ZAITEN2023年06月号

もはや日本の金融危機の震源地

木原みずほ「LINE銀行頓挫」でSBGと共倒れ

カテゴリ:企業・経済

 大規模な銀行システム障害に伴う経営刷新から2年余。みずほフィナンシャルグループ(FG)の経営が再び負のスパイラルに陥り始めた。春の役員人事などを終えたFG社長の木原正裕(1989年、旧日本興業銀行)は「10年後にありたい姿からみずほの存在を再定義する」などと組織再生に自信を深めているというが、足元ではデジタル戦略の目玉として掲げたLINEとの合弁銀行計画が開業すらできないままに頓挫。もともと他の2メガバンクと比べても出遅れていたフィンテック戦略の抜本的な見直しを迫られている。資本力不足から海外の買収も思うように進められず、コスト削減以外で収益増を図るシナリオが描けないのが実情だ。

 弱り目に祟り目。そんな木原みずほの厳しい経営に追い打ちをかけているのが世界的なカネ余り時代の終焉に伴う国際的な金融危機の荒波だ。超低金利の前提が狂って経営不安が高まる孫正義率いるソフトバンクグループ(SBG)のファンド事業に巨額の資金を貸し込んだ傘下のみずほ銀行には「共倒れ」リスクが忍び寄る。 「パートナーを間違った」 「アニキの英断」。岸田文雄政権の官房副長官の木原誠二を弟に持つ後光ゆえか、みずほFG内ではLINE銀行開業断念を決めた社長の木原をこう持ち上げる声が目立つという。みずほが2018年11月に打ち出した構想では「若年層を中心に月間約7800万人(当時)の利用者を抱えるLINEの顧客基盤を活かし、親しみやすいスマホ銀行をつくる」予定だった。しかし、システム開発の難航や19年にヤフーを傘下に持つZホールディングス(HD)との経営統合を決めたLINEが戦略転換を強いられたことなどからプロジェクトは迷走。開業時期を当初予定の20年度から2年延ばし、母体となる両社が計120億円を追加出資してテコ入れを図ったが、結局「安全・安心で利便性の高いサービスの提供が見通せない」として断念を余儀なくされた。

 みずほ社長の木原周辺からは「構想発表1年後にZHDと統合することになったLINE側が重複事業の整理を迫られたのが最大の誤算」などと恨み節も漏れる。確かにZHD内では最近、スマホ決済を起点に急成長するPayPay銀行の存在を挙げて「グループに2つも銀行をつくってどうしようというのか」などとLINE銀行プロジェクトを疑問視する声が出ていた。ただ、出澤剛らLINE経営陣は膨大な通話アプリの顧客基盤を活かした独自のネット銀行設立を切望していた。にもかかわらず、開業に漕ぎつけられなかった背景には、みずほ側の失策も大きく影響した。LINE関係者からは「みずほとタッグを組めば大丈夫と期待したが、当て外れだった。パートナーを間違った」と悔やむ声が出ている。

......続きはZAITEN6月号で。

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