ZAITEN2021年10月号

平気で嘘をつく「総理の孫」の神経は理解不能

【安倍追放特集】自民党・村上誠一郎議員「安倍『再復活』など言語道断」

カテゴリ:政治・国際

村上誠一郎.JPG  村上誠一郎 自由民主党衆議院議員

 安倍政権から菅政権へと続く「自民一強」の中で、同じ自民党にありながら「一人良識派」として気を吐くのが、 衆議院議員・村上誠一郎氏である。今や党内でキングメーカーを気取る「安倍晋三」という人物をどう見るのか――。

 今、安倍晋三氏の再々登板への期待感が一部にあるといわれています。結論から言いましょう。言語道断です。  

私は1986年の初当選以来、自民党一筋を貫き、連続11回の当選を重ねてきました。しかし、第2次安倍政権から菅義偉政権にまたがる8年7カ月は、多くのメディアで法案や政権運営の問題点を指摘し、特定秘密保護法や集団的自衛権の行使を可能にする安全保障関連法の国会採決では賛成票を投じませんでした。

 どうして、これほどいい加減な政治が許されてしまったのか。あらためて安倍政権を総括する必要がありますが、その前に、「なぜ村上誠一郎だけが言いたいことを言えるのか」とよく聞かれるので、私の政治家としての〝原点〟からお話ししたいと思います。

 私を政界に導いてくれたのは、通商産業大臣などを歴任した故・河本敏夫先生です。関東軍が張作霖爆殺事件を起こした翌年の1929年、旧制姫路高校の学生だった河本先生は、教練中の陸軍兵士に向かって反戦演説をぶちました。陸軍の満州侵略を批判する内容だったといいます。河本先生は警察に連行され、退学処分になり、実家から勘当されました。

 私が35年前に初当選した際、当選同期の若手と河本先生にご馳走になったことがありました。34歳の若造だった私は「反戦演説をおこなって、退学になるとは思わなかったんですか?」と質問したのです。すると河本先生は、ただ一言「思ったよ」とおっしゃいました。

 もし、自分が戦前の旧制高校生だったら、同じことができただろうか。帝大が約束された身から退学になり、憲兵に追い回され、家族を泣かせる。ましてや、あの時代にお国に逆らうことは命懸けです。河本先生はそれほどの覚悟で、正しいと思ったことをしたのです。その「たとえ少数でも、正論を言い続けろ」という教えが、私の"原点"になっています。

 そして、自民党も小選挙区制が導入されるまでは、一回生でも自由に意見を述べることができ、党内で議論を戦わせ、選挙ともなれば他派閥の候補者と厳しく競い合うというのが伝統でした。

 ところが、現在の党内を見渡せば、ポストと選挙のことばかり考えている保身政治家だらけで、あまりにも情けない。そんな中で、私までもが党幹部に忖度したら、いよいよ自民党はおしまいだと思います。最後の砦として、正しいことは正しい、間違いは間違いであると言わなければならないと思っています。  国の政権中枢に安倍氏、菅氏等が座ったこの間、最も許し難かったのは、政治から「道義と正義」を失わせたことです。

 その正確な意味を、安倍政権下で起きた、その5つの大問題を正確に指摘したいと思います。 官僚の劣化を招いた  第一に、権力の私物化でお友達に便宜を図り、それが露呈すると役人や秘書に責任転嫁してきた問題です。  森友学園問題では改竄を指示された近畿財務局の職員が亡くなられました。もし30年前ならこんな事件が起きたら大蔵大臣や官房長官は即刻辞任でしょう。ましてやこの問題は、安倍昭恵夫人が名誉校長を務める学校法人に国有地が異例の低価格で払い下げられたことから始まっています。  

 加計学園問題では、安倍氏の「腹心の友」加計孝太郎氏が経営する学校法人にだけ恩恵を与えました。本来は認められないことを、国家戦略特区の枠組みを作ることで通したと、元文部科学省事務次官の前川喜平氏が証言しています。安倍氏のお友達のために、政策を捻じ曲げたのです。

 そして「桜を見る会」では、安倍首相の地元の有権者に対して公費で接待しました。当然、安倍氏自身の政治責任が問われねばなりませんが、それを内閣府と秘書に押し付けて曖昧にしようとしました。自らの責任を弱い立場の者たちに転嫁するのは、政治家として一番やってはならないことです。これだけでも、議員辞職に値すると思います。

 第二の問題は、官邸による霞が関の人事掌握によって、日本が誇る官僚組織を崩壊させたことです。

......続きは「ZAITEN」2021年10月号で。

◆プロフィール◆
むらかみ・せいいちろう―1952年生まれ、東京教育大附属高を経て、78年東大法学部卒業。河本敏夫衆議院議員の秘書となる。86年衆議院議員に初当選。以後11回連続当選。2001年、第2次森喜朗改造内閣で初代の財務副大臣。第2次小泉改造内閣で、国務大臣(行政改革・地域再生・構造改革特区担当)・内閣府特命大臣(規制改革・産業再生機構担当)として初入閣。2012年衆議院政治倫理審査会会長。自民党総務10期。現在、自民党海運・造船対策特別委員長、四国ブロック両院議員会長、愛媛県連会長、税制調査会副会長。

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