとしては、ハウスも含めてもう少し余裕がほしいところだ。 この日は南コースのスタート。見た目の印象はそれほど激しい傾斜もなく、フェアウエーもゆったりとしている。しかし、打ち進んでいくと冷や汗が。大きな斜面を往復するように造られたレイアウトは、左に傾斜したフェアウエーから左傾斜のグリーンを狙い、次のホールでは逆というように、ほとんどフラットなライから打たせてもらえない。
グリーンもコンパクトで、ウワサどおりの高速仕様。上につけたらどうにもならないぞ。
距離もしっかりあり、手ごわいチャンピオンコース。トッププロを目指した沖田青年の修業場所としては申し分ないが、サンデーゴルファーには手に負えないな。
心折れながら、ようやく昼休憩。レストランも45ホールにしては手狭だが、別室に「鹿翔苑」なる焼肉レストランがあり、そちらもチョイスできるとか。
それはともかく、訪れたのが5月ということでレストランの天井に鯉のぼりがヒラヒラ。注文をとりにきたスタッフの胸を見ると、ハガキ大の名札。安手の居酒屋のようで、昼食時も落ちつかないのには困った。
メニューも沖田が食したという「風の大地のステーキサンド」をはじめガッツリ系が中心。品数豊富なうえ、毎週月~水曜は名物のランチバイキングが好評だそうだ。夏にはテラスで「ビアガーデン」も開かれるらしい。
飲食に力を入れている様子が伝わるが、難コースとのギャップが大きすぎ......。落ちついて『風の大地』の舞台を楽しみたかったのだが。
●所在地 栃木県鹿沼市藤江町1545-2 ●TEL. 0289-75-2131 ●開場 1964(昭和39)年10月20日 ●設計者 小寺酉二 ●ヤーデージ 北18ホール、6491ヤード、パー72、南18ホール、6601ヤード、パー72、黄金9ホール、3325ヤード、パー36