ZAITEN2022年03月

三菱UFJ・アコム 自主規制の一線を越えた〝借金煽り〟へ方向転換

三菱UFJ・アコム 「新型サラ金CM変異株」が登場

カテゴリ:クレーム・広報

 2022年新年、テレビを前に「これは面白い!」と思えるCMに出会うことはなかった。新型コロナ禍を経て、CM出稿そのものを見合わせたり、広告費削減などにより無難なCMしか出せない企業が増えたのが最大の原因だ。

 一方、目立つのは消費者金融のCMばかり。例えばアイフルでは、女優の大地真央を起用し「そこに愛はあるんか?」と連呼、アイフルの頭文字である「アイ」を刷り込んでくるなど、どの企業も積極的にCMを打ちながらも、消費者金融色を極力抑え、遠回しにアピールしているように見える。CM展開としては面白いものもあるが、すべて借金に通じるため、それはそれでタチが悪い。

 消費者金融や多重債務問題に詳しい宇都宮健児弁護士に聞いたところ、「消費者金融のテレビCMは、法律的に禁止されるような規程は今もありません。そのため、CMを放送するテレビ局や出稿する企業の倫理観や自主規制に頼らざるを得ないのが現状」と話す。

 現在は、消費者金融の貸付限度額は、貸金業法で年収の3分の1に制限されているため、以前のような無茶な貸し付けができなくなっており、思うように貸付額を増やせない消費者金融会社が増えているのだという。そのため、メガバンクの傘下に入り、銀行カードローンの保証会社として利用されるケースが多くなっている。

 そのような背景もあり、消費者金融各社は、派手なCMで会社の認知度を高め、1人でも多くの消費者に選ばれることに活路を見出しているようだ。

一線を越えた借金需要喚起

 そんな折、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)のアコムのCMについて「一線を越えている」といった声が編集部に届いた。

〈アコムの『はじめたいこと、はじめよう!PROJECT』のCMはかなり問題だと思います。
「はじめたいことをはじめよう」と煽って全面的に応援するように見せかけながら、数十万円もする高い楽器を買わせ、最後は借金へ誘導する〝新型サラ金CM〟です。アコムはMUFG傘下の大手消費者金融会社なので、このようなCMは自粛するべきではないでしょうか〉(読者のメールより)

 このCMは、「はじめたいのにはじめてないことありませんか?」との呼びかけで始まり、「失敗したっていいじゃないか。笑われたっていいじゃないか。くじけたっていいじゃないか。できなくたっていいじゃないか。遅すぎるスタートなんてない。ただ一歩踏み出せば新しい自分が動き出すんだから」という甘い言葉とともに、ドラムを買って稽古に励む中年男性らの映像が流される。一見、中高年のチャレンジ支援の社会貢献CMに見えなくもないが、借金動機のテッパンである楽器購入を持ち出すなど、下心がミエミエだ。


 さらに、このCMに関連し、プロジェクトの公式HPでは、〈この機会にずっとやってみたかったことにチャレンジしてみませんか? 〝はじめたいこと〟を実現するために「はじめてコーチ」を派遣します〉と呼びかけ、参加者を募り、そこで選ばれた10数名の夢の実現のために指導者をアコムが手配し、資金も援助するという。だが、このプロジェクトの真のメッセージは「やってみたいことができなかったのは勇気やコーチ以前に、お金が心配だったから。その資金、アコムがお貸しします」。つまり"借金のススメ"なのである。


......続きはZAITEN2022年03月号で。

購読のお申し込みはこちら 情報のご提供はこちら
関連記事

JR東日本「震災事故対応する駅員への〝不信感〟」

日本冶金工業「たらい回しの末の無責任回答」

JTB コロナ禍の統廃合で人手不足「顧客軽視の〝不機嫌〟接客」

産経新聞「裏金疑惑を否定できないあきれた新聞社」

あきれた広報実話大賞(第10回)読売新聞グループ本社広報部

キレイモ(GFA)未返金の客に営業メールの厚顔

東京メトロ「乗客が困惑する破れた広告」

菊正宗「公共施設で飲酒を煽るような酒には見えない容器」

ダイソー「3年で100件超の誤表示・自主回収 消費者軽視の告知方法」

大塚製薬「青少年の誤解を誘う」カロリーメイトCM