ZAITEN2024年08月号

チッソ中核子会社「経理畑出身社長」で経営正念場

カテゴリ:企業・経済

 水俣病原因企業チッソの業績悪化に歯止めがかからない。5月14日公表の決算によると、2024年3月期は売上高、営業利益、経常利益はいずれもマイナス。特に利益は大幅減となり、営業利益は前期比79・7%減の12億2700万円、経常利益は94・7%減の4億200万円と散々な状態だ。2000億円を超える公的債務の返済は国が5年連続で立て替えることになり、先行き不透明な状況に政府の担当者も頭を抱えている。  業績不振の背景は、かつて収益源だったテレビやパソコンなどの液晶パネルに使う液晶材料事業の低迷にある。液晶材料などで構成する機能材料事業の売上高は前期比8・1%減の185億900万円と1割近く落ち込んでいる。ノート型パソコンなど〈中小型パネル市場の需要回復の動きが鈍く、IT向け高付加価値品の出荷割合が低下〉したためだと同社は説明する。  

 しかし、業界関係者は「そもそもシェアを落としていることが、業績低迷の根本原因なのです」と指摘する。10年以上前の液晶材料市場は、ドイツの化学大手メルクとチッソで「シェアを二分している」(同)とまでいわれていた。だが、急拡大を遂げた中国市場への対応が後手に回り、存在感をなくしていった。  

 さらに深刻なのが、液晶材料に代わる次の柱となる事業が見当たらないことだ。バイオ医薬品やワクチンの製造工程で使う材料などで構成するライフケミカル事業の育成に努めているが、チッソ関係者は「いかんせん規模が小さく、収益を支える存在になりきれていません」と語る。

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