ZAITEN2025年09月号
月刊ゴルフ場批評95
「江戸川ラインゴルフ松戸コース」批評
カテゴリ:月刊ゴルフ場批評
今回取り上げる「江戸川ラインゴルフ松戸コース」は、その名の通り、江戸川の河川敷に広がるゴルフ場で、対岸は東京の葛飾区柴又。フーテンの寅さんで有名な映画『男はつらいよ』の聖地だ。
また、12、13番(15、16番も)の間には、こちらも歌謡曲で有名な「矢切の渡し」の渡し舟が、今も運航されている。初めて来たときは、ゴルファーではない一般の方がコースを横切るからビックリしたが、渡し舟の利用者だったのだろう。
晴れた日には東京スカイツリーのみならず、遠く富士山の勇姿も望める。春先は河川敷の土手が菜の花の黄色で染まり、青空とコースのグリーン、さらに菜の花の黄色というシンプルなコントラストが見事で、ここでしか堪能できない目に染みる絶景だ。
アウトとインを隔てているのは、常磐線の鉄橋と国道6号線。山の中のゴルフ場と違って、橋を渡る列車や自動車の音が大きく響く。「街中」でゴルフをしている不思議な非日常感は、河川敷コースならではだろう。
ちなみに1963年の開場時は東京側にあり、67年に松戸側に移転。当時は会員制だったという。今でも東京側の跡地は、「江戸川ラインゴルフ場」のショートコースとして名残を止めているぞ。
クラブハウスや駐車場は17年に改修されて、きれいに整っている。レストランはなく必要最低限の施設だが、特に不自由さは感じない。スタッフの対応もフレンドリーで好感が持てたな。
多くの河川敷コース同様、クラブハウスと駐車場は土手の外にあり、料金を前払いしてバッグをカートに積んだら、土手を超えてコース側に移動する。ここは土手があまり高くないから楽チンだ。
料金は25年4月の改定で平日4950円、土日8500円。なんと時間内周り放題の料金だから、かなりリーズナブル。
その代わり、平日は時間内にできるだけ多くのホールをプレーしたい常連客が多いから、皆せっかちプレーだ。ゆったりプレーを楽しみたい人には向かないな。9ホール2450円の薄暮プレー(イン限定)を経験済みだが、こちらのほうがのんびり楽しめる。
レイアウトは至ってシンプル。ドッグレッグはなく、パー4は300㍎未満のホールもあり、飛ばし屋にはフラストレーションがたまるかもしれない。
隣のホールとの境界が黄色杭だけというホールもあって、どこまでがフェアゾーンなのか分かりにくいのも難点だ。隣のホールのプレーヤーが自分のほうを狙っている気がして恐怖すら感じる。アイアンのみ使用に制限されたホールも2カ所あるが、このレイアウトなら止む無しだろう。
グリーンは特筆モノだ。河川敷には珍しいベント芝のうえ、新しくきたグリーンキーパーの腕前が良いらしく、メンテナンスも上々。コンパクトなグリーンだが、スムーズな転がりが楽しめる。
まずできないだろうが、プレーの途中に渡し舟で柴又に渡り、帝釈天詣でをして再び戻ってプレー。そんなことを思わせる下町情緒溢れる雰囲気だった。
●所在地 千葉県松戸市上矢切1717 ●TEL. 047-362-4101 ●開場 1963(昭和38)年5月 ●設計者 林由郎 ●ヤーデージ 18ホール、4609ヤード、パー68