ZAITEN2024年11月号

不十分な企業価値評価、買い手の優遇……

M&A仲介協会「利益相反」トラブル急増

カテゴリ:事件・社会

 企業のM&A(合併・買収)を仲介するM&A仲介事業者に関わるトラブルが相次いでいる。監督官庁の中小企業庁や、自主規制団体のM&A仲介協会などが相次いで指針や規約の改定を行っているが、実効力は非常に乏しい。免許制度の創設や悪徳業者の社名公表など、抜本的な制度改革が求められる。  

 東京都千代田区の投資会社「ルシアンホールディングス」。M&A仲介会社(仲介会社)からルシアンを紹介され、詐欺被害にあった中小企業は2021年から23年の間にわかっているだけで、全国37社にものぼる。  

 ルシアンは売買成立後も会社の連帯保証人を新経営陣に切り替えず、一方で役員報酬などの名目で会社資金を詐取した上で新経営陣は姿を消す。こうした方法でルシアンはM&Aを利用して詐欺行為を繰り返した。  

 このルシアンに多くの仲介会社が群がり、売却企業を紹介した。仲介会社は基本的にM&Aが成立すれば、その後は関与しないため、仲介会社はルシアンに〝獲物〟を与え続けた。

不利益を被るのは売り手

 M&Aの仲介業務には「仲介」と「アドバイザー」の2つの業態がある。アドバイザーは売り手か買い手のいずれかにアドバイスを行うことで報酬を得る。しかし、仲介はM&Aが成立して初めて、売り手、買い手双方から成功報酬が得られるため、仲介には多くの問題点がある。  

 仲介会社は売り手に対して、簡易的な企業価値評価を行い、おおよその売却価格を決め、買い手探しを行うが、この企業価値評価が不十分としか言いようのないものも多い。

 売り手には経営者の高齢化や後継者不足に悩む、特に地方の中小企業が多い。このため、地銀から信金までが仲介に乗り出し、あるいは関連会社を設立している。また、仲介会社には地銀の退職者も多く入社している。  

 企業売却を行った元経営者は、「元地銀の行員が企業価値評価を行ったようで、内容が非常に曖昧な上、十分な理解が得られるような丁寧な説明もなかった」と振り返る。  このように、十分な企業価値評価が行われていないことも大きな問題であるが、近年頻発しているトラブルは仲介会社の「利益相反問題」だ。

......続きはZAITEN11月号で。

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