【月刊ゴルフ場批評34】

「茅ヶ崎ゴルフ倶楽部」批評

カテゴリ:月刊ゴルフ場批評

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「茅ヶ崎ゴルフ倶楽部」といえば、湘南屈指のシーサイドリンクス。関東では数少ない名匠・上田治氏設計として、長年にわたってゴルファーに親しまれてきたが......。

 土地所有者である神奈川県らとの地代交渉のもつれなどから、2015年にゴルフ場の閉鎖が決定。地元の茅ケ崎市が新規事業のアイデア募集を開始し、翌年には東急電鉄と電通が優先交渉権を取得し、ゴルフ場の存続は絶望的と見られていた。

 ところが、地域の広域避難場所の確保等を目的とした市民運動が活発化した結果、両社が交渉権を辞退。ゴルフ場は営業を続けながら神奈川県が新事業者を募集し、19年9月、ゴルフダイジェスト・オンライン(GDO)を代表法人とするグループが優先交渉権を取得、ようやく決着したという紆余曲折を経たコースでもある。

 そのGDOがパブリックコースとして、5月7日より暫定的ながら運営を始めたとのことで、新型コロナウイルスによる緊急事態宣言解除後の平日に行ってみた。

 もちろん、ロッカー、シャワー、レストランはクローズだが、コロナ対策とは言うものの、むしろこのスタイルを定着させようという意図にも思える。ドレスコードはないし、靴もスニーカーでOKだ。

 つまり、クラブハウスには受付、トイレ以外は立ち寄る必要がなく、精算もクレジットカードをはじめ、交通系ICカードやスマホ決済も可能だから、駐車場からバッグを担ぎ、ポケットには愛用のiPhone。チャチャっと事前決済して、あとはプレーする。必要なものだけに徹底的に絞ったゴルフ場だが、これが、まさに「ニューノーマル」なのかもしれない。

 もともとは電磁誘導カートでキャディも付いていたが、ここもバッサリ。手引き、もしくは手押しカート使用のセルフプレーのみにした。手押しカートは最新式で、3輪のホイールで安定感抜群。そのうえ、小物入れ、傘立て、ドリンクホルダーまで付いていて、意外にも快適だ。

 スタートの1番ホールは場外飛球防止のため、男性はアイアン以下、女性はUT以下に規制されている。出だしの数ホールは住宅に隣接しているから、少しせせこましく感じる。ただ、全体的には緩やかな起伏のあるフェアウエーを松林がセパレートしていて、風格ある林間コースの趣き。コンパクトなグリーン周りには深いバンカーが大きく口を開けていて、しかも底にフラットなところがないV字状の砂の谷のようで、かなり始末が悪い。

 名物は5番パー4。ティに立つと天気のいい日には、正面に富士山が迫ってくる。両サイドの松林の真ん中に見える純白の雪に染まった富士の姿には、神々しささえ感じる。

 サービスはその昔、初心者、初級者の登竜門となった河川敷コースの現代版。コースは9ホールとはいえ、上田氏設計らしく風格たっぷりで難易度も高い。ゴルフキャリアの違いで好き嫌いが出そうなコースであるが、GDO率いる同コースがコロナ禍を経て、いかなる世代にどんな評価を受けるのか見ものだ。

所在地 神奈川県茅ケ崎市菱沼海岸9-38 ●TEL. 0570-011-562 ●開場 1957(昭和32)年11月17日 ●設計者 上田治 ●ヤーデージ 9ホール、2915ヤード(左グリーン)、パー35

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