ZAITEN2021年10月号

「選りすぐりのバカ」を集めて 体制化した“愚者の王”安倍晋三

【特集】白井聡インタビュー「選りすぐりのバカ」を集めて 体制化した"愚者の王"安倍晋三

カテゴリ:政治・国際

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白井聡氏

まず強調したいのは、今の日本が抱える問題は、もはや安倍晋三個人のことではなく、一種の「日本人問題」であるということです。  

 あれほど長期政権化した第2次安倍政権は何に支えられていたか。それは「奴隷根性と無関心」です。無関心もまた民意のひとつですから、安倍政権は民意に支えられていたと言えます。

 つまり、「安倍政権が日本をダメにした」という主張は間違いではありません。しかし、安倍個人に本当に日本を破壊する力などあったのか。むしろ、日本社会の劣化の結果として、安倍晋三という人間をトップにしてしまった。そう捉え直すべきでしょう。

 たとえば昨年、安倍が総理を辞任する数カ月前から、「体調不良キャンペーン」とでも呼ぶべきメディアを通じたパフォーマンスが行われました。一国の首相が病院に入る姿をテレビカメラが放列を敷いて映す。その効果は、総理が辞任する政権としては異例の高支持率として表れました。

「桜を見る会」問題やコロナ対策での失政によって国民のささくれた感情が強まり、検察も動かざるを得なくなる中、「難病の悪化」をカードに同情を誘う安倍の作戦は見事に成功。バトンタッチした菅義偉内閣は「苦労人のパンケーキおじさん」なるブーストをかけて驚異的な支持率を記録しました。これこそまさに衆愚制です。

 さらに注目したいのは、安倍政権後期からメディア上で使われるようになった「安倍一強体制」という言葉です。ここにはメディア側のある種の戸惑いもあったと思います。冷静に見れば、安倍政権はちっとも成果を出していない。その上、森友問題や加計学園問題、その他どうしようもないスキャンダルを多数抱えていた。にもかかわらず、一向に倒れない。選挙をやると勝ってしまう。なぜなのか。それは相手が弱すぎるから。野党が驚くほど弱い。自民党内の反主流派も力を持てない。一強多弱が固定化された構造から、「安倍一強」と呼ばれたのでしょう。

「政権」という言葉はしばしば人名や政党名とともに用いられますが、対して「体制」という言葉は、幕藩体制や共産主義体制など、一般名詞に近いものと結合し、より強固な権力構造を意味します。


日本人は「恥」を知れ


 つまり、安倍政権はある時から、単なる「政権」ではなく、より安定的な「体制」になったということです。徳川将軍が何代続こうが幕藩体制に変わりがないように、トップをすげ替えても構造自体は変化しない。昨年の安倍から菅への交代は、まさにその証明でした。つまり、今私たちが目にしているのは「安倍晋三抜きの安倍一強体制」なのです。  

◆プロフィール◆

しらい・さとし―政治学者。1977年生まれ。京都精華大学教員。一橋大学大学院社会学研究科総合社会科学専攻博士後期課程単位修得退学。博士(社会学)。著書に『永続敗戦論―戦後日本の核心』(太田出版)など。

......続きは「ZAITEN」2021年10月号で。

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