ZAITEN2025年11月号
〝辣腕コストカッター〟に社内は戦々恐々か
田辺三菱「高給取り新経営陣」起用の〝放蕩ぶり〟
カテゴリ:企業・経済
今年7月、田辺三菱製薬が米投資ファンドのベイン・キャピタルの傘下に入った。親会社だった三菱ケミカルグループが本業とする化学への経営資源集中を打ち出すなか、2月に5100億円でベインへの売却を発表していた。これにより、12月に「田辺ファーマ」に社名変更し、外資系へ転生する。
田辺三菱製薬の生い立ちは複雑だ。1678年創業と国内最古、世界でも2番目に古いという歴史を持つ田辺製薬と、三菱化学と武田薬品工業の関係会社を源流とする三菱ウェルファーマが2007年に合併・発足したが、そこに至るまでにも数々の製薬会社を統合してきたこともあり、そのDNAは多様性に満ち溢れている。
とはいえ、社内の最大勢力はやはり伝統ある田辺製薬出身者だ。誇り高い彼ら彼女らがベイン傘下入りに見せた反応はさまざまだ。
同社を去ったベテランは、「ファンドに製薬の何が分かる。おもちゃにされることは明白」と吐き捨てる。一方、「我々が仕切れるようになる」と凱歌を揚げる出身者も目につく。
そんな田辺三菱が8月29日、9月1日付で発足する新たな経営体制を発表した。これが業界内で話題を呼んだ。大物業界人が相次いで名を連ねたからだ。
代表取締役執行役員最高経営責任者(CEO)に就くのは原田明久。メガファーマとして名高いファイザー日本法人の前社長だ。今年1月1日付でボストン・コンサルティング・グループ(BCG)上がりの五十嵐啓朗に社長の座を譲り、会長へ。8月まで顧問として残っていた。
原田は金沢大学大学院修了の医師で、99年にファイザー日本法人に入社した。08年に臨床開発部門長、16年に炎症・免疫部門長と順調に出世し、17年12月に社長へと上り詰めた。在任中は新型コロナウイルスワクチンをいち早く日本に持ち込み、業績を拡大した。
「大手製薬でのマネジメント経験者や外資系に理解があることなどを条件としたヘッドハンティングの話が業界内で出回っていましたが、まさか原田さんになるとは」
あるバイオテック経営者はこうつぶやく。「条件は満たしていますが」とした上で、「もう60代後半。少しとうが立ち、『昔の名前で出ています』ではちょっと......」と首を傾げる。
......続きはZAITEN11月号で。