ZAITEN2022年04月号

国税庁・検察庁・警視庁「捜査当局こぼれ話」

国税庁・検察庁・警視庁「捜査当局こぼれ話」

カテゴリ:事件・社会

【国税庁発】新業態「ギャラ飲み」への国税調査に高まる期待

 毎年2月から3月にかけて行われる確定申告。今年は国税庁がコロナ禍で台頭した業種に睨みを利かせているという。なかでも失職女性らが殺到した新しい夜の業種「ギャラ飲み」が狙いのひとつだという。気軽に始められるため、ギャラ飲みは申告漏れの温床になる可能性が高いというわけだ。 「もともと国税庁がまとめる申告漏れの多い職業ランキング上位には、裏金も動きやすいキャバクラや風俗業が常連として登場します。夜の街で働く女性には納税意識が低い場合も多いとされ、東京国税局はギャラ飲みにも早くから目をつけていたのでしょう。2月までに、ギャラ飲みの最大手と言われる運営会社に税務調査を行う中で、多くの女性に申告漏れの疑いがあることを把握しました」(国税担当記者)  ギャラ飲みとは、男性側が女性に謝礼を払い飲食をともにするサービスだ。コロナ禍でネオン街の灯りが消える一方、ギャラ飲みはホテルの一室などを利用することも可能。アプリで簡単に利用することもできるこのサービスはコロナ禍にマッチし、稼ぎたい女性と下心のある男性が飛びついた。夜の街に〝新規参入〟したギャラ飲みで、1000万円以上を稼いだ女性もいるという。  ギャラ飲みを利用する女性は「キャスト」と呼ばれ、運営会社から収入を得る仕組みだが、雇用関係はなく源泉徴収されない。そのため、一定以上の所得を得た女性は確定申告をする必要がある。  今回の調査で運営会社側は東京国税局の協力要請に対し、対象となる女性の氏名や住所といった個人情報を提供しているという。 「収入が多く目立っている女性から税務調査の対象となるでしょう。申告漏れが判明した場合、いわゆる『無申告』と扱われ、懲罰的な徴税が行われるはずです」(同)  ギャラ飲み運営会社の調査に乗り出す以前から、国税庁はある種のメッセージを発してきた。ギャラ飲みと同様、コロナ禍で拡大した「副業」分野に対して目を光らせてきたのだ。  飲食配達サービスはその典型だ。東京国税局は昨年中に「ウーバージャパン」(東京都)に対し、配達員への報酬支払い状況などについての情報提供を依頼している。他にも、源泉徴収されない仮想通貨やアフィリエイト収入、個人が所有するモノや場所、スキルなどを取引する「シェアリングエコノミー」で申告漏れが相次いでいると国税庁は見ている。  国税庁の昨年11月発表の調査結果によると2020年事務年度で、シェアエコなどを対象とした調査を1071件実施。1件あたりの追徴税額は494万円で、全体平均の1・8倍、追徴税額の合計は53億円に上る。 「国税庁が副業分野への調査を強化することは霞が関でも期待されています。ただ、国税側の本音は、副業が多様化する中で全件を捕捉するのは不可能。少額の無申告を追っても割に合わないことから確定申告制度の周知徹底を基本路線としたようです」(同)  ギャラ飲みで鼻の下を伸ばす男性諸君は、「確定申告している?」とお目当てのあの子に教えてあげましょう。

