ZAITEN2025年05月号
2つの事件から浮かび上がる 警察組織の不正と隠蔽の本質
『追跡 公安調査』毎日新聞東京社会部記者 遠藤浩二
カテゴリ:インタビュー
『追跡 公安捜査』
(毎日新聞出版)/1700円+税
えんどう・こうじ―毎日新聞東京社会部記者。1982年生まれ。慶応義塾大学総合政策学部卒。2008年、毎日新聞入社。鳥取支局、大阪社会部、特別報道部大阪駐在を経て現職。大阪時代は大阪府警捜査1課、捜査2課の担当後、大阪市と堺市の上下水道工事不正問題などの調査報道に取り組む。
2つの事件から浮かび上がる 警察組織の不正と隠蔽の本質
1995年に当時の日本警察のトップ、國松孝次氏が東京都荒川区の自宅近くで銃撃された「警察庁長官狙撃事件」。2020年に神奈川県横浜市の中小企業の社長ら幹部3人が、不正輸出の疑いで逮捕・起訴されたが、捜査の問題が発覚して起訴取り消しとなった「大川原化工機事件」。この2つの事件について、19年から取材をはじめ、公安警察の捜査の実態とその過ちに迫った『追跡 公安捜査』(毎日新聞出版)を25年3月に上梓しました。
2つの事件は、公安警察による杜撰な捜査と次第に判明していった真相の隠蔽、そしてこうした権力の不正に対して、メディアの追及があまりに弱い点が共通しています。 「警察庁長官狙撃事件」については、事件当時、その直前に発生した「地下鉄サリン事件」の影響もあり、オウム真理教(当時)の関与が指摘されていたことで、警視庁公安部は、「オウムありき」の歪んだ捜査を続けていました。本書で詳しく解説していますが、私は偶然、警視庁捜査1課が真犯人として捜査し、犯行の「自白」までしていた中村泰無期懲役囚(24年5月獄中死)の〝協力者〟の1人とされる人物・大城(仮名)と接触することができ、さまざまな証言を聞き取りました。大城の証言は、中村が真犯人である証拠が随所で見られるほか、公安捜査の過ちを詳らかにするものでした。
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