2020年12月号

歴代トップ“夜郎自大”のツケ

焼きが回った日本製鉄の「無策経営」

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戦前の栄光をもう一度―。

「日本製鉄」の社名を69年ぶりに復活させて1年半、国内最大の鉄鋼メーカーが世界市場での競争から脱落しかけている。2012年の住友金属工業との合併、17年の日新製鋼子会社化を主導した歴代トップは、「鉄は国家なり」のお題目が唱えられていた半世紀近く前に入社した当時の輝かしい時代が忘れられない。国内市場の覇権を固めるだけに精力を傾けた〝夜郎自大〟の経営のツケが、コロナ禍で産業構造転換が一段と加速する今、回ってきている。

 日本の粗鋼生産量が今年8000万トンを下回りそうな中、中国では1社1億トンを目指す業界再編が進む。

ミタルとの合弁事業 日鉄側の〝生ぬるい〟対応

《日鉄、海外拠点を再編 米工場売却、電炉建設へ》

 10月14日、読売新聞は1面トップ記事で日本製鉄の新たな合理化策を報じた。

 同社が世界鉄鋼最大手アルセロール・ミタル(ルクセンブルグ)と合弁で運営する米インディアナ州の自動車向け鋼板事業2社を売却するとともに、その代替生産拠点として米アラバマ州にあるミタルとの別の合弁会社が新たに電炉を建設するというのが記事の骨子。インディアナ州にあったI/Nテック(日鉄の出資比率は40%)、I/Nコート(同50%)の両社の工場はいずれも1980年代の開設で老朽化が進んでおり、この2工場を米中堅鉄鋼会社クリーブランド・クリフスに売却する一方、アラバマ州にあるAM/NSカルバート(同50%)に高効率で二酸化炭素(CO)排出量など環境負荷も少ない電炉を新設し、設備刷新を進めるのが狙いだ。

 このインディアナ州の2工場売却についてはすでにミタルが先行して発表。英フィナンシャル・タイムズ(FT、9月28日付)によると、クリーブランド・クリフスへの鋼板工場売却や鉱山事業などのM&Aの規模は負債継承分も含め33億ドル(約3470億円)、ミタルは現金と株式で合計14億ドル(約1470億円)相当を得るとされていた。

 これを受けて日本経済新聞が翌29日付朝刊で「ミタル、米一部事業売却」との記事を掲載したが、日鉄の合弁事業を対象にした33億ドル規模の大型M&Aにもかかわらず、中ほどのページで見出し3段という目立たぬ扱い。

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