【検察庁発】検審議決で議員が消える?庁内で聞こえる恨み節

 3年前の参院選を巡り、河井克行元法相が実刑判決を受けた公選法違反(被買収)事件で、東京第6検察審査会は1月28日までに不起訴となっていた被買収者100人のうち地方議員ら35人に対し、「起訴相当」との議決をした。再捜査する検察当局が検審の〝要求〟に満額回答した場合、広島県の地方議会から大量の議員が退場する前代未聞の事態となる。  買収側と同様に被買収者も起訴されることが一般的だが、東京地検特捜部は100人の中で線引きをすることは不可能だとして、昨年7月に全員不起訴という〝奥の手〟を使った。対する検審は①公職に就いていて事件後に辞職したか、②受領額、③返金の有無などで条件付けし「線引きは可能」と議決。起訴相当とされた35人のうち、7割以上の26人は議決時点で現職だった地方議員だ。 「議決が近づき、議席を失うことが現実味を帯びてきた地方議員は昨年末からずっとソワソワしていました。1月下旬発売の月刊Hanadaに河井氏の独占手記が掲載されましたが、河井氏の検察批判に同調し、『俺は捜査に協力した。起訴されないはず』と根拠なく自分に言い聞かせる議員もいました」(地元紙記者)  被買収者の議員の起訴は、議員バッジを奪うことを意味する。現職議員が起訴され罰金刑以上が確定すれば公民権が停止され、失職するためだ。 「巨悪と対峙する検察は、何かと議員バッジを狙っていると思われていますが、実態は異なります。政治家ばかりを狙い撃ちにすれば、『検察は独善的』との批判が起こる。刑事事件で奪う議席は最小限にしたいというのが検察の心理なのです」(司法担当記者)  だが、今回ばかりは1人2人の起訴では済まされそうにない。司法担当記者が続ける。 「検審の議決で最も注目すべきポイントは、『公職に就いていて事件後に辞職したか』を検討基準にしてきたことです。言い換えれば、検審は『とにかく議員を辞めろ』と言ったに等しいのです。26人もの現職議員が失職すれば、その影響は計り知れません。検審はあまりに感情的な議決をしたのではないか」  起訴相当と議決された35人を再び不起訴としたとしても、検審が2回目の審査で「起訴議決」を選択すれば、強制起訴される。強制起訴は法務検察にとって〝失態〟とされ、決裁した幹部らの人事に影響する可能性もあるという。担当検事らにとってはまさに八方塞がりだ。 「昨年、全員不起訴という変化球を選んでしまったがために、検察側は追い込まれました。そんな中、検察庁内で聞こえてくるのは、前検事総長である稲田伸夫氏に対する恨み節です」(同)  稲田氏は、河井氏と妻で元参院議員、案里氏の立件に最も積極的だったとされる。 「稲田氏は現場に発破をかけ続けたといいます。焦った現場はそれとなく被買収者に対して不起訴をチラつかせながら供述を引き出したのは良いものの、気付けば被買収者は100人に。稲田氏は被買収者の処分という難題に道筋をつけないまま勇退したため、この問題は長期にわたって棚晒しにされ、尾を引いているわけです」(同)  検察の迷走ぶりもさることながら、地元政界をここまで混乱させておいて、検察批判を手記で展開する河井氏の図太さに改めて驚愕する。

【警視庁発】2課出身の捜査1課長の「塩対応」に怯える記者

〝桜田門の顔〟ともいわれる警視庁の捜査1課長に鑑識課長から小林仁氏が就任した。歴史ある捜査1課で77代目となる課長となる小林氏はこれまで捜査1課の経験はなし。いわゆる〝外様〟の1課長の誕生となる。  小林氏は贈収賄や詐欺事件を扱う捜査2課の経歴が長く、2課時代には、銀行から5億円超の融資金をだまし取った旅行会社「てるみくらぶ」の事件などを手掛けた。就任会見では、外様であることについて聞かれ、「ホシを挙げるという志は同じ。一つの目標に向かってともに進む中で必ずまとまる」と答え、同じ刑事としての自負をのぞかせた。  警視正という階級である警視庁の捜査1課長は警察組織では一握りのエリートでもある。このため殺人事件のたたき上げ刑事がなるとは限らない。外様がそのトップに据えられるということは、ある意味、捜査1課において適任な人材が育っていなかったという証左でもある。  刑事と公安は水と油の関係といわれるが、刑事部の花形部署の双璧をなす1課と2課の関係はどうなのか。「捜査対象が強行犯と知能犯と異なるものの、詐欺グループによる殺人事件も多く、海千山千の輩を相手にする2課刑事は1課でも役に立つ」(元捜査1課刑事)との評価もあり、親和性は高いようだ。  だが、2課出身の捜査1課長はあまり誕生していない。65代の立延哲夫氏と67代の若松敏弘氏ぐらいだろう。この2人については「1課への遠慮もあったのか、下に口うるさくはなく、自由にやらせてもらえた。2人とも酒好きでしたし」(元捜査1課刑事)との声も聞かれ、外様へのアレルギーは課内になさそうだ。  むしろアレルギーが強いのは、1課担当の記者だろう。「小林氏は2課時代に、2課担当記者をまったく相手にせず、塩対応だったと聞く。広報担当でもある1課長は、事件報道を途切れさせない続報のサジ加減も必要。これまで同様の対応では困るのだが」と戦々恐々としている。  1課長は殺人や強盗といった事件ばかりでなく、誘拐や立てこもりといった現在進行形の犯罪も扱う。「先行報道されたら事件をやらない」といった知能犯捜査特有の裏技も通用しない。事件捜査にマスコミ対応。部下やマスコミと軋轢は生じるか。外様課長のお手並み拝見といったところだろう。

......続きはZAITEN4月号で。

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