ZAITEN2022年3月号

「アホ、ボケ、カス、クビ、帰れ」の〝選良〟が持論に執着

維新・足立康史の「パワハラ政調会」実況中継

カテゴリ:事件・社会

足立康史_維新_公式.jpg

足立康史(写真は公式HPより)

「アホッ、ボケッ、カスッ」と罵られた秘書が次々と辞めていく。
 その現状を追及した週刊誌の取材に〈(事務所スタッフに対して)「アホ、ばか」という表現を用いることもありますが、それは人格を否定するためでなく、愛情表現としての「アホ、ばか」です〉(『FRIDAY』2019年8月16日号)と、目下の者に対する歪んだ愛情表現を正当化してみせた日本維新の会(国会議員団)政調会長の足立康史。足立の支援者で、その下で働いていたという男性の〈私が働いていた頃は、「あほか、やめろ、クビや、帰れ」は普通でした〉といった証言も飛び出し、足立の〝異常愛〟に満ちた事務所の空気が伝わってくる。


 足立の選出選挙区である大阪においては、日常的に「アホッ、ボケッ、カスッ」などという部下への言葉に愛情表現のニュアンスがあったとは、東京で育った筆者には知る由もないが、記者や支持者に対しては愛想が良いと、その二面性も指摘されてきた。
 パワハラに関する対策と相談をする「ハラスメント110番」のホームページには、パワハラ上司分類表が掲載されており、その「二重人格」の項目には、特徴として〈①相手によって態度が急変する、②嘘がうまい、③影で悪口をいう、④上司には愛想がよく部下に対しては威圧的〉が挙げられている。そんな二重人格への対処法は、〈表向きは人当たりがよく評判もいい人物であることが多いので、表の顔と裏の顔の二面性をよく見極めることが重要です。信頼しすぎず、必要以上に深入りしないほうが無難です〉というが、職務上、深入りしたくなくても、しなくてはならない時は大変なことになるということでもある。
 最近は「同僚議員」に対しても、パワハラとも指摘されるぐらいの攻撃性を強めている。

並び立つ2人の政調会長

 足立は昨年、維新の国会議員団の政調会長になった。実は国会議員の政調会長にはもうひとり、音喜多駿がいて、音喜多は、維新の政調会長である。同じ政党に2人の政調会長とはどういうことか。
 維新関係者はこう解説する。
「日本維新の会の代表に松井一郎大阪市長が再任されることになりました。松井氏は世代交代を図るため、維新の政策責任者である政調会長に、参院議員で当選1回の音喜多氏を大抜擢しました。そこで面白くないのが議員として先輩だった足立氏。足立氏への配慮もあって、維新の国会議員団の政調会長に足立氏を置きました。結果、2人の政調会長が並び立つことになるわけですが、その分かり難い人事について音喜多氏のもとに問い合わせが殺到しました」
 そんな格好で政調会長に就任した足立が肝いりで始めたのが「フルオープン」での会議の開催だった。政策の決定過程における議論をYouTubeで配信し、国民の目に晒すという試み自体は歓迎すべきものだが、実際に「フルオープン政調会」を見た視聴者からはこんな感想が寄せられた。
〈足立さんの自己正当化会議みたいで楽しくはなかったですね。音喜多さんへの絡み方、詰め方もパワハラ上司みたいでした〉
〈日本維新の会のフルオープンを再度見直してんけど...自分の意見を認めて貰うのに必死な足立さんは無理。青柳さんがあんだけフォローしてるのに...申し訳ないが足立さん無理になった。言葉に気をつけたパワハラに感じる〉
 ともにツイッターの声の一部だが、実際にその動画を見ていくと、イラついた足立の演説が長々と続き、同僚議員が不満の声を上げているのが分かる。
 具体的には、維新の議員が足立の意見に異を唱えると、「補足します」と宣言し、その意見に肯定するフリを一旦してから、ダラダラと自説を述べて同僚議員に論破を試みる。それでも、誰も足立の意見に賛成できないので、また誰かが異を唱え、足立が「補足します」と持論をダラダラ......の繰り返しとなる。「維新の立場は××(足立の持論)ということでいいですね」と足立は持論を維新全体の意見に昇華するように迫り、窮した相手が「調整します」と答えると「期限は?」と詰める。要は、自説を曲げず、相手の意見を取り入れないのだ。

「金融資産課税」実現に血道

 一体、足立は何をしようとしているのか。先の維新関係者はこう内幕を暴露する。
「足立氏の持論である金融資産課税が、先の選挙公約から落とされたのが問題の発端です」
「金融資産課税」とは、足立の説明によれば、家計、企業、行政の持つ資産すべてに1%の課税をするもので、実現すれば36兆円の増税が見込まれる。しかし、郵便貯金や銀行預金、国債など利率が1%未満の資産は持っているだけで資産が目減りしていく。そのため、多くの資産がリスクを取った投資に回され、日本経済が活況するという算段のようなのだが......。
「そんなことをしたら、国民の財産はリスクに晒される上、国債が大暴落するのは間違いない。さらに、この金融資産課税を主張しているのは投資家の村上世彰氏。維新は村上氏から法定を超える政治献金を受けたとして、刑事告発されました。村上氏は、維新とは別に足立氏にも150万円の献金をしています」(前出維新関係者)
 国民の資産がリスクの高い投資に振り分けられることで、株価上昇がなされれば、投資家は儲かるという算段なのか。投資家ならではの発想だが、それに乗っかる足立は、政調会において「(金融資産課税とは)所得税を払いながら、人生をかけて貯めてきた小金(こがね)をいまさら課税する」「大金持ちの村上世彰氏は金融資産課税を了承してくれている」という説明をなぜか自信満々に披露している。そんな金融資産課税を選挙公約から一度は落とした維新だが、足立はその復活をいまだ目論んでいるのだ。これが立憲民主党を支持率で抜いた維新の国会議員団の政策責任者なのである。
 先の衆院選で大躍進した維新だが、その投票数を見ると、その前の衆院選で小池百合子率いる「希望の党」が取った得票がそのまま流れているだけ。有権者の一定数は〝第三極〟に期待しているのであって、抵抗できない部下に「アホ、ボケ、カス、クビ、帰れ」と叫ぶ不良政党に期待しているのではない。慢心するなと声を大にして言っておく。(敬称略)

......続きはZAITEN2022年3月号で。

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