2020/10/01

マンショントラブルの根底にある“悪しき慣行”

三菱地所が放置「共用部分」の手抜き工事

カテゴリ:クレーム・広報

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 編集部にはマンション関連のトラブルが多数寄せられる。しかし、言うまでもなく多種多様な属性の人々が集合するマンションという特性上、個別のトラブルがマンション全体、ひいては公共全体の問題につながるか否かは判断しづらい場合が多い。しかし、今回紹介する案件は、マンションの入居者、購入を考える人が知っておくべき業界の闇と言える。

藤和不動産の"遺物"

 関西在住のA氏は2007年に藤和不動産(現・三菱地所レジデンス)を事業主とする新規分譲マンションの一室を約6000万円で現金購入した(08年2月に竣工、同3月に入居)。しかし、分譲当初より共用部分(駐車場、駐輪場、共用廊下など)で明らかに杜撰な施工が多数確認された。

 A氏本人が語る。

「共用部分の検査を業者に依頼したところ、客観的な問題点は多岐にわたりました。エレベーターホールのひび割れ、共用廊下天井の白華現象、駐車場の壁面漏水、共用廊下の雨水吹き込み、水抜き孔の施工不良......。普段は目にすることがない配線や免振装置などでも杜撰な工事が行われていました。私は長年にわたり三菱地所に対し、補修、是正の要求を行ってきましたが、曖昧な対応でズルズルと今日に至っています」

 当初、A氏がマンションを購入した藤和不動産は1957年に藤田組(フジタ)の子会社として設立。08年に会社更生法適用の危機に直面し、三菱地所の連結子会社、そして09年に100%子会社になることで同法適用を回避。11年に吸収され、現在の三菱地所レジデンスが誕生した。

 こうした経緯をA氏がマンションを購入した時期と重ね合わせると、経営状態が悪化していた藤和が目先の利益確保を目的として、杜撰な突貫工事で共用部分を仕上げたマンションを売っていたと考えるのが自然だろう。

 A氏は過去に新築マンション購入を3回行った経験から、内覧会時に事業主に対し、共用部分の杜撰な施工は手直しをして欲しい旨を、きちんと申し立てていたという。しかし......。
「建築基準法には共用部分である駐車場、駐輪場などの仕上げに際しての施工の法的基準がなく、マンション購入の内覧の際、売る側に共用部分を見せる義務はないのです」(A氏)

 当時、A氏は宅建(宅地建物取引士)の免許を取得しており、共用部分の施工について気にかけていたという。しかし購入してみると、その施工があまりにも杜撰で、見事に裏切られた形であった。

建築業界の〝悪しき慣習〟

 1級建築士が語る。

「建築物の新築については建築基準法がベースとなりますが、関係法令がいくつかあり、どの条文も抽象的な表現が多く、いろいろな解釈ができるものが大半です。総じてマンションの建築紛争自体が『売り手』に有利に働くケースが多く、ここで問題になっている『仕上げ』に関しては、主観的な判定に委ねられます。このことから、素人である管理組合が泣き寝入りしているケースが多い」

 施工指針としていくつかの施工基準を国交省や建築学会が制定しているものの、厳守すべき基準ではないため、各々の解釈、施工方法がまかり通っている。事業者はそれをよく分かっているため、強気な対応に出るのだという。

 また、あるマンション調査員は、共用部分の内覧問題は法律の盲点というよりも建築業界の〝悪しき慣習〟だと語る。

「内覧の立ち合い代行業務の際でも、対象は必ず『専用部分』とされています。ある内覧の立ち合いの時に、共用廊下側の不具合を指摘した際、事業主から『そこはちょっと』という感じで是正を断られました。新築の内覧時には管理組合や理事会がマンション内で組織化されておらず、個々での対応となるため、共用部分に言及することは困難なのが現実です」

 また、A氏のマンションの大きな問題点のひとつは、事業主と施工会社の関係にあると、前出の建築士は語る。

「事業主である藤和不動産が施工会社(フジタ)の子会社であったことがそもそもの問題構造です。一般的には、事業主→設計事務所→施工会社という立場関係がありますが、A氏のマンションでは竣工時にこうした力関係が機能しておらず、立場が逆転してしまっていたのでしょう」

 A氏のマンションの事情に詳しい関係者は、事業会社と管理会社の「親子関係」を指摘する。

「当該のマンションは管理会社が三菱地所の子会社であり、共用部分の問題点を隠蔽するため、これまで素人である管理組合を『問題ない』となだめすかす形で管理会社が事前に手を打っていた。そのためにアフターメンテナンスの履行がズルズル遅れた。外構などのアフター保証期間は大半が2年で、それを超えるまで、ウダウダとしていれば〝逃げ切れる〟から」

 前出の調査員も親子関係の弊害を語る。

「他社ですが、子会社の管理会社に対して、親会社の事業主が『事業主の矢面に立つのが管理会社の役割だから、クレームなどはそっちで処理しろ』と発言しているのを聞いたことがある。事業主は管理会社の『客=親』という立場なので、管理組合の声はまともに親には届かなくなる。マンション管理士などの外部機関を入れるなども考える必要があると思います」

 多数のマンション関連の著作がある住宅ジャーナリストの榊淳司氏は、マンショントラブルは初期の対応が大事であると語る。

「分譲マンションの場合、施工不良の責任を負うのは、あくまでも売主企業。A氏の場合なら藤和不動産の事業を引き継いだ三菱地所レジデンスで、施工不良の責任を追及する主体は管理組合です。管理組合が管理会社などを介さずに売主企業の責任を問うのが正解ですが、初期の対応で躓くと傷を広げてしまうことになります」

 マンション問題には事業主や施工会社、設計事務所のモラルの低下が一番根底にあることは言うまでもない。しかし、一部上場企業の三菱地所でさえ、顧客に不都合な業界慣行を放置するような対応なのだから、もはやマンションの購入に〝性善説〟は通じないと考え、自衛の知識を身につけた方が賢明だろう。

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