ZAITEN2024年03月号

【対談】佐高信の賛否両論

佐高信 vs. 石破 茂「石破茂は田中角栄の〝感覚〟を受け継いで決起せよ‼」

カテゴリ:インタビュー

いしば・しげる 1957年生まれ、鳥取県出身。慶應義塾大学法学部卒。1986年衆議院議員に全国最年少で初当選。防衛大臣、農林水産大臣、地方創生・国家戦略特別区域担当大臣などを歴任。著書に『異論正論』(新潮新書)など。

佐高:
私は田中角栄元首相に魅力を感じて『田中角栄伝説』を書いたのですが、田中角栄という人物から何を受け継ぐ、あるいはどう捉えていますか?

石破:誤解を恐れずに言えば、角栄先生は人間ではなく、「魔神」だったと思っているので、「学ぶ」などというのは恐れ多い話です。内務官僚だった父、石破二朗は「心酔というのはこういうことだろう」と思うほどに角栄先生に惚れ込んでいました。角栄先生のためなら死んでもいいと本気で思っていたと思います。  

 角栄先生は新潟、父は鳥取の貧しい農家出身です。父は旧制高校から東大法学部を出た官僚のエリートでした。一方で、角栄先生は実業家から国会議員になった。父は参議院議員2期目で鈴木善幸政権の自治大臣に就任しましたが、その時はすでに膵臓がんがかなり進んでいて、すぐに辞めました。そして、翌年1981年の9月に亡くなりました。刑事被告人だった角栄先生が東京と新潟以外に行った最初が、鳥取の父の見舞いでした。当時、私は三井銀行に勤務していたのですが、ある朝方、母から電話がかかってきて、父が角栄先生が見舞いに来てくれた夢を見たと言っている、「あれは夢だったのか」と落ち込む父に、死ぬ前に1回会わせてやれないものだろうか、と言うのです。それで恐る恐る角栄先生に電話をしたところ「分かった。すぐ行く」と言って、数日のうちに鳥取の病院へ駆けつけて下さいました。鳥取県立中央病院の病室で、2人だけで話をしていました。角栄先生は父から最後の頼みで葬儀委員長をお願いしたいと言われたそうです。  

 そこで角栄先生は、病院からその足で鳥取県庁へ行き、当時の知事に会って、「君は知事だから県立病院に入院している石破君が長くないことは知っているだろう。鳥取県知事を務めていた石破君は県民葬におそらくなるだろうから、その葬儀委員長を私がやるわけにはいかない。君がやってくれ。僕は友人代表で弔辞を読む」とおっしゃったそうです。その通り、県民葬で角栄先生は泣きながら弔辞を述べて下さったので、目白へお礼を言いに行ったら、角栄先生は「早坂、青山斎場を予約しろ。俺は石破と約束したんだ。葬儀委員長をやってやる。最初で最後の田中派葬だ」とおっしゃるのです。「送る友人葬」という名で田中派の議員が全員発起人になって、青山斎場でやって下さいました。金があればできるとか、権力があればできるとか、そういう話ではないのです。こんな感じで角栄先生は別格ですので、受け継ぐなんて恐れ多いです。

佐高:あまり敬遠されると困りますが(笑)。田中角栄という人は、護憲だったと思います。外交は政策になりますが、防衛論は政策ではないと私は考えています。石破さんは防衛大臣もやられましたが、その点はいかがですか?

石破:私はご承知の通り、憲法9条についても改正すべきと考えています。防衛庁長官になった頃は〝極右の軍事オタク〟と言われていましたが、今や〝左翼の軍事オタク〟と言われるようになりました。  

 9条の成立経緯もよく知っているつもりですが、本来あるべき自衛権を曖昧にした憲法は良くないと思っています。普通に憲法を読めば戦車や戦闘機は戦力ではないかと思うでしょう。しかし、現行憲法下で自衛権を認めるために、政府は「必要最小限度の実力組織は憲法で禁じる戦力ではない」と説明してきました。必要最小限度だから戦力ではない、軍隊ではない、これは国の基本法の解釈として不誠実だと私は考えています。  

 国家の自衛権は質の問題であって量の問題ではないのですから、必要最小限度という量的概念はそもそも合わない。統合幕僚会議議長だった栗栖弘臣さんが書いているように、国家の独立を守るのが軍隊、国民の生命財産を守るのが警察で全く質が違う。ここを混同するからおかしなことが起こるのです。

.....続きはZAITEN3月号で。

購読のお申し込みはこちら 情報のご提供はこちら
関連記事

佐高信 vs. 石破 茂「石破茂は田中角栄の〝感覚〟を受け継いで決起せよ‼」

【著者インタビュー】俺たちはどう生きるか

特ダネ記者「放言座談会」

特ダネ記者「放言座談会」

【著者インタビュー】『情報公開が社会を変える』

小泉悠「国際秩序を維持するためのウクライナ戦争の出口戦略」

佐高信 vs. 寺田俊治「メディアは『反体制』の人で構成した方が健全だ」

小塚かおる「安倍晋三 vs. 日刊ゲンダイ」

【著者インタビュー】『日本企業はなぜ「強み」を捨てるのか』

佐高信 vs. 鎌田慧「危険地帯に赴くのがジャーナリストの仕事」