ZAITEN2025年09月号

慶応義塾大学教授

【インタビュー】『健全な社会を破壊する「陰謀論」とポピュリズム』烏谷昌幸

カテゴリ:インタビュー

『となりの陰謀論』
講談社現代新書/¥900+税

からすだに・まさゆき―慶応義塾大学法学部政治学科教授。慶応義塾大学大学院法学研究科後期博士課程単位取得退学。博士(法学)。おもな著書に『シンボル化の政治学―政治コミュニケーション研究の構成主義的展開』(新曜社)など。

「陰謀論」という言葉に、ひとはどんなイメージを持つでしょうか。 『となりの陰謀論』(講談社現代新書)は、おもにアメリカでの「トランプ現象」において表出した陰謀論に対して社会学・政治学的に検証をおこなったものです。

 本書の冒頭では、2024年の大統領選挙期間中にドナルド・トランプ候補が暗殺未遂の襲撃を受けた際に撮影された、「奇跡の一枚」と呼ばれる写真にまつわるエピソードを取り上げています。

 この写真は事件そのもののインパクトと同様に、当時大きな話題になりました。右耳付近に銃弾による傷を負いながらも、シークレットサービスに囲まれた状態で聴衆に向かって演説を続け、右手を大きく掲げるトランプ。その背景には突き抜けるような青空にはためく星条旗。選挙中の候補者への銃撃という異例の事件、暗殺という暴力には屈さない不屈の闘志を見せるトランプの行動、さらに偶然その場に居合わせ絶好の構図で写真撮影をしたカメラマン、いくつもの偶然が重なって生まれた「奇跡の一枚」に対して、民主党支持者は「自作自演のヤラセではないのか」という、まさに陰謀論的な主張が、SNSなどで拡散されたのです。

 近年のアメリカ政治を語るうえで、トランプ支持者による陰謀論の議論は避けては通れません。しかし、「奇跡の一枚」にまつわる陰謀論的主張は、実は彼らと対立する民主党支持者の間でも、陰謀論は生まれてくるという証左であり、陰謀論そのものに政治的な立場は本来関係ないことを示唆しています。

......続きはZAITEN9月号で。

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