ZAITEN2023年05月号

意外な総裁決定と〝老いた有力者〟の思惑

【特集3】日銀「ポスト黒田」巡る内ゲバで分裂危機

カテゴリ:企業・経済

 日銀初の学者総裁誕生の背景には、最有力視されていた前副総裁の雨宮正佳(1979年入行)の昇格だけは何としても阻止しようとする、生え抜きOBらによる苛烈な「雨宮後継潰し」の動きがあった。雨宮はもともと大物総裁だった三重野康(47年入行)の秘書役を務め、金融政策の立案を担う王道の企画局畑でキャリアを積んできた生え抜きエース。だが、日銀の伝統的な金融政策を公然と批判する黒田東彦(67年旧大蔵省、元財務官)が13年春に総裁に就任して以降、「日銀マンの魂を捨てて黒田派に豹変した」(有力OB)。財政ファイナンス紛いの国債爆買いや長期金利操作など歴代総裁が禁じ手としてきた金融緩和策の導入に次々と手を染めた。

 このため、黒田の後ろ盾で当時首相だった安倍晋三から「デフレに対処できない無能総裁」とのレッテルを貼られ失意のうちに退任した白川方明(72年入行)をはじめ、有力生え抜きOBの「裏切り者」雨宮に対する近親憎悪は凄まじかった。新総裁選びの最終盤では白川総裁時代に副総裁を務めた山口廣秀(74年入行)という「古びたカード」(財務省筋)まで持ち出して雨宮による黒田緩和の継承を阻止しようと躍起だった。

「日銀出身者が新総裁になれなかったのは残念だが、(雨宮後継潰しという)思いは適った」。白川につながる関係者は溜飲を下げた様子だが、有力OBが主導した「内ゲバ」の影響は現役日銀マンにも及び、「プロ(親)雨宮」か「アンチ雨宮」か、で組織は分裂の危機に瀕している。植田日銀における組織運営は生え抜き副総裁の内田真一(86年入行)が担うが、企画局長、理事として雨宮直系だった人物の言うことを「黒田緩和の過ちに目覚めた」幹部らが果たして素直に聞くか。植田日銀は異次元緩和の後始末という政策的難題とは別に、崩壊の危機にある組織をどう立て直すかという超難問も突き付けられている。

黒田批判の大合唱

「金融緩和の総括・検証が必要」「柔軟な金融政策運営を」 岸田文雄官邸の次期総裁選びが大詰めを迎えていた1月下旬。『週刊東洋経済』の日銀特集号は、さながら日銀有力OB総出の黒田緩和批判キャンペーンの様相を呈した。

......続きはZAITEN5月号で。

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