ZAITEN2022年07月号

ユーグレナ、武田薬品、ZHD……

【特集】株主の声が遠ざかる「バーチャル総会」の変

カテゴリ:企業・経済

 日本の上場企業は今年、「株主総会の電子化元年」を迎えた。新型コロナウイルス禍で暫定的に認められていた「バーチャルオンリー株主総会」の導入が本格化し、今年9月から施行される「株主総会資料の電子提供制度」が上場企業に義務化されるためだ。一連の電子化は株主地位の向上につながる一方、運用次第では株主総会の形骸化に拍車をかけかねない。  

 バーチャルオンリー総会は、企業の取締役や株主がリアルな会場で一堂に会することなく、インターネット上で遠隔地から参加し、議決権を行使する株主総会である。コロナ感染拡大で外出自粛が広がった2020年、経済産業省が現実の株主総会と並行してネット等の手段により総会を開く「ハイブリッド型バーチャル株主総会」を容認したのが始まりだ。数百~数千人が一カ所に集まるリアルな総会を開けば、コロナ大量感染の懸念があった。

 しかし、これまでの会社法は、定時株主総会を年1回、物理的に入場できる場所で実際に開くことを定めている。そこで、政府は21年6月施行の「産業競争力強化法等の一部を改正する等の法律」で、定款に「場所の定めのない株主総会」を定めれば、一定の条件でバーチャルオンリー総会を開くことが出来るようにした。  

 昨年時点でユーグレナが初のバーチャルオンリー総会を開き、武田薬品工業やZホールディングス(HD)が定款を変更。今年に入ってからはZHDも開催を予定するほか、22年3月期決算発表に合わせてバーチャルオンリー総会のための定款変更を公表した企業が相次いだ。その中には、ルネサスやJR西日本、大成建設、ZOZO、グルメ杵屋など幅広い業態の東証プライム企業が含まれる。

事前質問制で経営側が優位に

 もっとも、バーチャルオンリー総会は、株主にとっても利点がある。特にリアルな会場から離れた場所に居住する株主は出席しやすくなる。その上、複数のパソコンを駆使すれば、総会集中日に同時開催される複数企業の総会に参加することも理屈の上では可能だ。 

 しかし、経営側がリアル総会以上に進行の主導権を握りやすい側面が強いのも確か。ネット経由の株主の質問は事前に募集することで対策を立てやすく、当日の質問も企業が取捨選択できる。経産省は通信障害対策や質問の提示、応対できなかった質問の回答を総会後に自社サイトに掲示することなどを企業に求めているが、主導権はあくまで経営側にある。

......続きはZAITEN7月号で。

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