ZAITEN2021年09月号

熱海「土石流災害」を超える“危険な盛り土計画”も

JR東海「リニア工事」住民が恐れる"盛り土"問題

カテゴリ:事件・社会

 7月2日。静岡県熱海市の伊豆山で発生した土石流は、海までの2キロを高速で下り、20日現在で、死者18人と行方不明者10人、120棟以上の家々の破壊という甚大な被害をもたらした。

 災害の主因のひとつは、山頂近くで階段状に盛り土された建設発生土(残土)だ。

 盛り土をした神奈川県小田原市の解体業者は、県へ届け出た量を2万立米も上回る5万6000立米の盛り土をした上、条例で義務付けられた排水設備も敷設していなかった。

 杜撰な盛り土は全国各地にあり毎年どこかが崩落する有り様。そんな中、気になる盛り土計画がある。JR東海が東京・品川―名古屋間で2027年開通を目指すリニア中央新幹線の工事から排出される5680万立米(東京ドーム50杯分)もの残土だ。

 リニア計画は14年10月に国土交通大臣に事業認可され、以後、約70の工区で作業ヤード、取付け道路、斜坑や立坑の建設など準備工事が行われ、残土が排出されている、もしくは排出予定だ。

 その中で不自然なのが、神奈川県相模原市緑区の山の急斜面に計画中の「津久井農場」(牧場)だ。地元の韮尾根(にろうね)地区では、計画を「リニア残土を捨てるためのダミー計画」と見ている。

工事落札のフジタと牧場計画

 事業者の「有限会社佐藤ファーム」の佐藤誠代表は、茅ヶ崎市で牧場を営んでいたが、1999年、地元高校への用地提供に伴い酪農は廃業。以後、野菜農家として生計を立てている。

 佐藤氏は津久井農場予定地を98年に購入したが、住民が解らないのは、なぜ、茅ヶ崎から車で1時間もかかる牧場には不向きの急傾斜地を買い求め、20年も経ってから牧場再開を目指したかだ。そして、その牧場造成のために受け入れる残土は60万立米。65㍍もの高さに積み上げるというのだ。

 19年9月、環境影響評価法の手続きの一環として、佐藤ファームは、牧場の造成事業者である準大手ゼネコンのフジタと住民説明会を開催。明らかになったのは、両社の〝秘密主義〟だ。両社とも総事業費という基本情報すら「回答を差し控える」とした上、牛250頭を育てる管理体制も明らかにしなかった。

 残土は、法律上は「廃棄物」ではなく「資源」である以上、山に積むだけでは不法投棄になる。住民は、フジタが農場から数キロ離れた場所でのリニア工事を落札し、排出される残土を牧場というダミー計画に搬入し、その後、佐藤ファームが「やはり事業化は無理でした」と牧場計画を放棄するのではと懸念してきた。

 実際、昨年6月にフジタはその工区である「津久井トンネル(東工区)」を落札した。

そこからの残土を津久井農場造成に使うかと質問したところ、フジタは「事業者(佐藤ファーム)から業務委託されている立場で、現在計画段階であるためコメントできない」と回答。一方、佐藤ファームは住民の前で「事業はフジタに丸投げしている」ことを認めており、回答とは矛盾する。また、昨年11月の住民説明会で、フジタは断言こそしないが、「UCR(建設資源広域利用センター)を通してリニア残土が来る可能性もある」と説明していた。

 仮に1立米4000円で残土を引き取れば、佐藤氏は24億円を入手し、そこから牧場造成費用をフジタに払う。だが、もし工事が始まれば、韮尾根では1日300台以上の残土ダンプが幅の狭い生活道路を埋め尽くす。そのため、住民の94%が計画に反対。少し離れた愛川町半原地区でも、牧場の盛り土が崩れると土石流の直撃を受けるため、ほぼ全世帯が計画に反対している。

......続きは「ZAITEN」7月号で。

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