2021年02月号

「半沢直樹」は登場しないメガバンクの醜悪権力闘争

三菱UFJ"半沢頭取"誕生の陰で「平野vs.三毛」最終戦争

カテゴリ:企業・経済

 日本最大のメガバンクグループ、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)で会長の平野信行(1974年旧三菱銀行、京都大学卒)による独裁体制が揺らぎ始めている。

 旧三菱銀行主流エリートの「東大卒・経営企画畑」人材の粛清を図った平野の権謀術数の下、2017年にグループ中核の三菱UFJ銀行(MUBK)頭取に抜擢された三毛兼承(79年同、慶応義塾大学卒)が21年4月に頭取交代期を迎えるのを奇貨としてFG会長の座を平野から奪い取る〝逆心〟
に動く兆しを見せているからだ。

 この4年間、「平野の傀儡」「私大卒の軽量級トップ」などと揶揄され続けてきた三毛だが、水面下で「平野帝国」を「三毛帝国」に塗り替えるクーデター劇への準備を着々と進行。関係筋によると、兼務していたMUFG社長ポストを20年4月に入行年次が7年も後輩の亀澤宏規(86年同、東大大学院理学系修士課程修了)に譲ったのもその一環という。亀澤を「理系のデジタルオタクで御しやすい人物」としてMUFG社長に祭り上げる一方、三毛自身はMUBK内で自らと同じ慶応大卒の幹部に対する〝情実〟人事で三田会閥づくりに専心。近い将来、平野追い落としを狙えるように権力基盤を固めてきた。

 フィンテックの急速な台頭や、世界的な新型コロナウイルス感染拡大に伴う世界不況で平野がMUBK頭取、MUFG社長時代に進めたアジアなど海外事業が裏目に出ていることにグループ内で批判が高まっているのも、三毛にとっては追い風だ。MUFGの経営は、旧三菱銀の伝統から逸脱した〝傍流〟出身の新旧異端者による権力闘争を目前に風雲急を告げようとしている。

次期頭取は「リアル半沢」か
三毛が推す「林尚見」か

「マスコミはMUBK次期頭取に誰が就くかばかりに注目するが、もっと難題は(頭取を退任する)三毛の次のポストをどうするか。醜い内紛が起きかねない不穏な空気が確かにある」

 MUFGのある役員は年末、溜息交じりにこう内情を明かした。

 頭取の任期は4年間というのが旧三菱銀以来の不文律だ。三毛があと数カ月で交代することは確実視されており、後継候補にはともにMUBK取締役常務執行役員を務める林尚見(87年同、慶応大卒)と、半沢淳一(88年同、東大卒)の2人の名前が挙がる。

 林は三毛の三田会閥の「代貸」的存在だ。三毛人事でMUFGの経営企画部門トップ、グループCSO(チーフ・ストラテジック・オフィサー)にも就いている。20年度に三毛が全国銀行協会会長を務めるに当たっては、全銀協活動を支える「会長行室」の実質的なトップを任された。林にとって「会長行室」を仕切るのは異例の2度目だったが、三毛はこの人事で自らの後継頭取に林を据える布石づくりを狙った。林はMUFG社長の亀澤が17年にデジタル化推進担当役員を務めた際にナンバー2として支えた経歴もあり、三毛の亀澤篭絡作戦にも一役買ったとされる。

......続きは「ZAITEN」2021年2月号で。

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