2022年1月号

月刊ゴルフ場批評51

「小淵沢カントリークラブ」批評

カテゴリ:月刊ゴルフ場批評

2201_小淵沢CC.jpg 本当に久しぶりに遠出をした。都内から中央自動車道を2時間以上走るのは、これまでなら憂鬱以外の何物でもないが、長期にわたる自粛生活。1泊2日の小さな旅でもテンションはマックスに近い。
 目的の地は、長野との県境に接する山梨県北杜市の「小淵沢カントリークラブ」。高速を降り、八ヶ岳高原へ続く登り坂を進むと5分ほどで到着する。出迎えてくれたのは、パブリックとは思えない重厚なクラブハウスだ。 


 スーツ姿のスタッフに導かれた室内には色調を抑えた生け花、壁面にはマグレガーのクラシッククラブと、こだわり満載。奥に進むと外光を採り入れたテラスがあって、暖炉、望遠鏡、ピアノ......併設のロッジ宿泊客が高原の夜を愉しく過ごすアイテムも並ぶ。窓から外に目をやると、ハウスの左手には石畳のオープンデッキ! 眼前に広がる南アルプスを望みつつ、お茶や軽食を楽しむ趣向だ。


 この仕掛け、ただのパブリックではないと思って調べたら、母体は医療品開発支援などを手掛けるシミックグループ。コース周辺には美術館やデザイナーズホテル、レストランなどが点在し、総称して「小淵沢アートヴィレッジ」というらしい。だからクラブハウスも美術館並みということか。


 肝心のコースはどうなのか?


 トップシーズンの週末だというのに、なぜか人影はまばら。駐車場にはかなりの車が止まっていたから、客が少ないわけではなさそうだ。聞けばスタート間隔などに配慮しているそうで、ゆったりとした雰囲気作りを意識した運営がなされている。


 スタートホールはやや打ち上げていくパー5。カラマツやシラカバなど、高原ならではの樹相に縁どられたまばゆいフェアウエーが真っすぐに伸びている。訪れた日は紅葉のピークには少し早かったが、美しい山並みをバックに打ち進んでいく爽快感がたまらない。
カートは県内唯一の「全日フェアウエー乗り入れ可」。1150㍍という標高の上、雨量も少ないから可能なのだろう。地面が硬いせいかランも出る。


 グリーンは大きめのワングリーン。グリーンサイドには「八ヶ岳」の方角を示す目印が設置されていて、そちらから順目ということだが、富士山周辺コースほど極端なクセはなく、ラインは比較的読みやすい。


 レイアウトも素直というか、ティからグリーンが見えないようなドッグレッグは数えるほど。フェアウエーもたっぷり広く、スコアはまとまるはずだ。


 まだまだ自粛生活を強いられている人も多いだろうから、本稿もできるだけ「癒やし」たっぷりの表現を使い、みなさんと共有できればと思ったわけだが、コース作業はいただけなかった。


 プレーしているすぐそばまで、ラフを刈る作業車が芝を飛び散らせながら進んでくる。せっかくの爽快プレーが台なしだ。しかも、週末の真っ昼間にやる作業じゃないんじゃないか? 


 すさんだ世の中に「一服の清涼剤」を与えてくれそうなコースなのだから、プレー中の「雰囲気」も大切にして欲しいものだ。

●所在地 山梨県北杜市小淵沢町10060-163 ●TEL. 0551-36-4411 ●開場 1989(平成元)年5月2日 ●設計者 安田幸吉 ●ヤーデージ 18ホール、6859ヤード(チャンピオンティ使用時)、パー72

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